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シベリウス:交響曲第7番【解説と名盤3選】極まる形式美と内なる動機の昇華!

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深淵なテーマ

完成後の憂うつ

耽美な神秘性、宿る

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今回は、シベリウス交響曲第7番解説とおすすめ名盤を紹介です。

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【解説】シベリウス:交響曲第7番

形式について

「第7番」は、通常の交響曲の4楽章分の内容を1つの楽章に圧縮するという、誰もが考えつかなかった形式を用いているのである。シベリウスは、この曲を最初、「交響的幻想曲」と呼んだが、たしかにこの曲は、交響詩の規模をいちだんと大きくし、発展させたような内容となっている。

出典:志鳥栄八郎 著 「新版 不滅の名曲はこのCDで」P78より引用

解説にありますように交響曲第7番は本来、4楽章を通してつむがれる交響曲という形式を超えて1つの楽章の中に音楽が展開しています。交響曲第7番と同時に作曲を進めていた交響曲第5番と6番を完成させていくうちにたどり着いた形式といえます

交響曲第5番が第1楽章と第2楽章が切れ目なくつながって演奏されることがそのひとつ。さかのぼって第2番では第3楽章と第4楽章は切れ目なく演奏され、第3番では第3楽章と第4楽章がひとつになって最終楽章となっているからです。

シベリウスの交響曲は番号を重ねていくにつれて統合を目指し、第7番では1つの楽章で完結することにより交響曲の最終形態を実現したといえるかもしれません

交響曲に対する考え方

1907年にシベリウスのもとを訪れた作曲家のマーラーは、

「交響曲とは『世界』という要素を包括するようなものでなくてはならない…」

と、語ります。これに対しシベリウスは、

「交響曲には内的な動機を結びつける深遠な論理が大切だ…」

という考えを明らかにしています。

マーラーの交響曲を見ていくと、第1番では夜が明けるときの静けさを思わせるいわば「始まり」のイメージがあります。朝は「復活」し第3番では繁栄する。交響曲の歴史は紆余曲折を経て第8番で爆発的に規模が拡大。第9番では東洋的な「諦観」、終わりのようなものを感じさせます。そして第10番は(未完に終わってますが全曲盤を聴くと)全てを終えて「空」の世界へと還ってゆく感覚があります。

これに対してシベリウスの交響曲は一度広がりを見せた交響曲世界を、第7番でひとつに集約していったように感じます。

マーラーは、交響曲全体を持って『世界』の要素を表し、シベリウスは『世界』に存在する動機を1つに結びつけたといえるかもしれません

幻と消えた交響曲第8番

「7番よりもよい交響曲を書くことができなければ、7番を最後としなければならないだろう…」

シベリウス自身の言葉を象徴するように第8番の発表はされることなくシベリウスは世を去ります。ほぼ4〜5年に1曲のペースで書かれていた交響曲は第7番の完成後、亡くなるまでの33年間、書かれることがありませんでした

晩年のシベリウスはうつ病を患っていたということも原因としてあるかもしれません。シベリウス婦人の証言では交響曲第8番の楽譜をシベリウス自らの手で焼き捨てていたともいわれています。

しかし、交響曲第8番が書かれたのかどうかの真相は、志鳥栄八郎 著 「新版 不滅の名曲はこのCDで」P78より言葉を借りますと…

ほんとうに作曲されていたのか、あるいは、作曲半ばで破棄されてしまったのか。べては、フィンランドのあの黒くて深い森のように、神秘のヴェールに包まれたものとなっている

…わけなのです…。

初演:1924年3月25日ストックホルムの楽友協会にて

指揮:シベリウス自身

編成:

弦5部、フルート×2(ピッコロ持ち替え)、オーボエ×2、クラリネット×2、ファゴット×2、ホルン×4、トランペット×3、トロンボーン×3、ティンパニ

 

【各部を解説】シベリウス:交響曲第7番

アダージョ(序奏)

