フィンランド
春の気配に
降りる、楽想!
フィンランド国内で、日本でいうところの「人間国宝」といってもおかしくないシベリウスが生誕50年を迎えます。祝賀演奏会が企画されて交響曲を披露することになるシベリウスでしたが…。
今回は、シベリウス:交響曲第5番の解説とおすすめ名盤を紹介です。
【解説】シベリウス:交響曲第5番
曲ができるまで
国中が「おらがマエストロ」の生誕50年を祝う祝賀気分と、新作交響曲への期待感で湧き立っていた。その中で、シベリウスは、再び往年の活力と、線の太い巨人性を回復させて、《第2》に負けない豪放華麗な浪漫的交響曲を書いた。緩ー急、緩急。3楽章の構成だが、その背景には、1楽章構成の交響曲、つまり《第7》の影がすでにしのび寄ってきている。
出典:諸井誠 著 「交響曲名曲名盤100」P186より引用
シベリウスは日本でいうところの人間国宝のような立場にありました。1915年、シベリウスの生誕50年という節目に、フィンランド政府は国家的な記念行事として祝賀演奏会を企画します。解説にあるように「おらがマエストロ」を祝おうと国中が盛り上がりますが、この祝賀会のために作曲されたのが交響曲第5番でした。
当時、シベリウスは交響曲第6番と第7番の楽想も得ていましたが、祝賀演奏会のための交響曲第5番を優先的に作曲します。シベリウス自身は生活のために出版社からの依頼も受けなければならないため交響曲第5番の作曲に集中することができません。
作曲作業がなかなか進まないながらも交響曲第5番の作曲は祝賀演奏会には間に合い、シベリウス自身が指揮者を務めて大成功をおさめます。
2回の改訂
交響曲第5番の初演の評判は良かったもののシベリウス自身は出来に対して納得できませんでした。初演の翌年1915年、1回目の改訂を行い初演からちょうど1年後に当たる12月8日にフィンランド国内トゥルク市においてシベリウス自身の指揮のもと、演奏会が開かれます。
しかし、ここでもいまひとつ納得のいかないシベリウスはさらに改訂を行います。1919年11月24日ヘルシンキにおいて再びシベリウス指揮のもとで演奏が行われます。この時の稿が最終稿となり現在、演奏される際にはこの最終校が採用されることがほとんどです。
交響曲第5番の作曲中のエピソードとしては「ある日の散歩中、春のおとずれをふと感ずるとともに交響曲第5番の楽想が降りた」ということがあったそうです。
初演:1915年12月8日ヘルシンキにて
指揮:シベリウス自身
編成:
弦5部、フルート×2、オーボエ×2、クラリネット×2、ファゴット×2、ホルン×4、トランペット×3、トロンボーン×3、ティンパニ、
【各楽章を解説】シベリウス:交響曲第5番
第1楽章 テンポ・モルト・モデラート|アレグロ・モデラート(マ・ポコ・ア・ポコ・ストレット)|ヴィヴァーチェ・モルト|プレスト・ピウ・プレスト
序奏なしでホルンが静かに歌いだせば、弦楽器も木管楽器もそっとホルンに絡みながら北欧の持つ神秘的で透明感のある印象を醸します。音楽は少しずつ、少しずつ温度を上げていき最後は爆発的に盛り上がりながら終わっていきます。
第2楽章 アンダンテ・モッソ・クアジ・アレグレット|ポコ・ア・ポコ・ストレット|トランクィッロ|ポコ・ア・ポコ・ストレット|リテヌート・アル・テンポ
ピチカートでゆったりと弦を歌わせながら始まります。変奏曲の形をとっており終始淡々とした流れで音楽は展開するやわらかい印象の楽章です。
第3楽章 アレグロ・モルト・ミステリオーソ|ウン・ポケッティーノ・ラルガメンテ|ラルガメンテ・アッサイ|ウン・ポケッティーノ・ストレット
