淡い魅力と
シンプルさ
深まる、透明感
モーツァルトの晩年の気持ちがふとよぎる。
- 明るさ
- 寂しさ
- 優美な魅力
この上ない優しさと澄み切った心の表れ…。
今回は、モーツァルト:ピアノソナタ第16(17)番の解説とおすすめ名盤を紹介です。
注:モーツァルト:ピアノソナタ「第16番」という表記は旧モーツァルト全集での番号になります。本記事では新モーツァルト全集としての「第17番」との表記は(17)と付記しています。
- 【解説】モーツァルト:ピアノソナタ第16(17)番
- 【各楽章を解説】モーツァルト:ピアノソナタ第16(17)番
- 【名盤3選の感想と解説】モーツァルト:ピアノソナタ第16(17)番
- 【まとめ】モーツァルト:ピアノソナタ第16(17)番
【解説】モーツァルト:ピアノソナタ第16(17)番
1789年2月に作曲されたモーツァルト晩年のピアノ・ソナタの一つで、すでにこれまでのソナタにみられた華やかなピアノ技巧も、また華麗な曲想や緊張感をもった音楽の深刻さも消えており、清らかで素朴な感情が表出している点に特色がある。(中略)柔らか味をもち、さわやかな抒情性を感じさせる。(中略)短調に移行する部分が第1楽章ではとくに多く、それが淡いロマン的な気分を引き出しているのだと思う。
1789年のころのモーツァルトは収入の道がほぼ絶たれ貧困状況でした。作曲依頼は無くなり、音楽を教える生徒も減るばかり。
その生活に追い打ちをかけるように次女が生まれてすぐに他界。
当時は子どもが生まれても成長することなく亡くなることは多かったわけです。
とは言え悲しみは深かったことに変わりなかったことでしょう。
そんな貧困と不幸が重なる中で作曲されたピアノソナタ第16(17)番ですが、曲自体は美しく「澄み切った魅力」に満たされています。
作曲依頼があったわけではなくモーツァルト自身が「ただただ純粋に音楽をする気持ち」を五線紙にしたためた名曲と言えそうです。
【各楽章を解説】モーツァルト:ピアノソナタ第16(17)番
第1楽章 アレグロ(速く)
「明るさの中の寂しさ…」
それが魅力の第1楽章です。
深まる貧困と不安、しかし高まる純粋な音楽性。この頃のモーツァルトの音楽の魅力は明るさや寂しさを超えたところにある芸術の極みが、ふと顔をのぞかせるところです。
さり気なく、またわざとらしさが微塵も感じられない美しさに満たされています。
第2楽章 アダージョ(ゆっくりと)
「寂しさの中の明るさ…」
そう第1楽章とは対をなすような構造でありながらもアダージョの調和的基調を保って流れる音楽が美しい楽章です。
透明度の高い寂しさが一種の明るさにまで昇華された絶妙な緩徐楽章です
第3楽章 アレグレット(やや速く)
- 第1楽章の明るさの中の寂しさ…
- 第2楽章の寂しさの中の明るさ…
そんな流れを受け継いで展開する第3楽章は「ただただ明るくチャーミング」なモーツァルトを聴かせてくれます。
【名盤3選の感想と解説】モーツァルト:ピアノソナタ第16(17)番
イングリット・ヘブラー:ピアノ
アルパカのおすすめ度★★★★★
【名盤の解説】
ピアノソナタ第16(17)番が持つ明るさと寂しさ、寂しさと明るさの細やかなニュアンスをここまでたおやかに表現しきった演奏にはなかなか出会えないものです。
- 飾らず
- てらわず
- 微笑んで…
そんなモーツァルトらしいモーツァルトが聴けます。
少し地味な雰囲気が物足りないかもしれません。ただ、本来のモーツァルトの優しさや柔らかさのようなものが深く感じられて嬉しい名盤です。
マリア・ジョアン・ピリス:ピアノ
アルパカのおすすめ度★★★★☆
【名盤の解説】
ヘブラーの名盤に比べますとテンポが速く、シャープな魅力に満たされています。
洗練されたモーツァルトという印象で、ピアノのひとつひとつの音が弾けて美しいです。
ヘブラーの名盤から聴きとれる細やかなニュアンスの表現からは少し離れますが、心地よいスピード感があって聴きやすいです。
現代性が感じられながらも、決して冷たい印象に陥ることのないバランスのいいモーツァルトと言えそうです。
Apple Musicで “紹介した名盤” が配信中
【まとめ】モーツァルト:ピアノソナタ第16(17)番
さて、モーツァルト:ピアノソナタ第16(17)番の解説とおすすめ名盤はいかがでしたか?
モーツァルトの晩年の気持ちがふとよぎる。
- 明るさ
- 寂しさ
- 優美な魅力
この上ない優しさと澄み切った心の表れ…。
注目されることは少ないピアノソナタ第16(17)番ですが、モーツァルトは名曲ばかり…。
お時間が許せば、ぜひ聴いてみてくださいね。
そんなわけで…
『ひとつの曲で、
たくさんな、楽しみが満喫できる。
それが、クラシック音楽の、醍醐味ですよね。』
今回は、以上になります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。