なに、想う?午後のミューズ(女神)の頬づえとほほえみ
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- 【解説】モーツァルト「ピアノ・ソナタ第4番」
- 【各楽章を解説】モーツァルト「ピアノ・ソナタ第4番」
- 【6枚の名盤を解説】モーツァルト「ピアノ・ソナタ第4番」
- 【解説と名盤、まとめ】モーツァルト「ピアノ・ソナタ第4番」
【解説】モーツァルト「ピアノ・ソナタ第4番」
静かで優しいモーツァルト「ピアノ・ソナタ第4番」のこんな解説があります。
「デュルニッツ・ソナタ集」(モーツァルトのピアノ・ソナタの第1番〜第6番)の第4曲。
これまでの3曲とは構成を変え、ここではゆっくりした楽章が初めに置かれている。
このためこのソナタは、落ち着いた、しっとりした味わいをもつ作品という印象を与える。
第2楽章はメヌエットで、第1メヌエットよりも大きくて手のこんだ第2メヌエットが、トリオ(中間部)の働きをする。
フィナーレ(第3楽章)は、第1楽章とよき対照をなす、生気にあふれた音楽である。イングリッド・ヘブラー モーツァルトピアノ・ソナタ全集(新盤)、ライナーノートより(解説:礒山雅)
モーツァルトは19歳でピアノソナタを書き始めました。(最近の研究では20歳との説もあり)
普通に考えると、「早い」と思われますが、ことモーツァルトに限って言えば、むしろ「遅い方」と言えます。
ただモーツァルトがそれまで、まったくピアノ・ソナタを作曲しなかったわけではないようです。
つまり、「モーツァルトはピアノ・ソナタを基本的に即興演奏で行なっていたため楽譜に書きとめる必要性を感じていなかった」からだという意見があります。
これはモーツァルトの研究で有名な音楽学者アインシュタインの言葉ですね。
「ピアノ・ソナタ第4番」は、当時父親とともにミュンヘンを訪れたモーツァルトがデュルニッツ男爵から依頼を受けて書きました。
そして、この際に書かれたピアノ・ソナタは全部で6曲(第1番〜第6番)あって、そのうちの1曲がこのモーツァルト「ピアノ・ソナタ第4番」なのですね。
そして、この6曲のピアノ・ソナタは現在、デュルニッツ男爵の名にちなんで、デュルニッツソナタと呼ばれています。
【各楽章を解説】モーツァルト「ピアノ・ソナタ第4番」
それでは、各楽章について解説したいと思います。
この曲は第1楽章から第3楽章までの3曲で成り立っています。
第1楽章「アダージョ(ゆるやかに)」
曲調表記に、”ゆるやかに”とありますが、スローな動きで、展開される癒やしの曲と言えるかもしれません。
1曲目がスローテンポであるというのはモーツァルトのピアノ・ソナタとしては珍しいですね。
そして「ミューズの瞑想とも言える、優しいメロディ」の1曲です。
第2楽章「メヌエットⅠ、Ⅱ(踊るように)」
こちらは、第1楽章よりは少しアップテンポです。
森にある、泉の湧き出る水の音に合わせて楽しく踊る。
そんなミューズ(女神)のイメージですね。
第3楽章「アレグロ(速く)」
第1楽章とは打って変わって、元気のいい明るい曲です。
きらめく森を笑い声をあげて駆けていく。
そんなミューズ(女神)たちの姿を想像させます。
【6枚の名盤を解説】モーツァルト「ピアノ・ソナタ第4番」
イングリッド・ヘブラー:ピアノ
よく晴れて、すがすがしい気持ちの昼下がり。
ミューズ(女神)がほおづえをつきながら、瞳をとじてほほ笑んでいる。
そんな優しいモーツァルトの印象がそのままパッケージされたアルバムです。
ヘブラーが鍵盤に指を触れれば、それは、すなわちモーツァルトの歌。
モーツァルトの理想のカタチのひとつがこのアルバムですね。
モーツァルトのピアノ・ソナタは、というより、モーツァルトの音楽全てに言えるかもしれませんが、技巧的には複雑なものを要求しません。
