「オレたち、ホームシック…」
そんな楽団員を救うハイドンのヒラメキ!
その、ほほえましさに触れたい時に聴きたい♫
「貴族、エステルハージ公の夏季休暇が2ヶ月延長が決定!」
家族を置いて、言わば単身赴任で、そのエステルハージ公の静養地へ赴いていた楽団員たちは、ガッカリ…。
彼らは、それに付き合いますが、日を追うごとに、軽いホームシックにかかっていきます。
「妻に会いたい」。
「子供を抱きしめたい」。
「とにかく、家族に会いたいんだ」。
おそらく、楽団の長であるハイドンは、楽団員たちから、そんな言葉を数多く聞いたことでしょう。
そんな楽団員を思うハイドンは、ある策を思いつきます…。
- 【解説:あのエピソード】ハイドン:交響曲第45番《告別》
- 【各楽章を解説】ハイドン:交響曲第45番《告別》
- 【3枚の名盤の感想と解説】ハイドン:交響曲第45番《告別》
- 【解説と名盤、まとめ】ハイドン:交響曲第45番《告別》
【解説:あのエピソード】ハイドン:交響曲第45番《告別》
ハイドンは、侯の好きな音楽を利用して、やんわりと団員たちの気持ちを伝えようとしたのである。
つまり、新作の交響曲の終楽章で、終わりに近づくにしたがって、ひとり、またひとりと団員を去らせ、最後には指揮者のハイドンとヴァイオリン奏者のふたりだけが淋しそうに残る、といった趣向である。
侯は、すぐにその意味を悟り、さっそく全員に休暇を与えたという。
いかにも、機知とユーモアの天才だったハイドンらしいエピソードではないか。
出典:志鳥栄八郎 著 「不滅の名曲はこのCDで」P20より引用
動画の4分35秒あたりから 、当時の様子が、うかがえる場面が見れます。
さて、楽団から去っていく順番ですが、
- 第1オーボエ↓
- 第2ホルン↓
- ファゴット↓
- 第2オーボエ↓
- 第1ホルン↓
- コントラバス↓
- チェロ↓
- 第二ヴァイオリン↓
- ヴィオラ↓
- 第1ヴァイオリンの2人↓
以上の順番になります。
そして、この最後の2人のヴァイオリンは、さみしそうに演奏し、その音が消え入っていき、演奏が終わったところで、トボトボと席を立ち、去っていきます。
また、この楽団員たち。
去っていく際には、目の前の、ろうそくを消してから、席を立ち去っていきます。
その光景を想像すると、一人ひとりが去っていくたびに暗くなっていく様は、なんだか楽団員たちの「家族に会えない寂しさ」の象徴のようにも感じてしまいます。
そんなイキな演出の演奏を聴き、そして、見ていた、エステルハージ公。
その後、解説にありますように、楽団員たちの気持ちを察して、全員に休暇を与え、帰らせたというエピソードが、あります。
現代で言えば、組織のトップに、言いたいことが、なかなか言えずに苦しむサラリーマンたちに近いように感じます。
そこは、ユーモアとシャレの効く楽長であり、現代では言わば、中間管理職のハイドンです。
言葉ではなく、やんわりと、「音楽と、その演奏」で伝え、トップの心を動かすのですから、大したものですね♫
【各楽章を解説】ハイドン:交響曲第45番《告別》
それでは、各楽章について解説したいと思います。
この曲は第1楽章から第4楽章までの4曲で成り立っています。
第1楽章 アレグロ・アッサイ(非常に速く)
どこかモーツァルトの交響曲第25番の第1楽章を思わせる「吹き抜けていく風のような悲劇」を思わせる曲調です。
数分の短い曲ではありますが、その中に深いドラマが、感じられることが特徴です。
また、運命的な響きであり、リズミカルでもある1曲です。
第2楽章 アダージョ(ゆっくりと)
調和的で、ゆるりと進む曲は、「静養」にはピッタリ。
あなたも第2楽章を聴きながら、エステルハージ公に、なった気分で調和的にノンビリ過ごすのはいかがですか?
第3楽章 メヌエット:トリオ・アレグレット(やや速く)
第1楽章のようにテンポがいいのが特徴です。
しかし、曲調的には第1楽章と違って、明るいテーマの1曲という感想です。
少し、第2楽章的なゆったりした部分も持ちながら、ハイドン:交響曲第45番《告別》の全体のバランスを整える意味でも、いい曲という感想も持ちます。
第4楽章 ファイナル:プレストーアダージョ(きわめて速くーゆっくりと)
少し第1楽章のような、悲劇的で、運命的な要素を持っています。
小気味よく、リズムを刻みながらテンポよく進むという特徴を持ちます。
最後、曲が終わったかに思わせながら、アダージョ(ゆっくり)な曲が切れ目なく始まります。
ハイドンの当時、この曲が進むにつれて、楽団員たちが目の前の、ろうそくを消しながら退場していく。
そんな流れになっているのが特徴です。
これは、冒頭で解説しました。
【3枚の名盤の感想と解説】ハイドン:交響曲第45番《告別》
トン・コープマン:指揮 アムステルダム・バロック管弦楽団
アルパカのおすすめ度★★★☆☆
【解説】
古楽器の特徴である「小気味よく刻まれるテンポの良い演奏」というのが感想の名盤です。
無骨で、突き放したようなイメージはありますが、その素朴さも、なかなか趣があっていいものです。
第1楽章の「吹き抜けていく風のような悲劇」もスピーディで、カッコいい!
全体として室内楽的な、こじんまりとしたイメージの名盤です。
アンタル・ドラティ:指揮 フィルハーモニア・フンガリカ
アルパカのおすすめ度★★★★☆
【解説】
祖国ハンガリー動乱から、亡命した後、ウィーンにて、107曲あるハイドン交響曲の全集を録音したドラティ。
とくに、ハイドン:交響曲第45番《告別》のテーマである「帰りたい」との望郷の念とのシンクロもあったかもしれません。
冒頭の第1楽章からして、暗くて、運命的な速めのリズムは、ハイドン:交響曲第45番《告別》には合ってるなという感想です。
ハイドンの交響曲だったら1度は聴いておきたいドラティの名盤です。
トレヴァー・ピノック:指揮 イングリッシュ・コンサート
アルパカのおすすめ度★★★★☆
【解説】
コープマンとドラティの中間くらいの、バランスの良さが特徴の名盤です。
切れの良さと、歌いまわしの美しさが絶妙でいい名盤ですね。
奥ゆかしい気品と主張しすぎない華やかさがあるという特徴という感想も持てる名盤です。
Apple Musicで “紹介した名盤” が配信中
【解説と名盤、まとめ】ハイドン:交響曲第45番《告別》
さて、ハイドン:交響曲第45番《告別》の名盤のオススメと、解説はいかがでしたか?
ハイドンは、宮廷での言わば「宮仕え」です。
現代だと少しサラリーマン、とくに中間管理職に通じるところがあるかもしれません。
トップのやりたい放題のムチャぶりに付き合って苦しむ楽団員に共感しながらも、ハイドンのウィットに富んだ優しさったらないですね。
そんな感想のエピソードです。
こんな「優しさ」いっぱいの交響曲も悪くないですよ〜♫
そんなわけで…
『ひとつの曲で、
たくさんな、楽しみが満喫できる。
それが、クラシック音楽の、醍醐味ですよね。』
今回は、以上になります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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