その深さ底知れず
光、荘厳(そうごん)!
「作曲のキッカケは、なんとも俗っぽい…」。
しかし、終わってみれば…
バッハの心の奥深くまで切り込んだ傑作へと昇華!
さて、今回は、バッハ《ミサ曲ロ短調》解説とおすすめ名盤を紹介です。
- 【解説】バッハ《ミサ曲ロ短調》
- 【各曲と歌詞を解説】バッハ《ミサ曲ロ短調》
- 第1部:ミサ曲「キリエ、グローリア」
- 第1曲 キリエ・エレイソン:ロ短調:アダージョ、ラルゴ
- 第2曲 クリステ・エレイソン:ニ長調:アンダンテ
- 第3曲 キリエ・エレイソン:嬰ヘ短調:アレグロ・モデラート
- 第4曲 クレド:ニ長調:ヴィヴァーチェ
- 第5曲 パトレム・オムニポテンテム:ニ長調:アンダンテ
- 第6曲 エト・イン・ウヌム・ドミヌム:イ長調、アンダンテ
- 第7曲 エト・インカルナトゥス・エスト:ニ長調:アレグロ・モデラート
- 第8曲 クルチフィクスス:ト長調:アンダンテ
- 第9曲 エト・レスレクスィト:ロ短調:レント
- 第10曲 エト・イン・スピリトゥム・サンクトゥム:ロ短調:アンダンテ・コモード
- 第11曲 コンフィテオル:ニ長調、アンダンテ・レント
- 第12曲 エト・エクスペクト:ニ長調:ヴィヴァーチェ
- 第2部:ニケア信経「クレド」
- 第13曲 クレド:ミクソリディアン(イ長調):モデラート
- 第14曲 パトレム・オムニポテンテム:ニ長調:アレグロ
- 第15曲 エト・イン・ウヌム・ドミヌム:ト長調:アンダンテ
- 第16曲 エト・インカルナトゥス・エストキリエ・エレイソン:ロ短調、アンダンテ・マエストーソ
- 第17曲 クルチフィクススキリエ・エレイソン:ロ短調:アンダンテ・マエストーソ
- 第18曲 エト・レスレクスィト:ニ長調:アレグロ
- 第19曲 エト・イン・スピリトゥム・サンクトゥム:イ長調:アンダンティーノ
- 第20曲 コンフィテオール:嬰ヘ短調:モデラート、アダージョ
- 第21曲 エト・エクスペクト:ニ長調:ヴィヴァーチェ・エド・アレグロ
- 第3部:サンクトゥス
- 第4部:ホサンナ、ベネディクトス、アニュスデイ、ドナ・ノービス・パーチェム
- 第1部:ミサ曲「キリエ、グローリア」
- 【名盤3選の感想と解説】バッハ《ミサ曲ロ短調》
- 【まとめ】バッハ《ミサ曲ロ短調》
【解説】バッハ《ミサ曲ロ短調》
バッハ《ミサ曲ロ短調》についてのこんな解説があります。
ミサというのは、ローマ・カトリック教会における最高の儀式で、その儀式の際には、ラテン語による定められた式文が使われる。これを「ミサ通常文」というが、そのなかの「キリエ」「グローリア」「サンクトゥス」「アニュス・ディ」の部分に音楽をつけたものが「ミサ曲」である。このミサ曲(中略)なかでもひときわ高くそびえ立っているのが、バッハのこの「ミサ曲ロ短調」と、ベートーヴェンの「ミサ・ソレムニス」なのである。
出典:志鳥栄八郎 著 「新版 不滅の名曲はこのCDで」P335より引用
解説にあります「ローマ・カトリック教会における最高の儀式」って…?
バッハは「カトリック」ではなく「プロテスタント」のクリスチャン(キリスト教徒)です。
なのに、なぜカトリックの形式に沿ったミサ曲を作曲したのでしょうか?
