有名な
《雨だれ》、
《胃腸(イ長)調》…?
どれも珠玉の前奏曲集…♫
- ロマン性
- 美しい楽想
- 豊かな感情の動き
「ピアノの詩人」と呼ばれるショパンのピアノ曲のなかでも、とくに美しいメロディに満ちている、ショパン《24の前奏曲》の解説とおすすめ名盤を紹介です。
【解説】ショパン《24の前奏曲》
ショパン作曲の《雨だれ》を含む《24の前奏曲》、こんな解説があります。
ショパンの代表作を一曲あげよといわれたら、君ならどうする。
私はこの問に対して、実に何年もの間考えあぐねていた。ショパンは複雑な多面体だからである。(中略)この《前奏曲集》は、バッハの平均律と並んで、またベートーヴェンの32のソナタと並んで、鍵盤音楽の一つの偉大な奇跡なのである。小さな曲の中に、気をつけて見てごらん。(中略)大きなソナタの断片すらもある。湖面に映った月のように、一つの天体のミニエイチャー。私がショパンの天才を意識するのは、24の前奏曲の楽譜を通読する時なのだ。出典:諸井誠 著 「ピアノ名曲名盤100」P96より引用
平均律における24の全ての調性が使われた、バッハ作曲《平均律クラヴィーア曲集》。
バッハを尊敬していたショパンは、このバッハ《平均律クラヴィーア曲集》にならった曲《24の前奏曲》を作曲しようと試みます。
そして、1893年、滞在していたマヨルカ島で完成に至ります。
解説の中で、諸井誠先生も高く評価されていましたが 、
「大きなソナタの断片 」すら感じさせ、そしていかにもショパンらしい
- ロマン性
- 美しい楽想
- 豊かな感情の動き
などが感じられてドラマティックな魅力すら感じさせてくれる名曲、それがショパン《24の前奏曲》なのですね。
ショパン《24の前奏曲》が完成に至った「マヨルカ島でのエピソード」はこちらの記事がオススメです。
【各曲を解説】ショパン《24の前奏曲》
それでは、各曲について解説したいと思います。
ショパン《24の前奏曲》は全24曲で成り立っています。
第1番 ハ長調
ショパン《24の前奏曲》における「前奏曲」のような
- 柔らかく
- 静かに
- そして、弾むような
この後の、ショパン《24の前奏曲》のはじまりを告げるに、ふさわしいシンプルで親しみやすい1曲です。
第2番 イ短調
重い雰囲気ですすみます。
荘厳さをそなえた静けさを歌った曲のようにも取れます。
第3番 ト長調
快く、スピーディに駆けていくような伴奏を追いかけていくように展開するメロディの軽やかさが印象的です。
第4番 ホ短調
ショパン《24の前奏曲》の中でも、特にメランコリックで美しいメロディを持っていてます。
左手が連打する伴奏に右手がメロディをからめていきます。
ショパンの音楽の持つ
- 麗(うるわ)しさ
- さみしさ
- 美しさ
が、絶妙にミックスされて印象的です。
ショパン自身の葬儀の際にオルガンにより演奏されたという記録も…。
第5番 ニ長調
4番と6番の悲しい基調の曲の中間にあって速いテンポで明るい1曲です。
第6番 ロ短調
第4番とは逆に、
左手がメロディを奏で、右手が伴奏で花を添え音楽の色調を変えてきます。
第4番とともにショパンの葬儀の際に、やはりオルガンで演奏されました。
第7番 イ長調
可愛らしく歌うピアノが特徴の1曲。
太田胃散のテーマでも有名です。
「胃腸(いちょう)薬」だから「イ長(いちょう)調のテーマ曲にした」というウワサもありますね。
ともあれ短くも優しいメロディの名曲です。
第8番 嬰ヘ短調
有名な「第15番」の《雨だれ》が「静かに降りしきる雨」だとしたらこの「第8番」は「地面を強く叩きつける強い雨 」…。
情感を含んだ悲しさとも言えそうなイメージの1曲でもあります。
第9番 ホ長調
慌てずゆっくりとした雰囲気で、シンプルでありながらも堂々とした1曲です。
第10番 嬰ハ短調
キラキラ、キラキラと光を集め反射して放つ、透明なガラスを想像するようなきらびやかな曲です。
第11番 ロ長調
ウキウキと弾むように楽しい曲です。
第12番 嬰ト短調
どこか舞曲のイメージのある1曲で
- 情熱的であり
- 緊張感もある
そんな1曲です。
第13番 嬰ヘ長調
ショパン《24の前奏曲》の後半の始まりを告げているようで、そういった意味では第1番の
- 柔らかく
- 静かに
- そして、弾むような
印象とともにどこか優美さをもたたえた曲です。
第14番 変ホ短調
