幻の楽器
アルペジオーネが歌う
セピア色した優美な魅力♫
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間もなくおとずれるであろう
「死」
その予感…
限りなく
セピア色に覆われていく
感情…
そんな日常に
ぽつり、
ぽつりと、
降りてくる、
美しいインスピレーション…
さて、今回は、シューベルト《アルペジオーネソナタ》の解説とおすすめ名盤を紹介です。
- 【解説】シューベルト《アルペジオーネソナタ》
- 【各楽章を解説】シューベルト《アルペジオーネソナタ》
- 【名盤5選の感想と解説】シューベルト《アルペジオーネソナタ》
- 【まとめ】シューベルト《アルペジオーネソナタ》
【解説】シューベルト《アルペジオーネソナタ》
シューベルト《アルペジオーネソナタ》についてのこんな解説があります。
「アルペジョーネ・ソナタ」も、発明されて間もないアルペジョーネのためにつくられた作品なのである。この楽器は、ギター・チェロ"とも呼ばれているように、ギターに似た形をした胴に六本の弦が張られ、それをチェロのように弓でひいて音を出す楽器である。(中略)この楽器はすぐにすたれてしまい、現在ではほとんどチェロで演奏される。
出典:志鳥栄八郎 著 「新版 不滅の名曲はこのCDで」P253より引用
アルペジオーネ?
- 弦は6弦
- チェロを少し小さくした大きさ
- 別名ギターチェロ
そんな特徴を持つ楽器でした。
そもそもシューベルト在世中に、もてはやされることはなかった楽器。
また、シューベルトの死後に《アルペジオーネソナタ》の楽譜が出版されたころには、忘れ去られた楽器となってしまっていました。
作曲依頼はヴィンツェンツ・シュースターというアルペジオーネの奏者からのものであろうと推測されています。
ただ、解説にもありますように、現在ではアルペジオーネの代わりにチェロで演奏することが普通となっています。
ただ、時おり
- ヴィオラ
- コントラバス
- ギター
などが、アルペジョーネの代役を務めることもあり、それぞれの楽器から生まれる「微妙なさじ加減」といいますか「独特な味わい」を持った演奏を楽しませてくれます。
【各楽章を解説】シューベルト《アルペジオーネソナタ》
それでは、各楽章について解説します。
シューベルト《アルペジオーネソナタ》は第1楽章から第3楽章までの3曲で成り立っています。
第1楽章 アレグロ・モデラート(ほどよく速く)
《アルペジオーネソナタ》が作曲されたのと同じころ、シューベルトの代表的な弦楽四重奏曲第14番《死と乙女》も作曲されています。
この頃は、シューベルト自身をむしばんでいた「梅毒が引き起こす症状」により、精神的にも抑うつ的になっていました。
そんな苦しい病を抱えながらも生み出される音楽は
- 優しくも
- 美しい…
- そして、どこかさみしさがある
そんな名曲が多いのがシューベルトの特徴です。
そして、この《アルペジオーネソナタ》第1楽章にも、それは当てはまります。
第2楽章 アダージョ(ゆっくりと)
静けさの持つ美しさがここまで音楽として昇華している名曲も珍しい…。
そして、どこか「あきらめの美学」ともいえそうな「儚(はかなさゆえの美しさ」を感じ取ることもできます。
シューベルトの魅力のひとつである優美さが、この《アルペジオーネソナタ》の第2楽章には凝縮され、息づいています。
第3楽章 アレグレット(やや速く)
- 第1楽章の「さみしさ」と
- 第2楽章の「静けさ」…
これらを忘れさせるような明るさや光を感じます。
少し影のある舞曲風の展開を聴かせながら…「ピタリ」…その舞曲風のモチーフが止まると始まる明るいモチーフ。
そして再び…「ピタリ」…と、止まったかと思うと再び始まる舞曲風のメロディ。
シューベルトの、
- 歌心…
- 遊び心…
- リズムの楽しみ
そんな素敵な要素が、
ギュギュギュッ!と、詰まった明るいフィナーレ(最終楽章)です。