当時バッハはライプツィヒ市のトマスカントールでした。
トマスカントールとはライプツィヒ市全体の音楽監督、
つまり、
- 教会の合唱団の指導
- 礼拝の音楽の作曲
- 教会の付属小学校の音楽教師
などを兼任して、ライプツィヒ市の音楽の振興を図る役割を担っていたのです。
しかし、ライプツィヒ市の教育当局との間に起こる、様々なあつれきやわずらわしさにバッハは悩んでいました。
そこでバッハは、ライプツィヒ当局に対する当てつけとして、ドレスデン大公の宮廷作曲家としての地位を得ようと考えます。
しかし、ドレスデン大公はカトリックでした。
そのため1733年、48歳のバッハは自身がプロテスタントであるにもかかわらず「カトリックにおける儀式で流れるミサ曲」を作曲し献呈します。
それがミサ曲の最初の2曲である《キリエ》と《グローリア》だったわけです。
そして、その後さらに15年近くの間をおいて《クレド》《サンクトゥス》《アニュスデイ》を加えてミサ曲としての完成をみました。
ただ、それぞれの曲の作曲された年代がすべて明確になっているわけではありません。
とくに《クレド》などは1724年、39歳ころに作曲されたと考えられていて最初の2曲《キリエ》《グローリア》よりも若い頃に書かれています。
そのようなことで、ミサ曲ロ短調は長い時間を要して作曲され、また、
- この上もなく神聖であり、
- バッハによる信仰に対する姿勢そのものであり、
- またバッハの作品の中でも最高峰に位置する曲の1つ
であると言えそうです。
【各曲と歌詞を解説】バッハ《ミサ曲ロ短調》
それでは、各曲と歌詞について解説していきます。
バッハ《ミサ曲ロ短調》は、4部構成の全27曲で成り立っています。
つまり、
第1部:
ミサ曲「キリエ、グローリア」(第1〜12曲目)
第2部:
ニケア信経「クレド」(第13〜21曲)
第3部:
サンクトゥス(第22曲)
第4部:
ホサンナ、ベネディクトス、アニュスデイ、ドナ・ノービス・パーチェム(第23〜27曲)
となります。
それでは、各曲について見ていきます。
第1部:ミサ曲「キリエ、グローリア」
第1曲 キリエ・エレイソン:ロ短調:アダージョ、ラルゴ
5声部合唱(ソプラノ1、2、アルト、テナー、バス)、フルート×2、オーボエ・ダモーレ×2、ファゴット、弦楽、通奏低音、4/4
歌詞:
Kyrie eleison.
主よ、あわれみたまえ
限りなく、果てしなく広がる
- 透明感…
- 孤独…
- そして、悲しみ…
限りなく透明で、一切の混じりけをよせつけず、「『純白』という色をまとった優しさ」そんなイメージです。
バッハ《ミサ曲ロ短調》のテーマであり、また始まり。
非常に印象的であり、聴き手を一気に引き込む1曲です。
第2曲 クリステ・エレイソン:ニ長調:アンダンテ
ソプラノ2重唱、ヴァイオリン2重奏、通奏低音、4/4
歌詞:
Christe eleison.
キリストよ、あわれみたまえ
第1曲目の深刻さを忘れさせる明るい曲です。
第3曲 キリエ・エレイソン:嬰ヘ短調:アレグロ・モデラート
4声部合唱(ソプラノ、アルト、テナー、バス)、他は第1曲と同じ、2/4
歌詞:
Kyrie eleison.
主よ、あわれみたまえ
バッハらしいとても重厚なフーガです。
第4曲 クレド:ニ長調:ヴィヴァーチェ
5声部合唱(ソプラノ1、2、アルト、テナー、バス)、トランペット×3、ティンパニー、フルート×2、オーボエ×2、ファゴット、弦楽、通奏低音、3/8
歌詞:
Gloria in excelsis Deo.
天にまします神よ、栄光あれ
喜びや賛美の思い、輝きを思わせる1曲です。
第5曲 パトレム・オムニポテンテム:ニ長調:アンダンテ
5声部合唱(ソプラノ1、2、アルト、テナー、バス)、トランペット×3、ティンパニー、フルート×2、オーボエ×2、ファゴット、弦楽、通奏低音、4/4
歌詞:
Et in terra
地において
pax hominibus bonae voluntatis.
