秋の深まりと、いずれ冬を迎える時期には、ぜひ聴きたい1曲です。
なぜなら、この「ピアノ協奏曲」を作曲したグリーグは、北欧ノルウェーの作曲家ですし冒頭から「憂いを帯びた旋律が印象的だからです。」
【解説】グリーグ:ピアノ協奏曲
グリーグとたいへん仲の良かったチャイコフスキーは「グリーグの音楽は、ノルウェーのあの美しい風景をそのまま反映しているようだ」と言ったというが、そうしたグリーグの音楽のもつノルウェー的情緒がもっともよくあらわれているのが、彼のこのピアノ協奏曲である。
グリーグは。1867年(24歳)、いとこのソプラノ歌手ニーナ・ハーゲルップと結婚した。ニーナはたいへん魅力的な女性で、シューマンの妻クララのように、終生夫のよき協力者となったのであった。
この曲は、ふたりの新婚生活のなかから生み出されたもので、青春の夢と希望、新婚の喜びにあふれた、甘く清澄(せいちょう)な旋律がなんともいえない魅力となっている。また、グリーグは”北欧のショパン”と呼ばれていただけに、特に第2楽章などは、ショパンの夜想曲を思わせるかのような美しさにみちている。出典:志鳥栄八郎 著 「不滅の名曲はこのCDで」p219より引用
グリーグはこの曲を完成させた後、何度も何度も楽譜を書き直したそうです。
そして、グリーグの亡くなる直前まで、楽譜の書き直しが行われたそうです。
現在、演奏されるのはグリーグの再晩年のものだそうです。
つまり、季節で言えば、それこそ「秋」らしくしっかり熟したおいしい音楽に仕上がっていると言えるのではないでしょうかね(笑)
志鳥栄八郎先生が書かれた解説にあるように、「ノルウェー的情緒がもっともよくあらわれているのが、彼のこのピアノ協奏曲である。」と言えそうですね。
また、ノルウェーのおはなしで、しばしば語られる「森の精霊トロル」がいますが、グリーグは生前自分のことを「小さな森のトロル」と称していたそうです。
たしかにグリーグ:ピアノ協奏曲をはじめ、彼の音楽たちは「森の精霊トロルの歌」に聴こえますね。
【各楽章を解説】グリーグ:ピアノ協奏曲
第1楽章 アレグロ・モルト・モデラート(快速に、しかしほどほどに)
はじまりは、あの有名なベートーヴェンの「運命交響曲」のような悲劇を思わせる歌い出しです。
運命交響曲ほどの深刻さはないけれど、少し理性を含んだドラマの展開が聴き取れますね。
第2楽章 アダージョ(ゆっくりと)
グリーグが自分のことを「森の精霊トロル」と言っていたことの象徴とも言える、調和的で美しい一曲です。(冒頭の動画の曲)
聴こえてくる音楽はまさしくお昼寝する「トロル」の息づかい。
「何に対する恐れも不安もなくただ、ノルウェーの奥深い森の静けさに抱かれて眠るトロルたち」
そんなイメージの1曲ですよね。
第3楽章 アレグロ・モデラート・モルト・エ・マルカート(快速に、しかしほどほどに、そして、はっきりと)
舞曲風のテンポの早い「カッコイイ」ピアノ協奏曲ですね。
北欧ノルウェーの、果てしなく続く大空をゆく、オオワシのような勇ましいピアノ協奏曲です。
【名盤を解説】グリーグ:ピアノ協奏曲
秋深まるときに聴きたい癒やしのピアノ協奏曲2枚を紹介します。
クリスティアン・ツィマーマン(ピアノ)
ヘルベルト・カラヤン指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
スッキリと、シャープにまとめあげられていて、好感が持てますね。
もちろん、情感も深く、細やかな演奏をされているように思いますし、超絶技巧のカラヤンとベルリン・フィルハーモニー管弦楽団との息もピッタリで心に食い入って来る感じですね。
アルトゥール・ルービンシュタイン(ピアノ)
アルフレッド・ウォーレンシュタイン指揮 RCAビクター交響楽団
ルービンシュタイン のピアノはグリーグ特有の北欧の透明感のあるおおらかさや、また力強さも天下一品という感じで舌を巻きますよね。
そして、力強さがあるのに、押し付けがましいところがありません。
やはりピアノのルービンシュタインのかぐわしい香りと品のよさがある演奏ということですかね。グリーグ「ピアノ協奏曲」の名盤ですよね。
Apple Musicで “紹介した名盤” が配信中
【解説と名盤、まとめ】グリーグ:ピアノ協奏曲
さて、グリーグ:ピアノ協奏曲、名盤の紹介と解説はいかがでしたか?
秋の終わりから冬の始まりの町の中、寒さや、言いようの知れない寂しさを感じたら、ほんの少しの間だけ、空を見上げてみませんか?
日本にも、きっと存在している目に見えないトロルたちが、空を舞うこがねの葉っぱに乗って遊んでいるかもしれませんよ〜。
『ひとつの曲で、
たくさんな、楽しみが満喫できる。
それが、クラシック音楽の、醍醐味ですよね。』