まるで「運命協奏曲」?
クセになりそな
スリリング♫
- 恐い、
- ハラハラ
- 緊張感…
なのになんだか惹(ひ)きつけられる…。
さて、今回は、モーツァルト《ピアノ協奏曲第24番》の解説とおすすめ名盤を紹介です。
- 【解説】モーツァルト《ピアノ協奏曲第24番》
- 【各楽章を解説】モーツァルト《ピアノ協奏曲第24番》
- 【名盤3選の感想と解説】モーツァルト《ピアノ協奏曲第24番》
- 【まとめ】モーツァルト《ピアノ協奏曲第24番》
【解説】モーツァルト《ピアノ協奏曲第24番》
モーツァルト《ピアノ協奏曲第24番》についてのこんな解説があります。
「第20番」と同様、暗く、重く、深く、そしてロマンティックな内容をもっているが、楽器の使い方のうまさと、管弦楽の充実ぶりなどは、「第20番」をしのいでいる。暗いが劇的な気分にあふれた第1楽章もすばらしいが、第2楽章ラルゲットの、「灰色のひだ」ともいうべき詩情にあふれたピアノと弦楽器との対話は、心にくい入ってくるものがある。また、協奏曲としては珍しく、第3楽章に変奏曲をもってくるなど、随所に新しい試みがなされているところも、大きな魅力となっている。
出典:志鳥栄八郎 著 「新版 不滅の名曲はこのCDで」P178より引用
まさしく、
- なんともほの暗く、
- 気が重く…
そして
- なんとも深いその透明度…
そんな印象が適度に、そして絶妙にブレンドされていて、なんともロマンティックでもある。
そんな「運命的な響きでありながら、さらに、美しい…」。
そんな名曲でも、また、ありますね…。
モーツァルトの作品には「短調」の暗い曲は少ないと言われます。
けれども、全部で27曲あるモーツァルトのピアノ協奏曲の中で、このピアノ協奏曲第24番とピアノ協奏曲第20番は「短調」です。
よく比較される2曲ですが、ともに、そこはかとなく深い
- 悲しみや、
- 諦観(ていかん)
のようなものをともなっています。
ただその深さには「個性の違った深さ」を感じます。
それを、たとえるならば、
- ピアノ協奏曲第20番は「果てしなく続く『深い湖の底』」
- ピアノ協奏曲第24番は「うっそうと茂る『深い森の奥』」
とでも言えましょうか?
また、ピアノ協奏曲第24番は、ピアノ協奏曲第20番にくらべますと、よりいっそう「運命的な響き」を感じます。
そういえばベートーヴェンの「運命交響曲」もモーツァルトの「ピアノ協奏曲第24番」と同じ調性である「ハ短調」ですね。
《ピアノ協奏曲第24番》の作曲を境にして、予約演奏会用の作曲依頼がピタリと入らなくなったモーツァルト。
あまりにも「自己の内面を追求した音楽作り」に没頭していったため、当時の聴衆のニーズに合わなくなったということがその理由と言われています。
そんなモーツァルトですが、数年後に迫る「死の予感、運命」のようなものを感じ始めていたのかもしれません。
【各楽章を解説】モーツァルト《ピアノ協奏曲第24番》
それでは、各楽章について解説します。
《ピアノ協奏曲第24番》は第1楽章から第3楽章までの3曲で成り立っています。
第1楽章 アレグロ
どんよりと重くて灰色の雲が、今にもこぼれてきそうな…雨…、そんな始まりです。
すると、
ドドドドド…♫
ドドドドド…♫
ドドドドド…♫
ドドドドド…♫
ドドドドド…♫
ドドドドド…♫
雨は
- 強く
- けたたましく
- そして、冷たく…
降る…♫
降る…♫
降る…♫
そんな、さみしくもふかく印象の残る第1楽章です。
第2楽章 ラルゲット
激情に
- 支配され、
- 疲れ、
- 身も心も、やつれ果て…
そんな第1楽章を超えた後にやってくる
- 優しさと
- 安らぎと
- 光…
それは、あたたかくも柔らかい「癒やしを与えてくれる、まるで葉ずれの音…」。
絶望や苦しみ、さみしさに覆われた《ピアノ協奏曲第24番》の中に、
フッと、差し込む木漏れ日のような、短くも印象的なひと時…。
そんな感想を持てます。
