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マーラー:交響曲第6番《悲劇的》【解説と名盤5枚|感想】ハンマーの激音が、そいつを打ち砕く!

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音楽の奥の院

マーラーの悲劇世界!

ここに入っては、いけない!!


マーラー:交響曲第6番「悲劇的」第1楽章

「人一倍、繊細で、こだわりが強く、妥協を許さない」。

そんなマーラーが描く「悲劇」渦巻く心の世界

今回は、マーラー:交響曲第6番《悲劇的》の解説です。

【解説】マーラー:交響曲第6番《悲劇的》

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マーラー:交響曲第6番《悲劇的》を象徴的に語る、こんな名解説があります。 

「悲劇的」と俗によばれているこの交響曲は、マーラー全交響曲中特異な存在

短調で終るのだ。大抵、暗く不吉な予感で始まり、暗から明、紆余曲折を経て、壮麗明澄な世界に向う。(中略)ところが第6には終始悲劇的気分が支配している。しばしば現われる明るさは、雲間から時折差しかける気まぐれな陽光のようなもの。(中略)第6の終結はショッキングであり、悲劇的である。

出典:諸井誠 著 「交響曲名曲名盤100」P162より引用

解説にありますように、「終始悲劇的気分が支配」しながら、音楽は進みます。

そして、最終楽章での、もっとも個性的なものとして、振りおろされるハンマーの打撃音があります。

ハンマーの意味と、その予兆

マーラー:交響曲第6番《悲劇的》のもっとも特徴的なのは第4楽章で鳴り響くハンマーの音です。

「金属的ではない性質の音。(斧を打ち込むように)」

マーラーの書いた楽譜にはそんな指示があります。

つまり、どんな大きさで、どんな形状のものなのか、その具体的な支持が、まったく無いのです。

ここが、名盤アルバムを聴く際のひとつの醍醐味にもなっています。

ハンマーによる打撃は、通常は、2回。

中には3回叩く名盤もありますが、作曲当初は、なんと5回分の書き込みがあったそうです。

このことから、マーラーの「ハンマー効果」へのこだわりがうかがえますね。

また、マーラーの妻である、アルマの回想では、3回のハンマーの打撃について、作曲後に起こった悲劇の予兆であるとして、意味づけをしています

それは、

  1. 長女の死
  2. のちにマーラー死因となる心臓病の発見
  3. ウィーン宮廷歌劇場を退職

以上が、妻アルマの語る、3回のハンマーの意味であり、解説です。

指揮者としてのマーラーは、音へのこだわりが非常に強く、癇癪(かんしゃく)を起こすことがしばしば。

それがゆえに、各方面で、問題が噴出しました。

しかし、そのこだわりの強さが、逆にウィーン宮廷歌劇場の常任指揮者、および監督に就任という結果を引き寄せた部分もあります。

しかし、人生、あるいは、幸不幸とは、「あざなえる縄のごとし」です。

マーラーのこだわりが強く、癇癪もちな性格が、また、ウィーン宮廷歌劇場を追われる原因にもなってしまいます。

つまり、当時の聴衆や、評論家との対立などで、うまくやっていけなかったということですね。

まさしく「悲劇」とは、ある日、ある時、ふいに現れる可能性を秘めたもの

有頂天の状態から、急転直下、「悲劇的環境」に陥る場面もあるとのメッセージ性をこの、マーラー:交響曲第6番《悲劇的》から、感じます。

 

「私の『第6番』は、私の最初の5つの交響曲を吸収し、それを真に消化した世代だけが、その解決を企てうる謎を提供するだろう」

そんなマーラーの言葉が遺っています。

とても難しくて、理解しづらい一言ですね。

ただ、この、マーラー:交響曲第6番《悲劇的》という曲が、マーラーの創作活動のひとつの到達点であったと感じられるのは確かであると言えそうです。

【各楽章を解説】マーラー:交響曲第6番《悲劇的》

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第1楽章 アレグロ・エネルジコ・マ・ノン・トロッポ (激しく、しかし腰のすわったテンポで)

だぁっ!だぁっ!だぁっ!だぁっ!

だぁっ!だぁっ!だ!だ!

悲劇の幕開けは、印象的であり、象徴的…

ズシリと、のしかかる弦楽器による「だぁっ!」の音の連呼が、それを感じさせます!

