叫ぶ!
軍楽隊のファンファーレ♫
その着想、いただき!!
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ヤナーチェク72歳…。
老いらくの恋の情熱…。
燃える!
自由な発想!!!
さて、今回は「自由へのあこがれが結実」したヤナーチェクの《シンフォニエッタ》、解説とおすすめ名盤を紹介です。
【解説】ヤナーチェク《シンフォニエッタ》
【総解説】ヤナーチェク《シンフォニエッタ》
ヤナーチェク《シンフォニエッタ》のこんな解説があります。
ヤナーチェク《シンフォニエッタ》ほど交響曲の概念から遠い作品はない。(中略)5楽章からなるこの問題作には、「多楽章構成」だということ以外には、何一つ交響曲の概念とオーバーラップするものがないのである。(中略)トランペット中心の金管を、オケ背後の櫓の上に配した空間音楽を先駈けたような楽器配置。世紀末から今世紀にかけての交響曲の混乱といおうか、断末魔の混迷といおうか、その赤裸裸な姿を読者に認識していただくべきだと考えて、敢えてここにとりあげたのである。
出典:諸井誠 著 「交響曲名曲名盤100」P148より引用
「シンフォニエッタ」とは「小さな交響曲」という意味。
しかし、解説にもありますが、型にとらわれず「自由で奔放に内なるインスピレーションを解放した印象」があります。
【抑圧からの開放、そして恋…】ヤナーチェク《シンフォニエッタ》
ヤナーチェクが《シンフォニエッタ》 を作曲した当時、ヤナーチェクが生まれ育った現在のチェコ共和国はいくつかの国から支配されていました。
そのため国を愛してやまないヤナーチェクは、内なる反発心からくる精神的抑圧を感じて生きていました。
しかし、第一次世界大戦後の1918年、祖国は独立します。
さらに同じころ、60歳を超えていたヤナーチェクは熱烈な恋をします。
相手は38歳年下のカミラ・シュテスロヴァーという2人の子を持つ既婚者でした。
お互いに家族を持っていましたが、11年の長きに渡ってヤナーチェクは合計で600通もの手紙を送り、想いを伝え続けます。
そして、時にはカミラの住む家で宿泊することもあったようですが、全くのプラトニック・ラブに終わっています。
しかし、この奇妙な「老いらくの片思い」が導き産み出した名曲が《シンフォニエッタ》でした。
そう、それは1925年、カミラとともに訪れた軍楽隊の野外コンサートで聴いた吹奏楽。
そのファンファーレを聴いたヤナーチェクのインスピレーションのマグマは燃えたぎり、そして、吹き出したのでした。
そして、作曲の目的としてはチェコスロヴァキアにある体操団体「ソコル」において開催された「第8回ソコル祭典」のため…というものでした。
始めのうちは
- 軍隊シンフォニエッタとか
- ソコルの祭典
と名付けていましたが、その後に《シンフォニエッタ》と題名を変更しています。
ちなみに初演は、1926年6月26日にヴァーツラフ・ターリヒの指揮により行われました。
また、村上春樹の小説「1Q84」でも効果的に使われていたヤナーチェク《シンフォニエッタ》。
ヤナーチェク《シンフォニエッタ》のアグレッシブなイメージを、小説の場面に上手く重ね合わせていました。
この人気小説「1Q84」のおかげでヤナーチェク《シンフォニエッタ》もずいぶんと認知度が上がったという経緯があります。
天国のヤナーチェクは、きっと村上春樹と「1Q84」という作品に感謝していることでしょう…。
【各楽章を解説】ヤナーチェク《シンフォニエッタ》
それでは、各楽章について解説します。
ヤナーチェク《シンフォニエッタ》は第1楽章から第5楽章までの5曲で成り立っています。
そして、それぞれの楽章には副題がついています。
第1楽章 アレグレット:ファンファーレ
バンダ、叫び!
ファンファーレ、歌い、鳴り響く!!
そして始まる…ヤナーチェク《シンフォニエッタ》。
そう、バンダとは、音楽を盛り上げるために組まれた軍隊で言うところの別働隊!
ヤナーチェク《シンフォニエッタ》では、
- トランペット、9!
- バストランペット、2!
- テナーチューバ、2!
それぞれが主役級に咆哮!!
これが、ヤナーチェク《シンフォニエッタ》の特徴。
愛するカミラとともに聴いた軍楽隊の勇壮な響きが、ヤナーチェク自身に大きな感動を呼び起こし、インスピレーションを与えます!!
