アルパカと聴く幸福なクラシック

クラシック音楽が大好きなアルパカが名盤を解説。曲のなりたちや魅力、おすすめの聴き方を解説します。

シューベルト:菩提樹【3枚の名盤解説】その歌詞と冬の旅の感想

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淡いお空に、浮かんでる

ふっくらと、やわらかい雲のよな

そんなやさしさと、さみしさを感じる名曲


シューベルト: 歌曲集「冬の旅」:菩提樹

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シューベルト:菩提樹は、シューベルトの歌曲《冬の旅》の中の1曲

ことさら有名で、心の柔らかい部分にまで届く「日本の童謡」のような安心感がありますね。

【歌詞の訳と解説「まるで童謡」】シューベルト:菩提樹

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シューベルト:菩提樹の、こんな解説があります。

ベートーヴェンが世を去った翌年の1828年、シューベルトが死の床で行っていた最後の仕事が、歌曲集《冬の旅》(この5曲目が「菩提樹」)の校正であった。

この歌曲集は、恋に破れた青年が、生きる望みを失って、凍てつく冬のさなかをさまよい、その間に体験するさまざまなことを歌いあげたもので、どの曲にも恋を失った悲しみ、苦しみがせつなく悲痛にあらわれていて、心にくいいってくる、すばらしい作品である。

出典:志鳥栄八郎 著 「不滅の名曲はこのCDで」P349より引用

シューベルト:菩提樹を知るために、まずは、有名な近藤朔風(さくふう)先生の、日本語訳の詩を紹介させていただきます。

とても言葉の美しい名訳ですね。

「()内の解説は、つたなくはありますが、アルパカが、入れさせていただきました」

近藤朔風:訳

泉に添いて 茂る菩提樹

(泉のほとりにたたずむ菩提樹)

したいゆきては うまし夢見つ

(その木に寄り添い、夢見たころ)

みきには彫(え)りぬ ゆかし言葉

(みきに刻んだ、うるわしき言葉)

うれし悲しに といしそのかげ

(うれしい時も、悲しい時も、身をよせた)

今日もよぎりぬ 暗きさよなか

(今日も通り過ぎる、暗い夜)

まやみに立ちて まなこ閉ずれば

(闇のなかにて、目を閉じれば)

枝はそよぎて 語るごとし

(枝はざわめき呼びかける)

来よいとし友 此処(ここ)に幸(さち)あり

(友よ、おいでよ、「幸福はここにあるよ」

おもをかすめて 吹く風寒く

(僕の頬を冷たい風が吹きすぎる) 

笠は飛べども 捨てて急ぎぬ

(帽子は風に、さらわれた。だけど、振り向くことはしない) 

はるかさかりて たたずまえば

(今や時もすぎ、はるかなる場所) 

なおもきこゆる 此処(ここ)に幸あり

(それなのに、なおも聞こえ来る、「幸福は、ここにあるよ」) 

此処(ここ)に幸あり

(「幸福は、ここにあるよ」) 

【歌曲「冬の旅」解説】シューベルト:「菩提樹」「春の夢」「郵便馬車」

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シューベルト:菩提樹は、歌曲《冬の旅》という歌曲集の第5曲目にあたるわけなのですが、歌曲《冬の旅》そのものは、全24曲で成りたっています。

以下に、題名を記しておきます。

  1. おやすみ
  2. 風見の旗
  3. 凍った涙
  4. かじかみ
  5. 菩提樹
  6. 増水
  7. 川の上でか
  8. かえりみ
  9. 鬼火
  10. 休息
  11. 春の夢
  12. 孤独
  13. 郵便馬車
  14. 霜おく髪
  15. からす
  16. 最後の希望
  17. 村にて
  18. 嵐の朝
  19. まぼろし
  20. 道しるべ
  21. 宿
  22. 勇気
  23. 幻の太陽
  24. 辻音楽師