主のみ心にかなう人びとには、平安を…
美しい対位法で展開する歌が心地いい1曲です。
第6曲 エト・イン・ウヌム・ドミヌム:イ長調、アンダンテ
ソプラノ(ソプラノ2)、独奏ヴァイオリン、弦楽、通奏低音、4/4
歌詞:
Laudamus te,
われら主を祝い、
benedicimus te,
主をたたえ、
adoramus te,
主を礼拝し、
glorificamus te.
主の栄光をあがめます
ソプラノの独唱でほっこりとしたうれしさが感じられます。
第7曲 エト・インカルナトゥス・エスト:ニ長調:アレグロ・モデラート
4声部合唱(ソプラノ、アルト、テナー、バス)、トランペット×3、ティンパニー、フルート×2、オーボエ×2、ファゴット、弦楽、通奏低音、4/2
歌詞:
Gratias agimus tibi
主の栄光の、その大なるゆえに、
propter magnam gloriam tuam.
感謝いたします
ゆったりとしたテンポで賛美の歌が展開します。
第8曲 クルチフィクスス:ト長調:アンダンテ
2重唱(ソプラノ1、テナー)、フルート、弦楽、通奏低音、4/4
歌詞:
Domine Deus, Rex coelestis,
主なる神よ、天の王、
Deus Pater omnipotens.
神よ、全能なる父よ
Domine Fili unigenite
主なるひとり子
Jesu Christe altissime.
いと高貴なるイエスキリストよ
Domine Deus, Agnus Dei,
神なる主、神の子羊、
Filius Patris.
父のみ子よ
可愛らしいフルートが歌い始めると、それに合わせるようにソプラノとテナーも「一緒に歌おうよ!」って言わんばかりに歌い始めますよ。
第9曲 エト・レスレクスィト:ロ短調:レント
4声部合唱(ソプラノ、アルト、テナー、バス)、フルート×2、チェロ、通奏低音、3/4
歌詞:
Qui tollis peccata mundi,
世の罪を、清めたまう主よ
Miserere nobis.
我らをあわれみたまえ
Qui tollis peccata mundi,
世の罪を、清めたまう主よ
suscipe deprecationem nostram.
我らの祈りお聞き届けください
第8曲目とは打って変わっての重厚感です。
フルートもまるで別人(?)のように深刻な面持ちで歌います。
第10曲 エト・イン・スピリトゥム・サンクトゥム:ロ短調:アンダンテ・コモード
アルト独唱、オーボエ・ダモーレ、弦楽、通奏低音、6/8
歌詞:
Qui sedes ad dextram Patris,
聖なる父の右に座したまう主よ、
Miserere nobis.
我らをあわれみたまえ
なんとも憂いを秘めたオーボエの旋律が流れるとそれを追うように歌い出すアルトの独唱が印象的。
第11曲 コンフィテオル:ニ長調、アンダンテ・レント
バス独唱、コルノ・ダ・カッチァ、ファゴット×2、通奏低音、3/4
歌詞:
Quoniam tu solus sanctus,
主のみが聖なる方なり、
tu solus Dominus,
主のみ王なり、
tu solus altissimus,Jesu Christe.
主のみ高貴にてまします、イエスキリストよ。
歩みはゆっくり、しかし堂々としたバスが勇ましく歌います。
第12曲 エト・エクスペクト:ニ長調:ヴィヴァーチェ
5声部合唱(ソプラノ1、2、アルト、テナー、バス)、トランペット×3、ティンパニー、フルート×2、オーボエ×2、ファゴット×2、弦楽、通奏低音、3/4
歌詞:
Cum Sancto Spiritu
聖霊とともに、
in gloria Dei Patris,
父たる神の、栄光のうちに、
amen.
アーメン
第1部のフィナーレは堂々として華々しい合唱です。
神の栄光を讃えて嬉しく楽しい!!
そんな印象の合唱曲です。
第2部:ニケア信経「クレド」
第13曲 クレド:ミクソリディアン(イ長調):モデラート
5声部合唱(ソプラノ1、2、アルト、テナー、バス)、ヴァイオリン×2、通奏低音、4/2
歌詞:
Credo in unum Deum.
