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ショスタコーヴィチ:交響曲第5番《革命》【暗号】【名盤3選】解説|感想|そのミステリアスな謎!

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革命の交響曲!

その裏に隠れし

「暗号」を解け!!

ショスタコーヴィチ::交響曲第5番《革命》第4楽章

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反逆者には「死」を…。

それが、ソビエト共産党の粛清、処刑の現実…。

 

ショスタコーヴィチのオペラやバレエ作品に対して、

  • 荒唐無稽(こうとうむけい)
  • バレエの偽善(ぎぜん)…

などと、ソビエト共産党の機関紙「プラウダ」に批判されたショスタコーヴィッチ。

これは、「粛清、処刑」の宣告にほぼ近いと感じたショスタコーヴィチは、この「死の危機」を乗り越えるべく、ひとつの交響曲を作曲します。

 

さて、今回は、多くの「謎」「ミステリアスな妖(あや)しさ」をも放つショスタコーヴィチ:交響曲第5番《革命》解説とおすすめ名盤を紹介です。

【解説】ショスタコーヴィチ:交響曲第5番《革命》

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曲の解説

ショスタコーヴィチ:交響曲第5番《革命》のこんな解説があります。  

ソヴィエトでは、1930年代にスターリンが政権をとって以来、すべての芸術は、社会主義リアリズムの線にそっていなければならないとされ、特に、スターリンの恐怖政治時代には、多くの芸術家が、当局の方針に従わないとして社会的に葬りさられたのであった。(中略)

この曲は、よくネオ・ベートーヴェン・スタイルと呼ばれるくらい、ベートーヴェンの「交響曲第5番」とあい通じるところがある。それは、曲全体が、苦悩から克服、歓喜へといった内容をもっていることや、第一楽章で、印象的な主題を巧妙に展開させているところなどにうかがえる。

出典:志鳥栄八郎 著 「新板 不滅の名曲はこのCDで」P82より引用

 

解説にありますように、スターリンの恐怖政治の時代「すべての芸術は、社会主義リアリズムの線にそっていなければならない」とされていました。

そして、ショスタコーヴィチの友人や親戚、支援者たちの中で逮捕、処刑される人もおり、ショスタコーヴィチ自身も「次は我が身…」という実感もあったことでしょう。

冒頭でも触れましたが、事実、ショスタコーヴィチの作品に対する露骨な批判をソビエト共産党から受けています。

つまり、

  • オペラ《ムツェンスク郡のマクベス夫人》を「荒唐無稽である」
  • バレエ音楽《明るい小川》を「バレエの偽善である」

という批判です。

 

そんな中、ショスタコーヴィチは、なんとか「体制を肯定し、スターリンを神格化するような内容の曲を書かなければ…」と考えます。

そして作曲されたうちの1曲が、交響曲第5番だったわけですが、この試みには見事成功し体制からの包囲網は解かれます。

つまり、初演時の演奏後の大喝采と、さらに再演においても高評価であったことから得たソビエト共産党からのお墨付きと信頼を得られたからです。

 

しかし…、

しかしです。

 

ショスタコーヴィチ:交響曲第5番《革命》の音楽の中には、3つの隠された暗号がありました。

 

なんとそのうちの一つが、

  • 共産党体制批判

でした。

 

さらに、あとの2つは、

  • ベートヴェン的な「苦悩からの克服と歓喜」のテーマ
  • 愛人へ捧げた「愛の歌」

なのでした。

 

暗号のナゾ、解説

では、ショスタコーヴィチ:交響曲第5番《革命》に隠された3つの暗号について解説していきます。

共産党体制批判

「ショスタコーヴィチの証言」という言わば暴露本ともいえるものがあります。

ショスタコーヴィチの没後、数年がたった1979年に出版されて物議をかもした一書ですが、この中の交響曲第5番《革命》についての証言の中に

 

「あれは(中略)強制された歓喜なのだ」

 

と、あります。

 

つまり、ソビエト連邦からのお墨付きである作曲家でありながら、実は音楽によって暗に「物言わぬ反逆」を行っていたとも言えます。

 