疾風のごとく駆け抜ける弦楽器のトレモロから入り、ホルンが重なって高らかに歌い始めると少し憂いを帯びた木管も参加します。よどみなく流れていく大河が、人の持つ「喜び」「楽しみ」、「悲しさ」や「苦悩」「不安」そして「高まる思い」。さまざまな感情を包み込み、流れ、流れ、流れ続けていく姿のような壮大さをともなった感動的なフィナーレです。
【名盤5選の感想と解説】シベリウス:交響曲第5番
バーンスタイン:指揮 ウィーンフィルハーモニー管弦楽団
アルパカのおすすめ度★★★★★
【名盤の解説】
シベリウスの音楽世界にのめり込むような演奏で注目の名盤です。落ち着きのあるテンポを基調にしながら、緩急のコントラストも強めに引き立てて彩り豊かに仕上げています。
若きころのバーンスタインのエネルギッシュなパッションは減っているかもしれませんが、円熟の境地から響き渡る奥深いサウンドは注目です。ウィーンフィルハーモニー管弦楽団もそんなバーンスタインをしっかりサポートしています。
コリン・デイヴィス:指揮 ボストン交響楽団
アルパカのおすすめ度★★★★★
【名盤の解説】
ボストン交響楽団のふくらみのある音が曲調に合う名盤です。第1楽章のゆったりと歌わせながら聴かせるところは自信のほどをうかがわせます。盛り上がりのところでも非常に豪華な響きで引き込まれる感覚。
第2楽章でも安定したアンサンブルのうまさを披露、第3楽章に至ってもなお緊張感の切れないところはさすがです。
サー・ジョン・バルビローリ:指揮 ハレ管弦楽団
アルパカのおすすめ度★★★★☆
【名盤の解説】
ハレ管弦楽団の潤いと艶やかさがバルビローリによって見事に引き出された名盤。非常に堂々とした中にも繊細な美しさに満ちています。バルビローリのシベリウスは彩り豊かな歌ごころにあふれていて飽きることがありません。それは勢いがあり力強い曲であっても品が保たれている元となっています。
シベリウスの音楽の持つ透明感をもっともよく引き出した名盤を聴きたい時にはバルビローリに原点回帰です。
パーヴォ・ベルグルンド:指揮 ヘルシンキ管弦楽団
アルパカのおすすめ度★★★★☆
【名盤の解説】
シベリウスを演奏させたら右にでるものがいないというくらいシベリウスの音楽が体に染み付いたベルグルンドです。「音楽が作られている」といった感覚も失うほどの自然な流れで聴けるシベリウスの名盤です。
シベリウスを通してフィンランドの情景をありありと見渡したい時にグッと染み入ってきます。氷の世界からのぞかせる勇壮で力強い世界。ベルグルンドの演奏で楽しみたいものです。
クラウス・マケラ:指揮 オスローフィルハーモニー管弦楽団
アルパカのおすすめ度★★★☆☆
【名盤の解説】
ひとつひとつのフレーズに細やかな強弱をつけてシベリウスの音楽を彩り豊かに鳴らせている名盤です。録音が鮮明であることも魅力で楽器のニュアンスもしっかりと聴き取れます。
自然な流れで、とうとうとゆく川を思わせるような音作りと美しいアンサンブル。若くして活躍の華々しい注目のマケラ指揮の名盤です。
Apple Musicで “紹介した名盤” が配信中
【まとめ】シベリウス:交響曲第5番
シベリウス:交響曲第5番の解説とおすすめ名盤はいかがでしたか?
フィンランド
春の気配に
降りる、楽想!
音楽家としての地位も名声もあり充実したシベリウスの、豊かな感性がふつふつと沸き上がって力強い交響曲第5番。ほとばしるシベリウスへの情熱が著しい名盤も紹介してきました。
「冬近し…」そんなゆったり流れる刻(とき)の中で楽しみたいシベリウスの名曲交響曲、ぜひ聴いてみてくださいね。
そんなわけで…
『ひとつの曲で、
たくさんな、楽しみが満喫できる。
それが、クラシック音楽の、醍醐味ですよね。』
今回は、以上になります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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