第3楽章 アレグレット
第1変奏
不安と恐れに支配されたような陰うつな始まりです。
第2変奏
ピアノが歌い、管楽器たちが支えながら淡々と歌われていきます。
第3変奏
駆け抜けるような寂しさが展開してドラマティックです。
第4変奏
ここで少し落ち着きを取り戻し、弾むようなピアノとクラリネットをメインに楽器たちが歌います。
第5変奏
再び駆け抜けるような曲調へと変化し展開。
第6変奏
すると再び調和に満たされた木管楽器たちに合わせてピアノが優しく歌います。
第7変奏
そして、覆われる
- ほの暗く
- 気が重く
- 暗い透明感…
モーツァルト《ピアノ協奏曲第24番》の根本テーマを思わせるような曲調へ…。
そして、そんな悲劇的な色彩をともなったまま幕を閉じるモーツァルト《ピアノ協奏曲第24番》…なのです。
【名盤3選の感想と解説】モーツァルト《ピアノ協奏曲第24番》
クララ・ハスキル:ピアノ
イーゴリ・マルケヴィチ:指揮
コンセール・ラムルー管弦楽団
アルパカのおすすめ度★★★★★
【名盤の解説】
ハスキルによるいち音いち音に対する美感の追求が聴ける名盤です。
その音の粒たちは、美しく弾(はじ)けながらも透明感を帯びた寂しさを歌います。
この透き通った音の中に白い光が駆け抜け交差する。
そんな輝くばかりのハスキルのピアノをマルケヴィチが威厳を帯びたバランスの良い演奏が引き立てます。
少しその威厳が行き過ぎな感もありますが、ずっと以前から「名盤」の名を冠されてきました。
そして恐らく未来においても、その「名盤」の座をゆずることはないでしょう。
録音の時、死を間近に控えていたハスキルの辞世の句にでも聴こえてくる名盤でもありますね。
内田光子:ピアノ
ジェフリー・テイト:指揮
イギリス室内管弦楽団
アルパカのおすすめ度★★★☆☆
【名盤の解説】
「詩情ゆたか」に歌われていて内田光子による「モーツツァルトの歌」が楽しめる名盤です。
またバックのジェフリー・テイトとイギリス室内管弦楽団の美しくも柔らかいサポートがこの名盤を最大限に引き立てています。
この悲劇の名曲である《ピアノ協奏曲第24番》を感性をこめて歌いきったこんな名盤も珍しいですね。
ぜひ同じく女流ピアニストのクララ・ハスキルの「透明感のある」名盤とも聴き比べたいところです。
ロベール・カザドシュ:ピアノ
ジョージ・セル:指揮
クリーヴランド管弦楽団
アルパカのおすすめ度★★★★☆
【名盤の解説】
枯れていて、どこか乾燥したイメージですが、この恬淡(てんたん)とした感じといいますか、
- 無私であり
- 淡白、
そう、それは、
- 執着を離れた境地…
そして、そんな演奏だからこそ悲劇的、運命的なこの《ピアノ協奏曲第24番》を静かに受け入れることが出来る…。
どこかこの世離れした隠遁者の響きを持つ、そんなカザドシュのピアノながら、それをバックで支えるジョージ・セルの高貴な管弦楽が演奏自体をこの世にとどまらせています。
そんなまれに聴くことの出来る異色の名盤です。
Apple Musicで “紹介した名盤” が配信中
【まとめ】モーツァルト《ピアノ協奏曲第24番》
さて、モーツァルト《ピアノ協奏曲第24番》の解説とおすすめ名盤はいかがでしたか?
この名曲の、
- なんともほの暗く、
- 気が重く…
そして
- なんとも深いその透明度…
モーツァルトが「聴衆向けの曲」から「心の内へと向けて書き始めた曲のひとつ」とも言えそうな《ピアノ協奏曲第24番》。
そんな「モーツァルトの思い」を感じながら聴くのも楽しいひとときです。
そんなわけで…
『ひとつの曲で、
たくさんな、楽しみが満喫できる。
それが、クラシック音楽の、醍醐味ですよね。』
今回は、以上になります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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