この、シューベルト:菩提樹が収録されている、歌曲《冬の旅》は、全体としては暗い色彩に彩られています。

ひとつのエピソードがあります。

歌曲《冬の旅》が完成し、友人たちを集めて、シューベルト自身が歌い、聴かせました。

しかし、その際、あまりの曲の暗さに、友人たちはビックリしてしまいます。

ところが、シューベルトは、こう語りかけます。

「いつか君たちも、この曲のすばらしさをわかってもらえる日が来るよ。」と…。

たしかに、青年の失恋の、暗い心情が、歌われていますので、曲が暗いことは、当然といえば当然です。

そして、歌曲《冬の旅》を、作曲中のシューベルト自身が、暗い心情や、情念のなかに、生きていたことも事実でした。

それは、長く続く持病(梅毒)による苦しみによるものでした。

さらに、同じころ、尊敬するベートーヴェンが、亡くなるという悲しみが、シューベルトを、おそいます。

その後、葬儀が行なわれ、シューベルトも会葬に訪れます。

そして、その葬儀のあと、シューベルトは、仲間たちとともに、酒場へおもむきます。

その時、乾杯の音頭を取ったシューベルト。

この際の言葉が、

「この中で、次に、彼に続いて、早く死ぬ者に乾杯!」

というものでした。

そんな言葉を聞いた、まわりの友人たちは、イヤな予感がしたとのことですが、それが的中します。

つまり、それから間もなくして、シューベルトは、尊敬するベートーヴェンの後を追うように亡くなってしまったのでした。

この、シューベルトの歌曲《冬の旅》作曲の前後には、そんな暗い気持ちや、出来事とともに、あったわけです。

しかし、この悪い環境の中にあって、歌曲《冬の旅》を含めた、シューベルトにとっての、名曲の数々が生まれたという事実があります。

これは、大きな驚きです。

そんな、エピソードが、あったころの、シューベルト:歌曲《冬の旅》ですが、菩提樹以外にも、聴きやすい曲が2曲あります。

それが、11曲めの「春の夢」と13曲目の「郵便馬車」ですね。

「春の夢」


シューベルト:《春の夢》 ヘルマン・プライ 1961

「郵便馬車」


シューベルト:《郵便馬車》 ヘルマン・プライ 1961

とても、素朴で、やさしげな曲調のステキな小品ですね。

【3枚の名盤を解説】シューベルト:菩提樹

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ディートリッヒ・フィッシャーディースカウ:バリトン  
ジェラルド・ムーア:ピアノ

アルパカのおすすめ度★★★★★

名盤中の名盤と言っても、過言ではないと思います。

フィッシャーディースカウの、正確で精密な発声、細やかで、繊細な表現力は、ぬきんでていて、だれにも、到達しえない境地にまで昇華した美声。

また、この名盤の特徴としては、ジェラルド・ムーアのピアノの魅力があります。

フィッシャーディースカウの「究極」とも言える美声を、いかにして邪魔をせず、引き立て、しかも、意味のあるピアノ伴奏でありえるかを熟考した演奏となっていると思います。

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ディートリッヒ・フィッシャーディースカウ:バリトン 
アルフレッド・ブレンデル:ピアノ

アルパカのおすすめ度★★★★☆

フィッシャーディースカウの完璧なまでの美しさと、シューベルティアン(理想のシューベルト弾き)のブレンデルの表現の妙

ブランデルのタッチやニュアンスが、感性をくすぐるシューベルト演奏になっていて、素晴らしい。

ただ、歌曲《冬の旅》は、歌がメイン。

ちょっと、ピアノの主張が強いと言えば強いのかもしれません。

歌メインで聴きたい方(これが普通かも…)には、前述の、ムーアのピアノで聴かれることをおすすめします。

ペーター・シュライアー:テノール 
アンドラーシュ・シフ:ピアノ

アルパカのおすすめ度★★★★☆

もしたしたら、シューベルトが、求めた声に、近い演奏かも…。

本来、歌曲《冬の旅》は、テノール(男声の高音域)との指示で書かれています。

ただ、内容の暗さなどから、バリトン(男声の中音域)で歌われることも多いというのが、現状です。

ただ、あまりにも、曲の暗さに参ることがあることも、正直なところですね。

そんなときは、テノールで聴き直すのもいい選択ですね。

シュライアーのなんとも透明感のある声は、一味違ったすっきりとした味わいで、歌曲《冬の旅》が楽しめる名盤です。

とくに、「菩提樹」や、「春の夢」「郵便馬車」などの明るい基調の歌に、その明るさを秘めた声がピッタリくる名盤です。

【解説と名盤、まとめ】シューベルト:菩提樹

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さて、シューベルト:菩提樹の、名盤の紹介と、解説はいかがでしたか?

身も凍るような、冬の寒さを感じさせる歌曲集《冬の旅》。

その中でも、ふと、明るい歌が現れる。

それが、シューベルト:菩提樹ですね。

冷たい風が、吹きすさぶような歌曲《冬の旅》ですが、家のなかには、暖炉のあたたかさ。

そんなイメージがある、シューベルト:菩提樹。

気持ちを、「ほっこり」させたいときに聴くのなんて、アリかも…。

 

 そんなわけで…

 

『ひとつの曲で、

たくさんな、楽しみが満喫できる。

それが、クラシック音楽の、醍醐味ですよね。』

 

今回は以上になります。

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

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