音楽詩人…
さまよう…
絶たれた交響曲…♫
- 暗い
- さみしい
- 恐ろしい
なのに超絶美しい…♫
さて、今回は、どことなくデモーニッシュな、シューベルト:交響曲《未完成》の解説とおすすめ名盤を紹介です。
【解説】シューベルト:交響曲《未完成》
作曲途中で絶たれる…。
そんなことが、シューベルトには頻繁に起こりました。
- 楽想
- インスピレーション
- 音楽への情熱
そんなさまざまな思いやひらめき、感情が次々に湧いてくるため
「忘れてしまう前に書き留めねば…!!」
そんな強迫観念に襲われ続けていたのでしょうか…。
そして次から次と「ある曲を作る際中に、別の曲を作り始めてしまう」。
しかし、やっぱりシューベルトの音楽は繊細で美しい…。
こんな解説があります。
シューベルトは「未完成」の仇名で知られる口短調交響曲を第2楽章まで完成して放置したまま6年間過し、後半2楽章は書かないで逝ってしまった。(中略)ピアノ・ソナタでも、彼には同様な例が半ダースもある。伝記著者プリュイールは「この世の美しいものはすべて最後の言葉を言わずに死んでしまう」という名言を引用してこの傑作を語っているが、あまりにも美しく、独創的な二つの楽章アレグロ・モデラートとアンダンテ・コン・モートが私達を満足させ、魅惑させる度合いは、多くの完成された交響曲をしのいでいる。
出典:諸井誠 著 「交響曲名曲名盤100」P66より引用
《未完成》であった理由については様々な説があり、以下の通り。
- 1、2楽章の完成度、質の高さからその後の楽章の質を維持することが出来なかった。
- 経済的困窮のため高収入が見込まれるピアノ曲などの作曲を優先した。
- 「ロ短調」の交響曲の完成にむけて当時の金管楽器では作曲が難しかった。
- 書きかけの第3楽章が部分的にベートーヴェン《交響曲第2番》と似ていたから。
- シューベルトのクセである同時並行的に曲を書きまくっていたため後回しにしたまま世を去ってしまった。
- 不治の病(梅毒)にかかっていたため《未完成》交響曲の曲調に耐えられなかった。
- 第1、第2楽章ともに、3分の1拍子であり、その次の3楽章も3分の1拍子になることにバランスの悪さを感じた。
などですね。
ただ《未完成》の理由はどうあれ、解説にありますように
私達を満足させ、魅惑させる度合いは、多くの完成された交響曲をしのいでいる。
わけです。
また、指揮者ワインガルトナーは、
あたかも、地下の世界から湧き上がるような…
デモーニッシュな一面を語り…。
そして、あの作曲家ブラームスはこう語っています。
2つの楽章でも十分で、シューベルトは天才の直感として、途中で筆をおいたのであろう
と…。
【各楽章を解説】シューベルト:交響曲《未完成》
それでは、各楽章について解説します。
第1楽章
地下の世界から湧き上がるは、弦楽器の奏でる
- 静かに聴こえ来る地響き…
- 闇…
- それとも…光…
しかし「光」は、ほとんど差さず
暗い…なのに美しいオーボエとクラリネットが交響曲《未完成》を象徴するような歌を歌い始めます。
そして、音楽は、重さや暗さの中にかすかな光、優しさや美しさを秘めて展開していきます。
第2楽章
第1楽章にみられた指揮者ワインガルトナーが語った
あたかも、地下の世界から湧き上がるような…
曲調は影を潜め、調和的で天国的な優しい光を感じさせてくれる楽章で、メロディメーカーとしてのシューベルトの面目躍如というところ。
第1楽章の暗く重苦しく覆われていた雲のすき間から「この世のものとは思えないようなひとすじの光」がサアーッと降りてくるような感覚です。
しかし、再びその光は隠れ、暗い雲に閉ざされます。
歌は木管楽器が歌いながら、その歌を弦楽器がサポートしていきます。
そして悲劇性は高まり、高まりしながら盛り上がり…そして、再び調和の光は差し込んできます。
そんなドラマを音楽は何度か展開し、
- 静かに
- おごそかに
- そして、瞑想的に
そして、余韻を残して終わっていくのです。
【3枚の名盤の感想と解説】シューベルト:交響曲《未完成》
ブルーノ・ワルター:指揮 ニューヨーク・フィルハーモニー管弦楽団
アルパカのおすすめ度★★★★★
【名盤の解説】
包み込むようなあたたかさを持ち、またシューベルトの音楽の持つ美しいメロディが楽しめる名盤です。
とくに第2楽章のテンポをゆっくりめにとりつつ進む音楽の優しさは、指揮者ブルーノ・ワルター独特のもの。
こんなロマンティックなシューベルト:交響曲《未完成》は、なかなか他では聴けない「境地」のようなものすら感じさせてくれますね。
セルジウ・チェリビダッケ:指揮 ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団
アルパカのおすすめ度★★★★★
【名盤の解説】
交響曲《未完成》は、シューベルトによる鎮魂の歌だったのかな?
そんな感想を持ってしまう名盤です。
- 恐れ
- 不安
- おののき
そんな鉛(なまり)の色した第1楽章を終えた後の、天国のような調和の風景が広がる第2楽章の感覚が素晴らしい名盤。
「地下の世界から湧き上がり…」
「そのまま天へと昇りゆく…」
全曲を聴いていきながら、そんな映像が心のうちに展開されていく名盤です。
カルロス・クライバー:指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
アルパカのおすすめ度★★★★★
【名盤の解説】
- 洗練 !
- シャープ!!
- そして、深み…
1年をめぐる季節のように、その繊細な色彩の違いを楽しめる名盤です。
この、指揮者クライバーが持つ「センスのいい変幻自在性」をウィーン・フィルハーモニー管弦楽団が、
- 優しく
- あたたかく
- 美しく
表現していきます。
なんともいい意味で異次元的なシューベルト:交響曲《未完成》のファンタジックな要素を教えてくれるフレッシュな柑橘系の名盤でも、またありますね。
Apple Musicで “紹介した名盤” が配信中
【まとめ】シューベルト:交響曲《未完成》
さて、シューベルト:交響曲《未完成》解説とおすすめ名盤はいかがでしたか?
- 暗い
- さみしい
- 恐ろしい
なのに超絶美しい…♫
さまざまな表情を豊かに変えながら展開する名交響曲《未完成》。
第2楽章までしかない「《未完成》性」を秘めていながら、古今東西の交響曲の中でも最も美しい「完成」された曲のひとつ。
そんな色んな魅力の詰まった《未完成》を聴きながら、日ごろ「自分の中に感じ取っている《未完成》さを受け入れつつ昇華」し、幸福を完成させていきませんか?
そんなわけで…
『ひとつの曲で、
たくさんな、楽しみが満喫できる。
それが、クラシック音楽の、醍醐味ですよね。』
今回は、以上になります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
関連記事↓
シューベルトの交響曲