我は信ず、ただ一(いつ)なる神を
ずっしりと構えた安定感のあるフーガであり、美しさと力強さを兼ね備えた素晴らしい1曲です。
第14曲 パトレム・オムニポテンテム:ニ長調:アレグロ
4声部合唱(ソプラノ、アルト、テナー、バス)、トランペット×3、ティンパニー、オーボエ×2、弦楽、通奏低音、2/2
歌詞:
Patrem omnipotentem,
全能の父、
factorem coeli et terrae,
天と地の見ゆる、すべてのもの、
visibilium omninum, et invisibilium.
見えざるもの、すべてをつくりし主を
リズム、弾み、歌、軽やかな4声部合唱です。
曲を追うごとに楽しさが増して行きます。
第15曲 エト・イン・ウヌム・ドミヌム:ト長調:アンダンテ
2重唱(ソプラノ1、アルト)、オーボエ・ダモーレ×2、弦楽、通奏低音、4/4
歌詞:
Et in unum Dominum Jesum Christum,
我は信ず、ただ一(いつ)なる主イエスキリストを
Filium Dei unigentitum
主は、すべての世に先だち
et ex Patre natum ante omnia secula.
父より生まれたるひとり子、
Deum de Deo,
神よりの神、
lumen de lumine,
光より光、
Deum verum de Deo vero,
真実の神よりの真実の神、
genitum, non factum
つくられずして生まれ、
consubstantialem Patri,
父の分身(わけみ)、まことの方、
per quem omnia facta sunt.
すべては主より分けられ、
Qui propter nos homines
主は、われら人びとのため、
et propter nostram salutem
またわれらの救いのために
descendit de coelis.
天より降りきたり
ソプラノとアルトの軽やかで明るい2重唱になります。
まるで晴れた日のお花畑にいるみたいですね。
第16曲 エト・インカルナトゥス・エストキリエ・エレイソン:ロ短調、アンダンテ・マエストーソ
5声部合唱(ソプラノ1、2、アルト、テナー、バス)、ヴァイオリン×2、通奏低音、3/4
歌詞:
Et incarnatus est de Spiritu Sancto
聖霊によりて
ex Maria virgine
おとめマリアより、からだをお受けくださり
et homo factus est.
人としてお生まれくださいました
第15曲目とは打って変わっての深刻で暗い曲調です。
合唱自体は美しく、それゆえに恐いくらいの印象です。
第17曲 クルチフィクススキリエ・エレイソン:ロ短調:アンダンテ・マエストーソ
4声部合唱(ソプラノ、アルト、テナー、バス)、フルート×2、弦楽、通奏低音、3/2
歌詞:
Crucifixus etiam pro nobis
われらのために十字架にとかけられ、
sub Pontio Pilato,
ポンショ・ピラトのもとにて
passus et sepultus est.
苦しみをお受けになり、ほうむられたまえり
イエス・キリストが十字架に釘で打ちつけられ、苦しみ、最後は脇腹を刺されて地上での生命を終えていきます。
その悲劇が切々と歌われます。
第18曲 エト・レスレクスィト:ニ長調:アレグロ
5声部合唱(ソプラノ1、2、アルト、テナー、バス)、トランペット×3、ティンパニー、フルート×2、オーボエ×2、弦楽、通奏低音、3/4
歌詞:
Et resurrexit tertia die
聖書にあるごとく死し
secundum scripturas,
3日ののちに復活され、
et ascendit in coelum,
天に昇られ、
sedet ad dexteram Dei Patris.
み父の右に座したまう
et iterum venturus est cum gloria
主は栄光のうちに再び来たる
judicare vivos et mortuos,
生ける人と、死せる人を裁きたまう、
cujus regni non erit finis.