しかし、そのために、むしろ、これほど理想の演奏を生み出すことのできない作曲家は珍しいですよね。
その点、このイングリッド・ヘブラーの演奏はその稀有(けう)なる理想が実現した貴重なアルバムだと思います。
「モーツァルトを表現しようという欲望を持った瞬間からそれはモーツァルトではなくなっていくという矛盾(むじゅん)。」
その究極の難しさの中で、このイングリッド・ヘブラーの純真無垢(じゅんしんむく)であり、表現する欲すら透明に昇華された表現は、モーツァルトの音楽そのもの。
ある意味で、「表現意欲の旺盛さを感じさせず自然であり、また純粋な境地の「演奏」です。
イングリッド・ヘブラーは2度の全集録音があります。
1度目の演奏は「はじける新鮮さ」、2度目の演奏は「純真無垢」。
どちらもこの2つの要素を含みますが、つまりはその要素のバランスですね。
どちらも素晴らしいです♬
ワルター・ギーゼキング:ピアノ
「物」というものが何ひとつ存在することなく、ただただ虚空(こくう)がそこにある。
それをあえて、深く見つめるかのような、限りなく透き通ったモーツァルトがここにはありますね。
少し冷たさは感じるかもしれません。
ただ、余計な飾りは取り払い、その究極には表現意欲すら消し込んだ無欲であり、また澄んだ境地のモーツァルトともいえますね。
ワルター・クリーン:ピアノ
スッキリと音運びをしながら、ロマンティックで美しい歌を聴かせてくれますね。
まろやかな紅茶のような優しい香りが漂います。
自分でピアノを弾きながら、その音に耳をかたむけて、
「こうやって弾いてよ。」
というモーツァルトの声…というより自身の演奏するピアノの音から伝わる「思い」に忠実に指を運ぶさまがうかがえますね。
このアルバムもモーツァルトらしいモーツァルトが聴ける1枚ですね。
マリア・ジョアン・ピリス:ピアノ
女性ピアニストなのに、意外と男性的な部分も感じさせる、力強さですね。
でも、やっぱり女性ですから、モーツァルト演奏に欲しい繊細さは決して失われていません。
一音一音も明確に伝える配慮もあります。
こう見ると、モーツァルトのピアノ曲には女性のピアニストのアルバムに名盤が多いのかもしれません。
ヴィルヘルム・バックハウス:ピアノ
エスプリが効いているというのか、音はこびがスムースでおしゃれな感じでカッコいい。
全体的に早テンポで進む心地よさが感じられます。
瞑想的な、モーツァルト「ピアノ・ソナタ第4番」に飽きたら、こんな演奏がいいかも…。
グレン・グールド:ピアノ
破天荒(はてんこう)でオキテ破りなモーツァルト。
バッハのような、硬質な感じの演奏ですね。
みけんにシワを寄せて哲学的思索(しさく)に高じている気むずかしい孤高の哲学者のようです。
そして、「優しさやほほえみ」は…ほぼ感じられることがありませんね(汗)
また第3楽章で急に高速で音楽が駆け抜けていくために、曲のカタチすら認識出来すに終わっちゃう感じですね。
全体的に…うーん、少なくとも…「ほほえむミューズではありえません。」
ちょっと変わった風情を楽しみたいならコレですよ。
【解説と名盤、まとめ】モーツァルト「ピアノ・ソナタ第4番」
さて、モーツァルト「ピアノ・ソナタ第4番」、名盤の紹介と解説はいかがでしたか?
モーツァルトの音楽は、こじんまりとした短い作品のなかにもキラめくような名曲が多いですね。
まさしく音楽の天使が舞い降りたような存在がモーツァルトの音楽ですね♬
そんなわけで…
『ひとつの曲で、
たくさんな、楽しみが満喫できる。
それが、クラシック音楽の、醍醐味ですよね。』
今回は以上になります。
最後までお読みいただきありがとうございました。
↓こんなミューズのほほえみも…。