版(バージョン)による盛り上がりの違い
打楽器は必要?不必要?
どちらがステキに聴ける!?
- 【ハース版とノヴァーク版の違いと効果を解説】ブルックナー:交響曲第7番
- 【各楽章を解説】ブルックナー:交響曲第7番
- 【5枚の名盤を解説】ブルックナー:交響曲第7番」
- 【解説と名盤、まとめ】ブルックナー:交響曲第7番
【ハース版とノヴァーク版の違いと効果を解説】ブルックナー:交響曲第7番
瞑想的な静けさと、熱気をおびた盛り上がり。
2つの魅力を含んだ、ブルックナー:交響曲第7番。
とくに、第2楽章は、曲の強弱の落差が大きく、さまざまな意見があります。
作曲者のブルックナーは、人の意見や、環境に左右されることがしばしば。
ブルックナー:交響曲第7番を作曲後、ラストの盛り上がりで、シンバルを始めとする打楽器を楽譜に書き足したのも、そんな理由からでした。
これについては、後の研究者のさまざまな意見があります。
とくに、重要なのが、ローベルト・ハースとレオポルト・ノヴァークの2人の研究者の意見です。
つまり、シンバルを始めとする打楽器をけずるかどうかの意見対立です。
ローベルト・ハースは「ブルックナー本人の意志ではない。けずるべきだ!」との考えで、研究を進めます。(この考えが、後のハース版として結実)
これに対して、
レオポルト・ノヴァークは「演奏に盛り上がりに欠ける。けずることには、反対だ!」との立場での研究を進めました。(この考えが、後のノヴァーク版として結実)
そんな、議論は、いつになっても尽きることがありません。
ちなみにアルパカ個人の好みとしては、シンバルのならない、静かな方が好きではあるのですが…。
でも、結局は、「さまざまな解釈をした指揮者が、自分の信念にしたがって演奏する」。
それでいいのかもしれないですね。
そして、その方法としての、第2楽章のシンバルをはじめとした他の打楽器の、にぎやかさは、いるか、いらないか?
さあ、その究極の正解はどこにあるのでしょう?
それは、結局、私たち「リスナーひとりひとりが、好みの演奏を選んでいく」中にありそうだと思うのですが…。
【各楽章を解説】ブルックナー:交響曲第7番
こんな解説があります。
初演は、大指揮者ニキシュの指揮で行われ、彼(ブルックナー)のはじめての成功作となった。
時にブルックナーは六十歳。
ウィーン音楽院の教授に迎えられてから、苦節20年目の勝利であった。
そのスケールの大きさ、オルガン的な響きの美しさ、宗教的な深さなど、彼の後期の交響曲に、特に共通する作風の、もっともよくあらわれた作品となっている。
出典:志鳥栄八郎 著 「不滅の名曲はこのCDで」P53より引用
本当に長い間の苦労が実って、認められた曲なのですね。
驚きです。
さて、では、各楽章についての解説に入ります。
この曲は、第1楽章から第4楽章までの4曲で成り立っています。
第1楽章 アレグロ・モデラート(ほどよく速く)
冒頭の主題に関しての、こんなエピソードがあります。
ある晩、ブルックナーの夢に、10年ほど前に亡くなった、友人、イグナーツ・ドルンが出てきます。
「なあ、アントン(ブルックナー)、これから私が吹く口笛を、覚えておいてくれ。
このテーマで、作曲すれば、君は、きっと成功をつかめるよ…」。
そんな夢を見たブルックナーは、びっくりして、目を覚まします。
そして、スクっと起き上がり、ろうそくを灯します。
そして、急いで、その「夢で聴いたテーマを書きとめた」というエピソードが残っているのです。
そして、夢の中の、友人イグナーツ・ドルンの語った予告通りに、「遅咲きのブルックナー」の成功は、やってきたのでした。
まさしく、神様からのインスピレーションとも取れそうな、第1楽章。
淡々(たんたん)としていながら、どこか、つつしみ深い祈りのような響きを感じますよね。
第2楽章 アダージョ(非常に荘厳に、そして非常にゆっくりと)
ブルックナー:交響曲第7番における、ひとつの聴かせどころです。
全体としては、瞑想的で、静けさの続く、心落ち着く1曲です。
前節にも書きましたが、クライマックスには、盛り上がるところがあります。
ここで、さらなるシンバルや、他の打楽器で盛り上げるかどうかのことについては、書きました。
ただ、やっぱり、ブルックナー:交響曲第7番の中でのキモとも言える第2楽章です。
目を閉じて、じっくり聴きたいところですね。
第3楽章 スケルツォ(急速で快活に)