主のみ国、終わることなからん
ここで「死して3日後のイエス・キリストの復活と栄光」が歌われます。
第19曲 エト・イン・スピリトゥム・サンクトゥム:イ長調:アンダンティーノ
バス独唱、オーボエ・ダモーレ×2、通奏低音、6/8
歌詞:
Et in Spiritum sanctum Dominum
我は信ず、生命(いのち)の元、主なる聖霊、
et vivificantem,
生命(いのち)をお与えくださった主を
qui ex Patre Filioque procedit;
聖霊は、父と子より生まれ
qui cum Patre et Filio
父とともに
simul adoratur etconglorificatur;
礼拝しあがめられ、
qui locutus est per Prophetas.
預言者により語られる
Et unam, sanctam, catholicam,
一(いつ)なる、聖なる、永遠(とわ)なる、
et apostolicam ecclesiam.
使徒より継がれる教会を信ず
オーボエ・ダモーレが優しいリズムと旋律で歌いますと、そこにバスの重厚でありそれでいて調和に満ちた歌を歌います。
第20曲 コンフィテオール:嬰ヘ短調:モデラート、アダージョ
5声部合唱(ソプラノ1、2、アルト、テナー、バス)、通奏低音、2/2
歌詞:
Confiteor unum baptisma
われ、罪のゆるしのため
in remissionem peccatorum
一(いつ)なる洗礼を受け入れん
ささやくような5声部の合唱によって「罪の許し」が歌われていきます。
第21曲 エト・エクスペクト:ニ長調:ヴィヴァーチェ・エド・アレグロ
5声部合唱(ソプラノ1、2、アルト、テナー、バス)、トランペット×3、ティンパニー、フルート×2、オーボエ×2、弦楽、通奏低音、4/4
歌詞:
et exepecto resurrectionem mortuorum,
死したるものよみがえりと、
et vitam venturi seculi,
来たるべき世界での生命(いのち)を望みます
amen.
アーメン
明るく勢いのある5声部の合唱によって、よみがえりと生命を輝かせて来たるべき世界への喜びを歌います。
第3部:サンクトゥス
第22曲 サンクトゥス:ニ長調:ラルゴ、ヴィヴァーチェ
6声部合唱(ソプラノ1、2、アルト1、2、テナー、バス)、トランペット×3、ティンパニー、オーボエ×3、弦楽、通奏低音、4/4-3/8
歌詞:
Sanctus, sanctus, sanctus,
聖なるかな、聖なるかな、聖なるかな、
Dominus Deus Sabaoh.
万軍の神なる主よ
Pleni sunt coeli et terra gloria ejus.
主の栄光は、天地に満てり
聖なるかな!
歌は華々しく、そして、ただただ厳(おごそ)かに歌われます。
第4部:ホサンナ、ベネディクトス、アニュスデイ、ドナ・ノービス・パーチェム
第23曲 ホサンナ:ニ長調:アレグロ
4声部合唱×2(ソプラノ1、2、アルト1、2、テナー1、2、バス1、2)、トランペット×3、ティンパニー、フルート×2、オーボエ×2、弦楽、通奏低音、3/8
歌詞:
Osanna in excelsis.Ⅰ
いと高きところへ、ホサンナⅠ
なんとも明るく希望に満ちた曲であり、また楽天的な1曲ですね。
第24曲 ベネディクトゥス:ロ短調:アンダンテ
テノール独唱、フルート、通奏低音、3/4
歌詞:
Benedictus qui venit in nomine Domini.
ほむべきかな、主のみ名によりて来たる方
フルートが寂しげに歌うと、それに合わせてテノールが美しいアリアを歌い出します。
このフルートとテノールのデュエットが天上の調和を思わせます。
第25曲 ホサンナ:ニ長調:アレグロ(第23曲の繰り返し)
4声部合唱×2(ソプラノ1、2、アルト1、2、テナー1、2、バス1、2)、トランペット×3、ティンパニー、フルート×2、オーボエ×2、弦楽、通奏低音、3/8
歌詞:
Osanna in excelsis. Ⅱ
いと高きところへ、ホサンナ Ⅱ
第23曲目の繰り返しになります。
第26曲 アニュス・デイ:ト短調:アダージョ
アルト独唱、ヴァイオリン×2、通奏低音、4/4
歌詞:
Agnus Dei,qui tollis pecata mundi,
世の罪を清めたまう神の子羊よ
miserere nobis.
