見渡す田園
美し緑
うまし空気の気持ちよさ
【楽曲を解説】ブラームス:交響曲第2番
ブラームスは1877年(44歳)の夏、このペルチャッハに避暑のため滞在し、その美しい自然のなかで創作の筆を大いに進めたのだった。この曲は、この地の大自然から受けた感動を、いわば即興的につづったもので、わずか4カ月という、ブラームスとしては異例の早さで作曲されたものである。
この「第2番」は、俗に「田園」と呼ばれているが、ベートーヴェンの「(交響曲)第6番(田園)」のように標題的な意味や描写的な内容をもっているわけではなく、この曲ののびのびとした明るさが、ほのぼのとした「田園」情緒も伝えているからである出典:志鳥栄八郎 著 「不滅の名曲はこのCDで」p57より引用
解説にありますように、そんな自然にいやされるような雰囲気を持ったブラームス「交響曲第2番」ですね。
「ベートーヴェン「交響曲第6番『田園交響曲』」について書いたことがありましたが、このブラームス:交響曲第2番は「ブラームスの『田園交響曲』」と言われるくらい、自然の癒やしが、深く感じられる1曲に仕上がっていますよね。
解説にもある通り、このブラームス:交響曲第2番は南オーストリアにある湖畔、ペルチャッハで滞在して、4ヶ月で書き上げたと言われています。
これは、書き始めてから書き直しを含めると、21年もかかったと言われる交響曲第1番にくらべると、奇跡的と言えるほどの速さで完成した1曲と言っていいかもしれません。
また、ブラームスが書いた手紙のなかで「このペルチャッハという土地にはメロディがたくさん飛び交っているから踏みつぶさないように…」という趣旨のことを書いているようですが、まさしく、そんな環境のなかで、たくさんの楽想(音楽のインスピレーション)が、湧いて来てしかたないくらいだったことでしょう。
それは結果をみれば明らかで、ブラームス:交響曲第2番は、ブラームスの作曲した音楽の中でも、ずば抜けて美しい旋律に満ち満ちていると、言っていいと思います。
【各楽章を解説】ブラームス:交響曲第2番
第1楽章「アレグロ・ノン・トロッポ(速く、しかしあまり速すぎないように)」
雄大な山々に囲まれた湖畔とまさしく、ブラームスが手紙で書きとめたようにペルチャッハに住む音楽の妖精たちのほほえみとが、交わりあって大いなる喜びを味わっている。そんなイメージの1曲ですね。
第2楽章「アダージョ・ノン・トロッポ(ゆるやかに、しかしあまり遅すぎないように)」
深い森の中、心地よい鳥や風のささやきを聞きながら散策し、瞑想状態に没入する感覚ですね。
ゆったりと落ち着き、なにものにも動揺せずに、ただ、ただ、重厚。
深い精神的充実の時を、その歩くテンポと同調するように、満たされた時がおもむろに(ゆったりと)流れていきます。
そんな情景を音楽に昇華したように感じますね。
第3楽章「アレグレット・グラチオーソ(やや速く、優雅に)」
優しい陽光がほほを照らし、気持ちのいい空気を与えてくれる森の恩恵。
動物たちや虫たち、鳥や木々や草花たちは喜んで、そして、たくさんの森の妖精たちも愉快なダンスとともに歌います。
みんないっしょ
いつでもいっしょ
歌もおどりも集まって
みんな、いっしょに笑ってる♬
そんな森の風景を感じる楽しい1曲です。
第4楽章「アレグロ・コン・スピリート(活き活きと速く)」
とても勇ましくて、元気の出る。そんなワクワクする1曲です。
雄々(おお)しくそびえる山々や、勢いよくはじける川の激流、あるいは、「力いっぱいに駆けめぐるクマや馬たちの、元気に自然を謳歌するさまを想像したような」とも言えましょうか。
この「自然賛歌」とも言えるブラームス:交響曲第2番の壮大なクライマックスは、どこまでも「果てしなく続く、空と大地の歌」と言っても言い過ぎではないと思います。
【名盤3選の解説】ブラームス「交響曲第2番」
それでは、この「自然賛歌」にも感じるブラームス:交響曲第2番の名盤CD2枚を紹介していきたいと思います。
ピエール・モントゥー:指揮 ロンドン交響楽団
常に、ブラームスを尊敬してやまなかったピエール・モントゥーですが、その気持ちはこのアルバムの中にぎっしりと詰め込まれていて、今にもこぼれてきそうなくらいです。
「ピエール・モントゥーのつくる音楽自体が、すでにブラームス」とでも言うのでしょうか。なんとも言えない感覚で、このブラームス:交響曲第2番という曲との一体感のようなものを感じるのですよね。
けだし、名盤です!
ひとつの理想の形とでも言うのでしょうか。
この演奏を模範にしながら、これからもたくさんのブラームス「交響曲第2番」の素晴らしい演奏が登場してくるのではないかと思えるほどです。
間違いなく一聴の価値ある1枚ですね。
ブルーノ・ワルター:指揮 コロンビア交響楽団
実は、アルパカは昔、ブラームスをほとんど聴きませんでした。
メロディ自体があまり心に響かない感じがしていたのですよね。
でも、ある時、ブラームスは評価の高い作曲家だし、とりあえず、もう少したくさん聴いてみようと思い、アルパカの大好きなブルーノ・ワルター指揮のものでCDを買ってみたのです。
そのとき、考えが変わりました。
「やっぱりよく聴くと、ブラームスはメロディは美しいし、音楽のつくりも重厚だし、いいものだな。」と…。
そんなブラームスを好きにさせてくれた1枚がこのブルーノ・ワルター指揮のアルバムなのですね。
ベートーヴェン「交響曲第6番『田園』」やシューベルト「交響曲第5番」の際にも紹介しましたが、ブラームス:交響曲第2番のような牧歌的な曲に、うってつけなのが、このブルーノ・ワルターの名盤CDですよね。
そんなことで、再び選んでみました。
カルロ・マリア・ジュリーニ :指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
ゆったりとして、落ち着いたテンポで進められます。
本来のブラームス:交響曲第2番の繊細で美しい「メロディのカタチ」が感じられて心地よいのです。
演奏もウィーンフィルの、柔らかく、優美な響きをもって行われますので、素晴らしい演奏です。
早めのテンポで、痛快に聴きたい方には、不向きではあります。
でも、腰を落ち着けてブラームス:交響曲第2番を堪能したい方におすすめの1枚ですね。
全体的にゆっくめですが、それだけに、最終楽章の最後の盛り上がりは圧巻です♬
Apple Musicで “紹介した名盤” が配信中
【解説と名盤、まとめ】ブラームス:交響曲第2番
さて、ブラームス:交響曲第2番、名盤の紹介と解説はいかがでしたか?
忙しい毎日の中、なかなか自然と遊ぶ機会はつくれませんね。
そんな時には、町に咲く草花や、見上げた空の雲をながめつつ、ブラームス「交響曲第2番」の名盤CDに聞き惚れる。
そんなひとときを持つのもいいものです♬
そんなわけで…
『ひとつの曲で、
たくさんな、楽しみが満喫できる。
それが、クラシック音楽の、醍醐味ですよね。』
今回は以上になります。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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