ただ、この書物には内容の真偽は問われてはいるようです。

各章の原稿の始めには、ショスタコーヴィチ自身の承認のサインはあるとのことですが…。

さて、この体制への反逆の具体的な内容ですが、第4楽章に使われた旋律にあります。

ショスタコーヴィチは交響曲第5番を作曲する直前、

《プーシキンの詩による四つの歌曲》を作曲していて、この旋律を交響曲第5番《革命》の第4楽章に使用しています。

そして、その《プーシキンの詩による四つの歌曲》の第1曲目が「復活」についての内容となっているわけです。

そう、つまりこの部分が暗号的に解釈できるのです。

 

「虐げられた芸術の真価が時と共に蘇(よみがえ)る」

 

という歌の内容なわけですが、これはスターリンの体制のもとで「恐怖と束縛の圧政下で苦しむ芸術家たちの本心、または叫び」と読み取れるわけですね。

 

ベートヴェン的な「苦悩からの克服と歓喜」のテーマ

ショスタコーヴィチ自身が「強制された歓喜」と表現してはいますが、とは言え解説にありましたように、

 

「ベートーヴェンの「交響曲第5番」とあい通じるところがある。それは、曲全体が、苦悩から克服、歓喜へといった内容をもっていることや、第一楽章で、印象的な主題を巧妙に展開させているところなどにうかがえる」

 

…わけです。

 

また、体制側の受け取り方によっては「体制に対する反逆である」と解釈される可能性も無くはないわけですから、ある意味、命がけの作曲だったとも言えそうです。

 

 

愛人へ捧げた「愛の歌」

当時、ショスタコーヴィチには「リャーリャ」という名の愛人がいました。

ショスタコーヴィチ:交響曲第5番のところどころには、ビゼーの《カルメン》の「ハバネラ」や「ジプシーの歌」などからの引用が見られます。

そしてなんと、ショスタコーヴィチがその愛人リャーリャと別れた後、リャーリャが結婚した相手の名字が「カルメン」でした。

そう、つまり「カルメン」とは、元愛人のリャーリャ自身のことであると取れるわけです。

 

さらに、第4楽章のラストでは「ラ」の音が連続して表れるわけですが「ラ」とはロシア語の発音では「リャ」です。

そう、なんと、ショスタコーヴィチは交響曲第5番の第4楽章において、別れた愛人「リャーリャ」の名を叫び続けていると解釈することもできるわけなのです。

 

その回数なんと252回というから「驚きの叫(さけ)び方」ですね(笑)

 

以上、ショスタコーヴィチ:交響曲第5番《革命》に隠された「暗号」について解説してきました。

 

こんな背景を知りつつ聴くとまた楽しみが深まるものと思います。

 

【各楽章を解説】ショスタコーヴィチ:交響曲第5番《革命》

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それでは、各楽章について解説したいと思います。

ショスタコーヴィチ:交響曲第5番《革命》は第1楽章から第4楽章までの4曲で成り立っています。

 

第1楽章 モデラート:アレグロ・ノン・トロッポ(中くらいの速さで、速すぎないように)

深く沈みゆくがごとくの、重厚な弦楽器の唸(うな)り声とも聴こえる不気味な始まりはまさしくベートヴェン的な「苦悩」に通じるものを感じます。

第2主題に表れる「カルメン」からの旋律の引用は「愛人との別れ」から襲った苦悩なのでしょうか?

その苦悩は、コールタールに覆われた地を這うがごとくの「もどかしさと絶望感」すら感じさせます。

そうこうしていると曲のテンポは速まっていきます。

そして、速まり、速まりしていくうちに、そのテンションをあげて行った先に表れるのは、

軍隊の勇ましい行進を思わせるような、

 

ダン、ダカダカダカ…♫

ダン、ダカダカダカ…♫

ダン、ダカダカダカ…♫

 

そんなリズムの中、その感情のバイブレーションをバク上げしていきます!

そして、その震え、バイブレーションは頂点に達したかに思えた後…

 

  • 小高い緑の丘
  • さえずる小鳥たち
  • せせらぐ小川…

 

そんな、静かで調和的な風景を思わせる瞬間が訪れます。

しかし、それは間もなく、再び「不安や苦悩」を思わせるモチーフへと戻っていきます。

そんな色彩をさまざまに変化させつつ展開するなんともドラマティックな楽章です。 

第2楽章 アレグレット(やや速く)

チェロとコントラバスの重低音から始まり「ん?また苦悩…?」と思いきや、非常に聴きやすくノリのいい舞曲風の曲調へと一転していきます。

どこかマーチを思わせるようなノリにも通じていて、楽しめる楽章に仕上がっています。

 

第3楽章 ラルゴ(表情ゆたかにゆったりと)

ロシア革命のさなかスターリンによる大粛清により殺戮(さつりく)され、命を落としていった尊(とうと)き魂たちへ向けて奏でられるレクイエムと感じます

  • 惨劇
  • 悲しみ
  • 慟哭(どうこく)の声…

そのさまを、

  • 静けさ
  • 諦観(ていかん)
  • 耽美(たんび)さ

をもって、切々と謳い上げたショスタコーヴィチ版のレクイエムと感じませんでしょうか?