【名盤5選の感想と解説】シューベルト《アルペジオーネソナタ》
ミッシャ・マイスキー:チェロ
マルタ・アルゲリッチ:ピアノ
アルパカのおすすめ度★★★★★
【名盤の解説】
憂いを秘めたミッシャ・マイスキーのチェロの歌がなんとも切ない名盤です。
またマルタ・アルゲリッチのピアノがマイスキーのチェロをサポートしますが、どうしたってアルゲリッチのピアノはキラリと光ってしまいます。
なんとも「輝かしくも深い寂しさや詩情を放つ名盤」です。
ニコラ・デルタイユ:アルペジオーネ
パウル・パドゥラ=スコダ:フォルテピアノ
アルパカのおすすめ度★★★★★
【名盤の解説】
アルペジオーネという楽器を使用した数少ない名盤です。
パドゥラ=スコダがフォルテピアノを弾いていることも影響していますが「響きすぎないかすれた感じの名盤」に仕上がっています。
シューベルトの生きた時代に演奏すると、ちょうどこんな雰囲気だったのかもしれません。
「チェロとピアノによるロマンティックな演奏」に慣れてくると、こういったいい意味で「さびれた感じの音」は新鮮に感じられる。
そんな名盤です。
ムルティスラフ・ロストロポーヴィチ:チェロ
ベンジャミン・ブリテン:ピアノ
アルパカのおすすめ度★★★★★
【名盤の解説】
堂々としたロストロポーヴィチのチェロと、しっかりチェロを支えるピアノのブリテン。
ブリテンは作曲家としても有名ですが、ピアノの演奏もその紡ぎ出す歌の繊細なニュアンスの変化に富んでいて飽きさせません。
もちろんチェロのロストロポーヴィチの骨太な響きも印象的ですし圧倒されます。
昔風の亭主関白的なカッコよさ頼りがいのある名盤(?)と言えそうです。
ユーリ・バシュメット:ヴィオラ
ミハイル・ムンチャン:ピアノ
アルパカのおすすめ度★★★★★
【名盤の解説】
「チェロよりも小さいアルペジオーネ」ということは「アルペジオーネよりも小さいヴィオラで歌うのもあり」ということを教えてくれる名盤です。
チェロよりは軽みが感じられて、ある意味聴きやすい名盤でもあります。
憂うような歌が魅力のアルペジオーネ・ソナタですがチェロよりは深刻さのない感覚で聴けます。
このライトな感覚はとくに第2楽章のアダージョ楽章での優美な魅力を引き出すのに大きな効果を発揮しているようにも感じます。
ぜひ一味違った《アルペジオーネ・ソナタ》も楽しんでみてください。
ポール・トルトゥリエ:チェロ
ロバート・ワイス:ピアノ
アルパカのおすすめ度★★★★★
【名盤の解説】
ロマンティックに流れすぎない理性の効いた名盤です。
背筋のまっすぐ伸びた、実に姿勢の良い端正な魅力に満ちています。
そんなチェロの歌を、しっかりサポートするピアノの繊細さ美しさも心地いいですね。
あまり甘い感じの陶酔系の演奏が苦手の方にはしっかりと心に届く名盤とも言えそうです。
Apple Musicで “紹介した名盤” が配信中
【まとめ】シューベルト《アルペジオーネソナタ》
さて、
幻の楽器
アルペジオーネが歌う
セピア色した優美な魅力♫
シューベルト《アルペジオーネソナタ》の解説とおすすめ名盤はいかがでしたか?
夏の終りの名残惜しさと秋の始まりの寂しい時季などに心に効く(聴く)名曲ってあるものです。
そんな代表的な曲のひとつがこのシューベルト《アルペジオーネソナタ》ですね。
寒い冬の到来に備えて、しっかりと暖かい冬服を準備したら、しっかりと温かい飲み物を用意しませんか?
もちろん、聴く曲はシューベルト《アルペジオーネソナタ》…ですよ。
そんなわけで…
『ひとつの曲で、
たくさんな、楽しみが満喫できる。
それが、クラシック音楽の、醍醐味ですよね。』
今回は、以上になります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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