そして、悲劇の予兆のメロディとリズムのなか、突如として現われる開放的で、天翔(あまか)けるような、第2のテーマ(主題)

その後、マーラーの妻である、アルマのテーマとも言われる、「安らぎと喜びの展開」を迎えながらも、間もなくして、再び、暗く、また重いテーマへと回帰します。

まさしく「あざなえる縄のごとく」音楽は、ドラマティックに彩られていきますね。

第2楽章 スケルツォ(急速で快活に)

第2楽章、スケルツォと、次の第3楽章、アンダンテ・モデラートの順番は、マーラー自身、悩んだようです。

オーソドックスな、交響曲としては、第2楽章には、ゆったりとした曲をおくことが多いですが、マーラーは、最終的には、ゆったりした曲は、第3楽章にレイアウトしました。

好みはそれぞれありますが、規模の大きい第4楽章が最後に控えていることを考えれば、これで良かったのかもしれません。

第3楽章 アンダンテ・モデラート (アンダンテより、やや速く)

全体的に「悲劇的」基調で構築されているマーラー:交響曲第6番《悲劇的》の中で、静寂とやすらぎが満ちている癒やしの1曲ですね。

優しく奏でる弦楽器のメロディの中に、わずかに現れる、そこはかとなく流れる悲しさや、さみしさ。

これは、マーラー:交響曲第6番《悲劇的》のテーマでもあります。

そう言った意味で、全体との統一性がとれています。

打ちのめされて、倒された男が、わずかばかりの、つかの間の安らぎを持った。

そんな時を、描いているという感想を持ちますね。

第4楽章 アレグロ・モデラート(ほどよく速く)

打ち鳴らされるハンマーが象徴する「悲劇」!!

マーラー:交響曲第6番《悲劇的》の中で、もっとも、そのテーマの重厚さを表現した楽章と言えそうです。

勇ましく、そして、力強く、その運命の悲劇性に立ち向かう者の様が、描かれますが、ラストに響くハンマーによる轟音(ごうおん)が、その者を打ち砕きます!!

演奏には、様々な種類のハンマーが使われます。

聴き比べてみるのも面白いですね。

【解説と5枚の名盤の感想】マーラー:交響曲第6番《悲劇的》

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レナード・バーンスタイン:指揮 ニューヨーク・フィルハーモニック

アルパカのおすすめ度★★★★☆

【解説】

 

レナード・バーンスタインの熱のこもりきった上での、最大の爆発。

数種類あるバーンスタインの名盤のうちでも、ほどよい「知性」で、コーティングされて聴きやすく、飽きの来ない超絶バランス系の名盤!

「運命のハンマー」は、3回、打ち鳴らされます。

「2回」鳴らすアルバムが多い中、3回鳴らすのは、やはり、バーンスタインらしい劇的な演出の名盤ですね。

ハンマーの音としては、「ドゴオオン!」

古代に生息していた巨大生物が、戦いにやぶれ、崩れ落ちるが如き迫力です。

そして、演奏全体としては、指揮者バーンスタインの、飛び散る汗までが見えてくる錯覚…いや、たしかに、そしてハッキリと見える名盤です!!

ラファエル・クーベリック:指揮 バイエルン放送交響楽団

アルパカのおすすめ度★★★★☆

【解説】

第1楽章から、アップテンポで、小気味よく進む名盤です。

おどろおどろしさよりも、スッキリ系に仕上げられていて、「悲劇性」が少しゆるいという感想です。

感情移入するよりは、マーラー音楽の構造美をじっくり堪能したい方にはオススメかも。

第2楽章も、若干、テンポが速すぎな感は、ありますが、キレのよい爽快感はあります。

また、それゆえに第3楽章の優美さや、暖かさが、ひきたつ効果は絶大、やはりクーベリックの、全体の構造を考えたバランス感が、舌を巻きます。

第4楽章のハンマーはというと、「ゴロン!」という、イメージ

大木が倒されて、地面を打ちつけた感のあるハンマー音は、「悲劇に打ちのめされた者」の姿を思わせる。

そんな名盤です。 

クラウス・テンシュテット:指揮 ロンドン交響楽団

アルパカのおすすめ度★★★★☆

【解説】

少しゆっくりめに演奏して、聴かせてくる名盤

ことさら、テンポを変化させることなく、冷静な音運びですが、それだけに鬼気迫るものを感じます

この、マーラー:交響曲第6番《悲劇的》を「演奏することに対する自信」を、うかがわせる名盤。

そして、全体を淡々として、表現しているがゆえにハンマーの音が、劇的に、

「ダアアン!!」とノビのある響きで、驚かせます!

