北斎の衝撃!
天よりくだる!
インスピレーション♫
「音楽家になれなかったら船乗りになっていただろう…」
そんな言葉が残っているくらい海が大好きだったドビュッシー。
ドビュッシー:交響詩《海》が作曲された時、日本の芸術からの影響を強く受けていました。
作曲時、ドビュッシーの日常は揺れ動きます。
- 北斎の浮世絵に感動!
- 人妻との不倫からの結婚
- 自ら命を絶とうとする元妻…
激動期のドビュッシーが作曲した「たゆたう海」を描いた傑作交響詩!
さて、今回は、ドビュッシー:交響詩《海》の解説とおすすめ名盤を紹介です。
【解説】ドビュッシー:交響詩《海》
ドビュッシー:交響詩《海》についてのこんな解説があります。
作曲された1905年(43歳)ごろといえば、ドビュッシーは、妻ロザリーを捨てて、裕福な人妻エンマと駆け落ちするという事件を起こしており、そのため、彼は、世間から激しい非難を受けていた。そんな批評を押し返すかのようにして書かれたのが、この曲であった。発表当時は賛否両論であったが、今日では、彼の代表作として、すこぶる高い評価を受けている。
出典:志鳥栄八郎 著 「新版 不滅の名曲はこのCDで」P127より引用
1905年7月、ドビュッシーは銀行家の人妻であったエンマと不倫の果てに逃避行。
パリへ戻る9月までの間に、イギリス海峡に浮かぶジャージー島やノルマンディ地方のディエップを巡ります。
そして、パリに帰国したドビュッシーを襲ったのが世間からの激しいバッシングでした。
なぜなら、妻のロザリーがピストルにより自ら命を絶とうとして未遂に終わるという事件が公になったからでした。
そのためドビュッシーの多くの友人も離れていきました。
そんな失意の中で作曲が進められましたが、妻のロザリーとの離婚が成立する数ヶ月前に交響詩《海》は完成しています。
しかし1905年に行われた初演は不評でした。同じ時期の不倫バッシングも手伝ったものと思われますがドビュッシーの落ち込みようは相当のものでした。
ただ、解説にありますようにその後に、交響詩《海》は評価が上がり、現在ではドビュッシーの代表作とも言えるほどの完成度を持っています。
また、交響詩《海》の初版の楽譜の表紙はドビュッシーの意向で、北斎の「神奈川沖浪裏」の一部が印刷されています。
そのため交響詩《海》は、北斎の「神奈川沖浪裏」に影響を受けて作曲されたと考えられることは多いです。
ただ本当のところは、今となっては天国にいるドビュッシーにしかわかりません。
初演:1905年10月15日パリにて
指揮:カミーユ・シュヴァイヤール指揮
ラムルー管弦楽団
編成:
弦5部、フルート×2、オーボエ×2、ピッコロ×1、コールアングレ×1、クラリネット×2、ファゴット×3、コントラファゴット×1、ホルン×4、トランペット×3、コルネット×2、トロンボーン×3、チューバ×1、ティンパニ、大太鼓、トライアングル、シンバル、タムタム、チェレスタ、ハープ×2
【各楽章を解説】ドビュッシー:交響詩《海》
それでは、各楽章について解説します。
ドビュッシー:交響詩《海》は第1楽章から第3楽章までの3曲で成り立っています。
第1楽章 海の夜明けから真昼まで
静かな弦とハープ、ミュートトランペットが絡みながら神秘的な夜明けの時を告げていきます。
ゆらりゆらゆらと、まるで映像のスローモーションのように海は遊び始めます。
ハープによる波をはじけて反射する朝日を浴びて反射する光、光、光…。
木管楽器と弦楽器にフワリと絡むハープのささやきは海のたゆたう様を思います。
すると時を重ねる海がいっぱいの朝日を受け入れていきます。
その後もゆったりと自由に波の形を変化させながら遊ぶ「海の夜明け」が描かれていきます。
そして、真昼へと向かう壮大な音楽へと昇華し時は真昼へと移っていくのです。
第2楽章 波の戯れ
第1楽章よりも神秘性を増していきます。目を覚ました波たちが活動的に元気よく戯れます。
はじける水しぶきたちの姿は、まるで海の妖精であり色彩豊かに舞い上がります。
そんな可愛らしい水しぶきたちを遊ばせる広大な海と空…。
太陽の光を集めつつ反射して美しい海面が目の前に展開する、そんな様を思います。
第3楽章 風と海との対話
海が少し荒れはじめ、波は大きくうねり始めます。
そしてスピードを速めて通り過ぎていく風…。
荒れる海がどどどどど…!
音を立てて激しく唸る、海…。
切り裂くように吹きすさぶ、風…。
風は海をもてあそび、海は負けじと大きな波しぶきを弾き返す。
そう、そんな躍動感でいっぱいの風と海と対話です。
【名盤3選の感想と解説】ドビュッシー:交響詩《海》
ジャン・マルティノン:指揮 フランス国立管弦楽団
アルパカのおすすめ度★★★★★
【名盤の解説】
繊細で彩り豊かな名盤で、海のたゆたう様が見えてくるようです。
フランス音楽を得意としたマルティノンの特性がよく表れた名盤でもあって、とてもみずみずしく感性が弾けています。
あくまでも調和的な音運びの中から生まれるセンスの良さはマルティノン独特のものと言っていいと思います。
そんなフランス的な趣味で彩られた名盤です。
エルネスト・アンセルメ:指揮 スイスロマンド管弦楽団
アルパカのおすすめ度★★★★★
【名盤の解説】
力強くうねる海のさまが鮮明に浮かぶ名盤です。
それでいて木管楽器の精妙で柔らかい響きがたまらなく素敵。
色とりどりに姿を変えていく美しい海が七色に变化していく映像がありありと見えてくるようです。
録音は少し古くなりましたが演奏の素晴らしさはいつまでも色あせません。
じっくりと聴き込んでいきたい名盤です。
シャルル・デュトワ:指揮 モントリオール交響楽団
アルパカのおすすめ度★★★★★
【名盤の解説】
シャープで流麗でありながら、決して繊細さを失わない名盤です。
「さり気なくカッコいいい音楽作りといったらデュトワ」というくらいに「オシャレ」な名盤でもあります。
フランスの音楽はこんな「オシャレ」要素がピッタリきますし、海の洗練された透明感のある美しさに合っています。
デュトワの持つ色彩感も加わっていますので素晴らしい名盤と言えます。
Apple Musicで “紹介した名盤” が配信中
【まとめ】ドビュッシー:交響詩《海》
さて、ドビュッシー:交響詩《海》の解説とおすすめ名盤はいかがでしたか?
「音楽家になれなかったら船乗りになっていただろう…」
そんな言葉が残っているドビュッシーの「海への愛」が詰まった名曲交響詩《海》。
その作曲の背景には、自業自得とは言え泥沼の愛憎劇が展開していたなんて驚きです。
ただ、ドビュッシー:交響詩《海》を聴く時にはそんな背景はすっかり忘れて壮大な海の情景を楽しみたいですね。
そんなわけで…
『ひとつの曲で、
たくさんな、楽しみが満喫できる。
それが、クラシック音楽の、醍醐味ですよね。』
今回は、以上になります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。