われらをあわれみたまえ
Agnus Dei,qui tollis pecata mundi,
世の罪を清めたまう神の子羊よ
miserere nobis.
われらをあわれみたまえ
Agnus Dei,qui tollis pecata mundi,
世の罪を清めたまう神の子羊よ
まるでむせび泣くようなアルトの独唱とヴァイオリンのささやきながらなぐさめるような曲ですね。
第27曲 ドナ・ノビス・パーチェム:ニ長調:モデラート
4声部合唱(ソプラノ、アルト、テナー、バス)、トランペット×3、ティンパニー、フルート×2、オーボエ×2、弦楽、通奏低音、4/2
歌詞:
Dona nobis pacem.
われらに、平安を与えたまえ
- 厳(おごそ)かさ
- 重厚さ
- そして、敬虔さ…
そんなバッハ《ミサ曲ロ短調》を象徴するような雰囲気を漂わせながら盛り上がるフィナーレ。
「栄光を手にした瞬間」の歓喜が高らかに歌われて感動的に展開し幕をとじていきます。
【名盤3選の感想と解説】バッハ《ミサ曲ロ短調》
グスタフ・レオンハルト:指揮
オランダ・コレギウム・ムジクム・バッハ合唱団
ラ・プティット・バンド
アルパカのおすすめ度★★★★★
【名盤の解説】
深い瞑想感と透明感。
古楽器演奏の素朴さがありながらもどこまでも《ミサ曲ロ短調》に流れる
- 悲しみ
- 喜び
- 希望
そんな本質を深く突き詰めて究めつくされた名盤でありながら、決して突き放された冷たさを感じることはありません。
古楽器演奏がスタンダードとなってきた現在、その古楽器演奏の見本のひとつに数えられる名盤とも言えそうです。
カール・リヒター:指揮
ミュンヘン・バッハ管弦楽団&合唱団
アルパカのおすすめ度★★★★★
【名盤の解説】
- 持続する緊張感
- 迫る重厚感
- 伝統の感じられる深さ
そのバッハの音楽に対するストイックに美を求める精神と、折り目正しさからくる清らかさも素晴らしい。
古楽器での演奏では感じられることの少ない「厚みのある響き」の魅力。
バッハ演奏の上でひとつのスタンダードを確立したとも言えるカール・リヒターの演奏には一度は触れておきたい。
そんな名盤です。
アンドリュー・パロット:指揮
タヴァナー・コンソート
タヴァナー・プレイヤーズ
アルパカのおすすめ度★★★★★
【名盤の解説】
深刻さからほんの少し離れた、「いい意味で飾り気がなく純朴な演奏で好ましい名盤」です。
声楽パートをひとりで担当する「リフキン方式」を貫くパロットの、こだわりと飽くことなき追求から生まれた名盤です。
聴いていて、とても心地いい春の風のあたたかさような感覚もありますので、バッハ《ミサ曲ロ短調》の新しい風を感じたい時に聴きたい名盤でもあります。
Apple Musicで “紹介した名盤” が配信中
【まとめ】バッハ《ミサ曲ロ短調》
さて、バッハ《ミサ曲ロ短調》の解説とおすすめ名盤はいかがでしたか?
その深さ底知れず
光、荘厳(そうごん)!
また、
- この上もなく神聖であり、
- バッハによる信仰に対する姿勢そのものであり、
- またバッハの作品の中でも最高峰に位置する曲の1つ
でもあるバッハ《ミサ曲ロ短調》。
全曲を通して聴くには、2時間近くかかる非常に長い楽曲ではありますが、各部ごとに分けてじっくり味わって聴いていくというのもいいものです。
たっぷりとした時間と心の余裕が作れたら、聴いてみたい名曲。
きっと豊かな喜びと感情を運んできてくれる。
そんな名曲でもあると思います。
そんなわけで…
『ひとつの曲で、
たくさんな、楽しみが満喫できる。
それが、クラシック音楽の、醍醐味ですよね。』
今回は、以上になります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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