この、静かな「悲劇」は、心に食い入る怖さの名盤です。

ヘルベルト・フォン・カラヤン:指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

アルパカのおすすめ度★★★☆☆

【解説】

理性の効いた演奏で、感情に流される恐れのない名盤。

やっぱりカラヤンらしく、美しく整ったアンサンブルです。

硬質で、冷たい肌触り感が少し気になりますが、こんな冷たさが、マーラー:交響曲第6番《悲劇的》の、暗さを、ある面で表現しているのかもしれません。

さて、ここでのハンマー音は、「グオーン!!」

まるで、地の裂けるがごとき絶望感ですね!

全体としては、どこまでも冷静で、落ち着いた大人の時間に聴きたい名盤です。 

サー・ジョン・バルビローリ:指揮 フィルハーモニア管弦楽団

 

アルパカのおすすめ度★★★★☆

【解説】

ひときわゆったりとしたテンポで、始まるマーラー:交響曲第6番《悲劇的》。

このもどかしいくらいの遅さは、ジンワリと、後から響いてくる痛み…。

この、ゆるく継続する痛み、悲劇こそ、マジ、キツイわあ!!

…という、ジンジン効く、イタ〜い名盤

さて、第4楽章のハンマーは、「ボゴオオン!!」巨大な岩石が、降ってきて、大地を揺らすほどの迫力。

こりゃあ、始めから最後まで、「打ちのめされる」名盤です!

【アルパカの体験談】マーラー:交響曲第6番《悲劇的》

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アルパカが、若かりし頃、テレビで、バーンスタイン指揮、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏する、マーラー:交響曲第6番《悲劇的》が放映されました。

その時点では、マーラーは、第1番《巨人》しか聴いたことがなく、「まずまず好きな作曲家」くらいの存在でした。

しかし、どうでしょう。

テレビを通して、現われた、おヒゲをたくわえた老バーンスタイン

「渋み」

「マーラー音楽への敬意」

「燃えたぎる情熱」

 

その破壊的とも言える暴れようが熱すぎる!

そんな演奏を見ていたら冒頭の

だぁっ!だぁっ!だぁっ!だぁっ!

だぁっ!だぁっ!だ!だ!

の始まりからして、意識がどこかにぶっ飛んでしまいそうなくらいの衝撃を受けました。

演奏を聞き終わったあと、意識が体に戻るのにも時間が必要だったくらいの感動でした。

それからは、すっかりマーラーのファンになり、アルバムを集める日々が始まりました。

マーラーファンになって、四半世紀(25年)くらい経ちますが、いまだに、このテレビ放映の衝撃が昨日のことのように感じられます。

そして、いまだに、この、マーラー:交響曲第6番《悲劇的》演奏が、アルパカの中では一番好きなのですね

ここに究極のマラ6、現出!

そんな、魂の名演奏です!!

 

この奥の院には、なかなか入れるものではありません。。。

【解説と名盤、まとめ】マーラー:交響曲第6番《悲劇的》

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さて、マーラー:交響曲第6番《悲劇的》の名盤の紹介と、解説はいかがでしたか?

不安と、恐怖、「悲劇」の近寄る足音などを感じてしまい、なかなかジックリ聴き込むのは怖い1曲かもしれません。

ただ、この、マーラー:交響曲第6番《悲劇的》も「人生の一面」は、表現しているものと思います。

日ごろ、なかなか自分の心の奥は、のぞかないものですし、のぞきたくも、またないものです。

でも、マーラー:交響曲第6番《悲劇的》を聴きながら、たまには、勇気を出して、「自分の心を映し出す鏡」にしてみても、いいかも…

 

 そんなわけで…

 

『ひとつの曲で、

たくさんな、楽しみが満喫できる。

それが、クラシック音楽の、醍醐味ですよね。』

 

今回は以上になります。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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