勢いがあります。
どことなく、舞曲風のノリの良さがありながら、野性的でもあります。
独特なリズム感や、進行はブルックナー的とも言えそうです。
第4楽章のフィナーレの前の序曲的な1曲
第4楽章 フィナーレ(運動的に、あまり速くなく)
静かに始まりますが、曲が進むにつれて、テンポも早まりながら盛り上がっていきます。
たくさんの音楽の浮き沈みがありながら、進み、感動的なクライマックスを迎えます。
【5枚の名盤を解説】ブルックナー:交響曲第7番」
セルジュ・チェリビダッケ:指揮 シュトゥットガルト放送交響楽団
アルパカのおすすめ度★★★★☆
激しく情感のこもった、魂の演奏。
これほど、ブルックナーの音楽を愛した指揮者も珍しい。
これ以外にも、ミュンヘン・フィルハーモニーを指揮したものがあります。
そちらのほうが、一般には、評価は高いし、情感もさらに強くこもっています。
また、熱気もハンパないのです。
ただ、あまりにも情感がこもりすぎて、アルパカとしては、なかなか始めから最後まで通しで聴くのが少しキツイので2日に分けて聴いたりしています。
そんなわけで、アルパカとしては通しで聴くなら、こちらの、シュトゥットガルト放送交響楽団のほうなのですね。
一応、ミュンヘン・フィルハーモニーの名盤は、下記に紹介しておきます。
オイゲン・ヨッフム:指揮 シュターツカペレ・ドレスデン
アルパカのおすすめ度★★★★☆
シュターツカペレ・ドレスデンの趣きのあるあたたかい演奏と、ヨッフムの構築性がタッグをくんだ名盤。
ブルックナー:交響曲第7番には、とてもピッタリ来ます。
全体のバランスの良さが抜群ですね。
末永く聴き続けるのに適した、聴きやすい名盤です。
ブルーノ・ワルター:指揮 コロンビア交響楽団
アルパカのおすすめ度★★★★☆
人間味にあふれ、感性にうったえてくる名盤です。
飾り気はないのに、豊かな情感が流れくるのは、ブルーノ・ワルターの人柄のなせるワザ。
たんたんと刻むリズムの中に、たしかにひそむ、「人類への深い愛情」が感じられる深い感動の名盤です。
カルロ・マリア・ジュリーニ:指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
アルパカのおすすめ度★★★★☆
優美で柔らかく展開する音楽と、その情緒は、カルロ・マリア・ジュリーニとウィーン・フィルハーモニー管弦楽団ならではのものですね。
どこまでも趣味がよく、美感の極みでつらぬかれている名盤。
とくに第2楽章の美しさは、絶品ですね。
朝比奈隆:指揮 大阪フィルハーモニー管弦楽団
アルパカのおすすめ度★★★★☆
愚直で一途なブルックナー演奏をし続けた朝比奈隆の名盤。
第2楽章の盛り上がりでは、シンバルやその他の打楽器は使用しない演奏です。
静けさを選んだようですね。
そして、その静けさを打ち破るような第3楽章のテンポの速さとパンチの効かせ方はクセになります。
ただ、全体としては、淡々としていて、主張がないように聴こえなくもないです。
しかし、なかなかどうして、そんな演奏こそ、ある意味ブルックナーらしいと言える名盤ですね。
その飾り気のない語り口から、つむがれていく音楽は、噛めば噛むほど味がでるという表現がピッタリ。
何回も聴くほどに、ハマっていく朝比奈ワールドに沈潜するのもいいものですし、そんな感想が持てる名盤です。
Apple Musicで “紹介した名盤” が配信中
【解説と名盤、まとめ】ブルックナー:交響曲第7番
さて、ブルックナー:交響曲第7番の、名盤の紹介と、解説はいかがでしたか?
- シンバルや、他の打楽器を、入れるか入れないかの議論。
- 夢で教わったテーマを書きとめたことで、成功した話し
そんな、面白いエピソードに満ちている、ブルックナー:交響曲第7番。
長い曲です。
時間が取れた時、のんびりとブルックナー:交響曲第7番の世界に耳を傾けるのも悪くないです。
夢の中で降りた、インスピレーションによる、「瞑想的な、神さまからの音楽の贈りもの」に触れるのも悪くないですよ。
そんなわけで…
『ひとつの曲で、
たくさんな、楽しみが満喫できる。
それが、クラシック音楽の、醍醐味ですよね。』
今回は以上になります。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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