もちろん歌詞はついていないのですが…。

 

第4楽章 アレグロ・ノン・トロッポ(速く、しかし速すぎないように

第3楽章の「沈黙に近く、また、調和的でインスピレーショナブルな楽章」が幕をおろした後は…

 

ダン、ダカダカダカ…♫

ダン、ダカダカダカ…♫

ダン、ダカダカダカ…♫

 

まさしく「苦悩からの歓喜への開放!!

 

勇ましいティンパニの咆哮!

 

弾む弦楽器!!

 

歌う木管楽器!

 

叫ぶ金管楽器!!!

 

ショスタコーヴィチ:交響曲第5番《革命》の最後は、「体制による束縛と殺戮」からの「自由への開放」をその本心を隠して謳い上げたショスタコーヴィチの叫びそのもの!! 

 

そんなドラマティックな第4楽章をフィナーレとして幕を下ろします。

 

【名盤3選】【感想と解説】ショスタコーヴィチ:交響曲第5番《革命》

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エフゲニー・ムラヴィンスキー:指揮 レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団 

 

 

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アルパカのおすすめ度★★★★★

【名盤の解説】

ショスタコーヴィチ:交響曲第5番《革命》の初演を託されたのがムラヴィンスキーでした。 

ロシア的な憂(うれ)いや冷たい空気のようなものが音の細やかなニュアンスから伝わってくるような名盤です。

ロシアの音楽を正統的な響きで聴きたい時にはムラヴィンスキーの名盤あたりが染みる

かもしれません。 

 

レナード・バーンスタイン:指揮 ニューヨーク・フィルハーモニック 

 

 

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アルパカのおすすめ度★★★★★

【名盤の解説】

「苦悩から歓喜へ」そして、その思いからの雄叫び を聴きたい!

そんなアナタにおすすめな名盤です。

その背景は違えどバーンスタインだって、ユダヤ人としてナチスの迫害から逃れて音楽芸術に命を燃やしたアーティスト、指揮者です。

その共感度と表現に対する切実度は ハンパない。

常に「熱い音楽を創造する」 バーンスタインの熱気ムンムン「ショスタコーヴィチが乗り移った系」の名盤です。

正統なムラヴィンスキー版と聴き比べたい名盤でも、またありますね。 

 

ヴァレリー・ゲルギエフ:指揮 マリインスキー歌劇場管弦楽団 

 

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アルパカのおすすめ度★★★★☆

【名盤の解説】

ムラヴィンスキーやバーンスタインに比べるとクセは少ないかもしれません。

楽器の歌わせ方はダイナミックでありながら部分部分にきめ細やかな情感や表情も含まれていて飽きのこない名盤でもあります。

音質も良いところも聴きやすさにつながっているかもしれません。

パワー十分のパンチの効いた演奏の多い中で「程よくパンチを効かせながらも雅やかな魅力もある」ゲルギエフの名盤もオススメのひとつです。

 

 

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【まとめ】ショスタコーヴィチ:交響曲第5番《革命》

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さて、ショスタコーヴィチ:交響曲第5番《革命》の解説とおすすめ名盤はいかがでしたか?

3つの暗号

  • 共産党体制批判
  • ベートヴェン的な「苦悩からの克服と歓喜」のテーマ
  • 愛人へ捧げる「愛の歌」

が、閉じ込められてなんとも妖(あや)しくも謎の多い名曲ですね。

 

これを機会にベートーヴェンの《運命交響曲》と聴き比べるというのも面白い聴き方のひとつかも…なんて書いていて思いました。 

 

 

 そんなわけで…

 

『ひとつの曲で、

 

たくさんな、楽しみが満喫できる。

 

それが、クラシック音楽の、醍醐味ですよね。』

 

今回は、以上になります。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

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