そして結実した《シンフォニエッタ》は、このバンダがポイントの名曲なのです。
第2楽章 アンダンテ:シュピルベルク城
舞曲風の雰囲気を持ったノリの良い楽章です。
少し滑稽でもあり、足取り軽くステップを踏む人々の姿が想像できます。
途中で幻想的で不思議な感じのある展開をしながら、最後は再び冒頭の舞曲が再開します。
第3楽章 モデラート:ブルノの王妃の修道院
静かで調和的な響きの優しい1曲であり、どことなく憂いも感じられます。
途中に激しくも運命的な展開を見せて全編を通して彩りを変えて進行していきます。
第4楽章 アレグレット:古城に至る道
トランペットが歌い出し、弦楽器がそれを後押ししながら始まります。
トランペットが時に
- 勇壮に
- 滑稽に
- 楽しげに
歌いながらも様々な楽器がトランペットの歌をサポートします。
第5楽章 アンダンテ・コン・モート|アレグレット:市庁舎
憂いを帯びた木管楽器の歌が始まったかと思うと、冷たくも吹きすぎてゆく秋の風を思わせる弦楽器が重なってきます。
それぞれの管楽器がそれぞれの個性を発揮するように歌は続き、まるで「管楽器のための協奏曲」のような様相を見せながら、その音楽は高揚していきます。
そして、その高揚がある時を堺に第1楽章の冒頭のトランペットの華麗な旋律へと姿を変えます。
そして、全ての楽器が力の限り歌い出して盛り上がり、感動的なフィナーレを迎えるのです!!
【名盤3選の感想と解説】ヤナーチェク《シンフォニエッタ》
ラファエル・クーベリック:指揮 バイエルン放送管弦楽団
アルパカのおすすめ度★★★★★
【名盤の解説】
特徴は目が覚めるが如くに駆けぬけてゆく第2楽章!!
もちろん第1楽章の咆哮!!
第3楽章の優美さ、
第4楽章のトランペットの歌、
第5楽章のパンチの効いたフィナーレも圧巻!!
ただ、もっとも特徴的なのが、第2楽章の
- 鋭利な刃物を思わすスピード感!
- 美しさ!!
- そして、透明感にあり!!!
ヤナーチェク《シンフォニエッタ》の持つ現代性とともに、古典的重厚感をも閉じ込めた非常にバランスのとれた名盤です。
洗練され、またインスピレーショナブルに仕上げられた「超絶素晴らしい」のひとことがピッタリの名盤でも、またありますね。
シャルル・デュトワ:指揮 モントリオール交響楽団
アルパカのおすすめ度★★★★☆
【名盤の解説】
洗練!!
そのひとことで突き抜けたところのある名盤!
デュトワの指揮によりドライブされたアンサンブルの精緻さは相変わらず舌を巻きますし、なんと言ってもデュトワの演奏は美しくもカッコいい!
クーベリック版にあった現代性と、古典的バランス感…。
デュトワ版は現代性に寄った演奏かもしれません。
ヤナーチェク《シンフォニエッタ》をカッコよく聴きたい時にはこの名盤です。
ジョージ・セル:指揮 クリーヴランド管弦楽団
アルパカのおすすめ度★★★★☆
【名盤の解説】
村上春樹の「1Q84」の小説では、この名盤が登場。
少し「遊び」が少ない印象はありますが「理性や知性の効いた洗練されたクールさ」がニクイ感じの名盤です。
イマイチつかみどころのなさを、ほんのり感じる村上春樹の小説の中で「理性や知性で軸を通したセル指揮の名盤」が鳴り響いているのならバランスは取れるのかも…。
ともあれ、ヤナーチェク《シンフォニエッタ》の名盤のひとつであることは確かです。
ともあれ「聴きやすさ」という面ではイチオシの名盤でもあります。
Apple Musicで “紹介した名盤” が配信中
【まとめ】ヤナーチェク《シンフォニエッタ》
さて、ヤナーチェク《シンフォニエッタ》解説とおすすめ名盤はいかがでしたか?
老いらくの恋の情熱…。
からの…
燃える!
自由な発想!!!
人って、いくつになっても情熱的になれるし、肉体年齢も超える事があるのだな…と感心してしまいました。
さあ、情熱を呼び起こして燃え立とう!
BGMはもちろん、ヤナーチェク《シンフォニエッタ》ですよ~!!
そんなわけで…
『ひとつの曲で、
たくさんな、楽しみが満喫できる。
それが、クラシック音楽の、醍醐味ですよね。』
今回は、以上になります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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