駆け抜けていくような足音と風を思わせる1曲ですが、このあとに続く有名な《雨だれ》が より際立って優しく響いてくる効果をも持っているように感じます。
第15番 変ニ長調《雨だれ》
冒頭でも解説した《雨だれ》です。
ショパン《24の前奏曲》の中では、この《雨だれ》が有名ですが、この1曲以外もどれも素晴らしい曲ということは言うまでもありません。
第16番 変ロ短調
非常に激しい展開の「男性的」ショパンが目覚めた瞬間を思わせる1曲でもあります。
勇壮でテンポも速く力強く雄々しく立つ戦士のような印象です。
第17番 変イ長調
第16番とは打って変わっての
- おだやかで
- 優しく
- 暖かい
そんなテンポとメロディが次々と現れて心地いい。
ショパンらしい歌ごころがいっぱいの曲です。
第18番 ヘ短調
なんとも悲壮的で運命的な響きを持っています。
不安感や恐怖心にさいなまれていたショパンの心情を思います。
第19番 変ホ長調
よどみなく流れゆく小川のようなイメージで優美な魅力がいっぱいの曲です。
第20番 ハ短調
- 悲しさ
- 憂うつさ
- 重くのしかかる心情…
を思います。
ふだんのショパンの「やるせない思い」というものを感じます。
第21番 変ロ長調
暖かく、情緒豊かな曲であり、明るくもホッとさせてくれるホッコリ感があります。
第22番 ト短調
- 痛み
- 苦しさ
- 心のうちからの叫び
そんな激情が迫ってきます。
第23番 ヘ長調
《雨だれ》ではありませんが水の一滴一滴がはじけて輝くさまが想像できます。
キラキラと明るい光を放つ名曲です。
第24番 ニ短調
- 熱情…
- 切迫感…
- 焦り …
さまざまな感情が心の内を、
駆けめぐり、駆けめぐり、駆けめぐりしてゆきます。
そして最後は一気に力尽き「終わりを告げる鐘」を思わせつような3回の強打!
ショパン《24の前奏曲》をドラマティックに終えていきます。
【3枚の名盤の感想と解説】ショパン《24の前奏曲》
マルタ・アルゲリッチ:ピアノ
アルパカのおすすめ度★★★★☆
【名盤の解説】
- 情熱的
- 即興的な魅力
- ハツラツとした個性
ショパン《24の前奏曲》の可能性や秘めた魅力が発見できる名盤です。
音の強弱、ニュアンスを微妙に、また自習自在に変化させて飽きさせることがありません。
よく言えばダイナミックと言えますし、逆にまぶしすぎる感覚もありますが、名盤と呼ばれるにふさわしい1枚です。
マウリツィオ・ポリーニ:ピアノ
アルパカのおすすめ度★★★★☆
【名盤の解説】
腰を落ち着けてジックリ聴きたい名盤です。
ダイナミックさに欠けるかもしれませんが 本来のショパン《24の前奏曲》の持つバランスの良さが再確認できます。
押すところは押し、引くところは引きながらも、全体を考えた構成力を感じます。
ショパン《前奏曲》をゆったりとした気持ちで聴きたい時に流したい名盤です。
イーヴォ・ポゴレリチ:ピアノ
アルパカのおすすめ度★★★★☆
【名盤の解説】
若い感性が弾けていてフレッシュな名盤です。
特に印象的なのが《雨だれ》のゆったりとした表現。
普通は5分程度の曲ですが、ポゴレリチは7分23秒と約1.5倍の時間をかけて演奏しています。
《雨だれ》をスローモーション的に、ゆったりと静かに堪能したい時に流す名盤です。
全体としても一音一音のキラキラした感性のほとばしりがあって心地いいです。
でも、だからといってその才気をアピールするような感じはありません。
とても聴きやすく、アルゲリッチの情熱とポリーニの知性の中間を行きながらもポゴレリチ自身の個性がキラリと光る名盤でもあります。
Apple Musicで “紹介した名盤” が配信中
【まとめ】ショパン《24の前奏曲》
さて、ショパン《24の前奏曲》解説とおすすめ名盤はいかがでしたか?
ショパン《24の前奏曲》は、
- ロマン性
- 美しい楽想
- 豊かな感情の動き
が、感じられます。
そして、
第15番《雨だれ》をはじめ、
- 第4番 ホ短調
- 第7番 イ長(胃腸?)調
- 第13番 嬰ヘ長調
- 第24番 ニ短調
などはオススメですが、全24曲のどれも美しく聴きやすい曲たちですね。
そんなわけで…
『ひとつの曲で、
たくさんな、楽しみが満喫できる。
それが、クラシック音楽の、醍醐味ですよね。』
今回は、以上になります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。