不可思議さをまとった深い闇から弦と木管のうめき声がこんこんと流れ出てきます。静けさを裂くようにトロンボーンが吠えますが、これも空しく消え入るように力を失うと再び木管と弦がネガティブに響き渡るのです。

 

ヴィヴァーチッシモ|アダージョ

はっきりとしたテンポで音楽が進み始めながら音楽でいうところのヴィヴァーチェのリズムが刻まれます。序奏の不可思議さをそのままに勢いを増します。

 

アレグロ・モルト・モデラート|アレグロ・モデラート

シベリウスらしい北欧を思わせる透明感を帯びた明るさが覆い始めます。ネガティブだった弦と木管も柔らかさが出てきてストレスを開放するように歌います。テンポとリズムが熱を帯びていきます。

 

ヴィヴァーチェ|プレスト|アダージョ|ラルガメンテ・モルト|アッフェットゥオーソ

盛り上がりは続きながら次第にテンポが落ち着き力強さは増します。頂点までいった後に幻想的な弦の歌が始まり北欧の寒さ冷たさのような透明感をまとっていきます

静けさを取り戻しますが、序奏のような暗さはぬぐい去られていきながら交響曲第7番はファンタジックに終わりを迎えるのです。

 

【名盤3選の感想と解説】シベリウス:交響曲第7番

 

パーヴォ・ベルグルンド:指揮 ヘルシンキフィルハーモニー管弦楽団 

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アルパカのおすすめ度★★★★★

【名盤の解説】

深い闇から漏れ出てくるフレーズの中に磨かれた美しさが満ちている名盤です。憂うつさが覆いながらもひとつひとつの語り口に丁寧さがうかがえます。音の柔らかさの中に北欧の自然とそこに息づく優しさが感じられます。

ヨーロッパ室内管弦楽団との演奏も注目です。ヘルシンキフィルとの演奏に比べるとスッキリと明快なアンサンブルを聴かせてくれます。どちらも素晴らしいですがヘルシンキフィルの神秘的な魅力をとりました。

 

クラウス・マケラ:指揮 オスロフィルハーモニー管弦楽団 

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アルパカのおすすめ度★★★★★

【名盤の解説】

若くてフレッシュな感性とオスロフィルのつややかな美感が魅力の名盤です。この深淵から香ってくるような妖艶な交響曲を耽美な音芸術にまで昇華しています。録音の良さもありますが実に堂々とした盛り上がりも聴かせます。

ベルグルンドのような神秘的な印象はうすくてもシベリウスの音楽の持つ雄大さを有効に引き出しています。将来がとても楽しみな指揮者ですしジックリと腰を据えて聴きたい名盤でもあります。

レナード・バーンスタイン:指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 

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アルパカのおすすめ度★★★★★

【名盤の解説】

神秘感からは遠いかもしれませんが深刻な気持ちから救ってくれる名盤です。バーンスタインらしくメリハリは効いていますが、ある意味で聴きやすいともいえます。ウィーンフィルハーモニー管弦楽団の一音一音の美感はシベリウスの音楽にも合います。

あまりにも叙情性を重視しても曲全体のバランスをいびつなものにしてしまいますが、まさしく指揮者と楽団とのバランス感覚が素晴らしいといえる名盤です。

 

【まとめ】シベリウス:交響曲第7番

シベリウス交響曲第7番の解説とおすすめ名盤はいかがでしたか?

深淵なテーマ

完成後の憂うつ

耽美な神秘性、宿る

シベリウスが最後にたどり着いた交響曲の形式における究極の答えであり、語り尽くしてしまった感のある交響曲第7番。

目を閉じてジックリ聴き込めば北欧の自然と、シベリウスが交響曲を通して語りたかったことの集大成を聴き取れます。

 

 そんなわけで…

 

『ひとつの曲で、

 

たくさんな、楽しみが満喫できる。

 

それが、クラシック音楽の、醍醐味ですよね。』

 

今回は、以上になります。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

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