「まさしく萌えいづる若葉のイメージですね。草原の緑、泉から湧き出る透明で清冽な水。」
【解説】シューベルト:交響曲第5番
ピアニストのブレンデルは建築家ベートーヴェンに対して、シューベルトを夢遊病者としている。次々に湧き出る楽想の奔流に身をまかせて変転するよろめきがちな構成とか、しばしば起るとめどない反復がその印象を与えるのだろうが、この第5交響曲に見るシューベルトにそうした弱さはない。引きしまった構成はベートーヴェンより古典的。各楽章の見事な均衡は端正な形式美をさえも示している。これは、ハイドンとモーツァルトの間に生えた美しい四葉のクローバーだ。そして、「悲劇的」な第4と、楽天的な第6の間にあって、この第5は、青春の瑞々しい生気で萌え立つ若葉を思わせる存在なのである。
出典:志鳥栄八郎 著 「不滅の名曲はこのCDで」p64より引用
諸井先生の解説はシューベルトの本質を言い当てていて素晴らしいですね。
まさしくこの曲は草原の中に、まれに存在する四葉のクローバーのようなみずみずしさといえますよね。
四葉のクローバーといえば、これを音楽家でたとえると、ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルトの4人は、同じ時代を生きた、まさしく四葉のクローバーだったような気がしています。
とにかく4人とも旋律が美しい。
「音楽」という広大な草原の中で、たしかに存在する四葉なのではないかなと思うのはアルパカだけなのでしょうか?
【各楽章を解説】シューベルト:交響曲第5番
第1楽章:アレグロ(速く)
ちいさきお花や草たちが楽しく語らいながら笑ってる。
そんな中、吹いてく風がおとずれて、「ぼくもまぜて」となでていく。
そんな草原の物語りが展開していくさまがありありと見えてくるのですよね。
第2楽章:アンダンテ・コン・モート(歩く速さで、動きを付けて、速めのテンポで)
ゆりかごで、
すやすや眠る赤ちゃんは、
ほっぺの色は赤いろで、
見ている夢の太陽はこれまた赤くて
あたたかい。
たくさん歩こ。
どこまでも。
夢の世界はどこまでも、
どこまで行っても果てしない。
第3楽章:メヌエッド「アレグロ・モルト」(踊るように「中くらいの速さで」)
全編を通しても、この第3楽章はいちばん力強いですよね。
全体がただ牧歌的というだけではインパクトがないですものね。
冒頭に紹介した諸井先生の解説にあったように、この音楽構成の良さがこの曲を名曲ならしめている要因のひとつなのかもしれませんね。
第4楽章:アレグロ・ヴィヴァーチ(快活に速く)
この楽章も第3楽章と同じで力強いですが、もう少し、牧歌的で太陽の恵みをいただいているような雰囲気があっていいですね。
最終楽章にふさわしいウキウキする一曲ですね。
【名盤解説】シューベルト:交響曲第5番
ブルーノ・ワルター:指揮 コロンビア交響楽団
ベートーヴェンの田園交響曲でも紹介したブルーノ・ワルターです。
「このような牧歌的な曲になると、どうしても挙げざるをえないよね。」
っていうくらいの素晴らしさなのですよね。
かわいらしく草原に生えるクローバーを表現するには、このような包み込むような演奏が最適です。
ニコラウス・アーノンクール:指揮 ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
もともとが古楽器での演奏を多く行っていたアーノンクールですが、モダンオーケストラを指揮することもありました。
このアルバムはそんなカタチをとったもののひとつ。
演奏自体は少し早めのテンポで、スタッカート(音を続けずに一音一音を分離して明確に演奏)気味に行うところは古楽器的な演奏と言えそうですよね。
でも、こんな演奏がシューベルトの在世当時の響きに近いのでしょうね。
現代にあってはむしろ「新鮮な響き」です。
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【解説と名盤、まとめ】シューベルト:交響曲第5番
いかがでしたか。 シューベルトの「交響曲第5番」は、晴れた日にピクニックに行って見つけた、たくさんな草花と若葉の香り。
そんな楽しみを音楽を通して感じさせてくれますよね。
「さあ、目をとじて、耳をすましてみてください。 きっと心のなかには色とりどりの木々の風景や、小鳥のさえずり、そして、風が歌う「草原への賛歌」が聴こえてきますよ〜♬」
そんなわけで…
『ひとつの曲で、
たくさんな、楽しみが満喫できる。
それが、クラシック音楽の、醍醐味ですよね。』
今回は以上になります。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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