スラヴ民族を救え!
熱い!!
あまりにも熱い名曲♫
「ウラー(万歳)!」
《スラヴ行進曲》初演時に、まっさきに起こる、
聴衆による歓喜の叫び!!
ロシア人としてのチャイコフスキー、スラヴ民族としての誇りが大爆発を起こす名曲!!
さて、今回は、そんな熱い1曲、チャイコフスキー《スラヴ行進曲》解説とおすすめ名盤を紹介です。
【解説】チャイコフスキー《スラヴ行進曲》
こんな解説があります。
ロシア、ポーランド、チェコスロヴァキア、ユーゴスラヴィア、プルガリアなどの民を総称して、スラヴ民族といっているが、チャイコフスキーの「スラヴ行進曲」は、主として南スラヴ地方の旋律をとり入れ、スラヴ民族の意識を高揚させる演奏会用の音楽となっている。
出典:門馬直美 著 「管弦楽・協奏曲名曲名盤100」P104より引用
1875年、オスマン・トルコ帝国の支配下にあるセルビアで大勢のクリスチャンがオスマン・トルコ帝国軍に殺害されるという事件が起こります。
この多くの犠牲者を追悼するため、同じ民族のロシア人ピアニスト、ニコライ・ルービンシテインは立ち上がります。
1876年「セルビア傷病兵救済基金募集のための慈善音楽会」を企画したのです。
ルービンシテインは、親友のチャイコフスキーに作曲を依頼します。
その仕事を喜んで引き受けたチャイコフスキーは「スラヴ民族の団結への願い」からあふれ出るパワーを音楽に込めています。
初めは「ロシア・セルビア行進曲」と名付けられていまいたが、楽譜を出版する際には《スラヴ行進曲》と題名を変えて出版。
この《スラヴ行進曲》の初演は1876年9月25日、指揮はルービンシテインが引き受けました。
その演奏終了時、聴衆は熱気に包まれ、盛大な拍手と「ブラボー」の声ともに、
「ウラー(Урааааа)!」(「万歳!」の意)
と、熱く咆哮します。
そして、ロシアは翌1877年「スラヴ民族独立のために支援する」というカタチで戦争に介入し、見事に勝利をもぎ取ったのでした。
【楽曲を解説】チャイコフスキー《スラヴ行進曲》
さて、音楽の背景からして劇的であり、ストーリーを感じられる《スラヴ行進曲》ですが、この中にはセルビアの民謡がふんだんに使われています。
この民謡を紹介しながら《スラヴ行進曲》を解説していきましょう。
セルビアの民謡「太陽は明るく輝かず」
冒頭、どんよりと厚い雲に覆われて太陽の光の差さない様を思います。
これはセルビアの民謡「太陽は明るく輝かず」からメロディを引用しています。
なんとも物悲しい歌で
これは、武力によって支配されるセルビアの
- 不安
- 悲惨
- 痛み…
を表わしているようにも感じられてきます。
初めは暗くどんよりと展開しますが、段々と曲調が勇ましくなり悲劇性を深めていきます。
セルビアの民謡「懐かしいセルビアの戸口」
その悲劇が頂点にまで達すると、この後には親しみやすいメロデイディへと変わっていきます。
この後オスマン・トルコ帝国軍の襲い来るような不安と恐怖を感じる、しかし勇ましい曲調になっていきます。
セルビアの民謡「懐かしいセルビアの戸口」からの引用です。
「太陽は明るく輝かず」とは打って変わっての、なんとも明るくも勇ましいマーチ風の曲になり盛り上がっていきます。
しかし、再び音楽は、「太陽は明るく輝かず」の不穏な空気が支配します。
セルビア民謡「セルビア人は敵の銃を恐れない」
そして、やがてセルビア民謡「セルビア人は敵の銃を恐れない」の勇ましいマーチへ…。
このマーチによって、セルビア国民がオスマン・トルコ帝国軍へと勇ましく立ち向かっていく様が描かれます。
ロシア国家「神よ、皇帝を護りたまえ」
そして、最後にはロシア国家である「神よ、皇帝を護りたまえ」のメロディが使われます。
それは、さながらロシアがセルビア軍と合流し、オスマン・トルコ帝国軍を、見事打ち破っていく勇壮なストーリーが展開する場面がありありと浮かんできます。
これは同じくチャイコフスキーの名曲《序曲1812》のラストでも鳴り響く非常に重要なメロディであり、テーマとなっています。
【名盤3選の感想と解説】チャイコフスキー《スラヴ行進曲》
ユージン・オーマンディ:指揮 フィラデルフィア管弦楽団
アルパカのおすすめ度★★★★☆
【名盤の解説】
情感のこもった名盤でしたらコチラの名盤がおすすめです。
力強くありながら磨き抜かれたフィラデルフィアサウンドが堪能できる1枚。
録音が古いことは致し方ないとしてもオーマンディのバランスが良くまた瑞々しい音世界はやっぱり気持ちいいですね。
ヘルベルト・フォン・カラヤン:指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
アルパカのおすすめ度★★★☆☆
【名盤の解説】
アンサンブルの美しさを極めた名盤で圧巻!
なんとも色鮮やかに洗練されたスマート系のチャイコフスキーはカラヤンとベルリン・フィルハーモニー管弦楽団のお家芸とも言えます。
《スラヴ行進曲》の背景にあるストーリー性や情熱の部分よりは「美しいチャイコススキーが堪能できる名盤」です。
レナード・バーンスタイン:指揮 イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団
アルパカのおすすめ度★★★★★
【名盤の解説】
ユダヤ人、バーンスタインの思いのまま、自由自在に表現されていく
- 強弱の変化!
- スピード感!!
- アクの強すぎるくらいの民族臭!!!
そんな「魅力がイッパイの、カッコええ名盤」です!!
これは、スラヴ民族に対するユダヤ人バーンスタインと、ユダヤの国を本拠地に音楽活動を展開するイスラエル・フィルの、
- 情熱
- 執念(しゅうねん)
はたまた
- 怨念(おんねん)の為せるワザ
なのでしょうか?
これほど「セルビアやスラヴ民族全体への共感」を込めた演奏を展開する名盤も珍しい!
いい意味で「ため息の出るほどの感動」を与えてくれる情熱系《スラヴ行進曲》です。
Apple Musicで “紹介した名盤” が配信中
【まとめ】チャイコフスキー《スラヴ行進曲》
さて、チャイコフスキー《スラヴ行進曲》の解説とおすすめ名盤はいかがでしたか?
実際に起きた事柄、ストーリーに心動かされ、それを音楽として昇華することに長けていたチャイコフスキーです。
《スラヴ行進曲》においてもその輝かしい才能はいかんなく発揮され素晴らしい名曲に仕上がっていますよね。
ぜひ、ノリノリな気持ちでスラヴ民族に起こったストーリーを、
- その物語で
- 心で
- そして、耳で
感じてみてくださいね。
そんなわけで…
『ひとつの曲で、
たくさんな、楽しみが満喫できる。
それが、クラシック音楽の、醍醐味ですよね。』
今回は、以上になります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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