新しい命の誕生に、
感謝の思いを、いっぱいこめて…。
(youtubeをポチって音楽を聴きながら読んでみてくださいね。”iPhoneの場合は全面表示されてしまったら2本指で内側にむけてピンチインしてください。”)
ワーグナー56歳の人生のたそがれ時。
妻、コジマとの間に長男が生まれます。
名前をジークフリートと名付けました。
あまりにも嬉しい気持ちのワーグナーは、妻のコジマをねぎらうために、あるサプライズを用意したのでした。
- 【素敵なエピソードを解説】ワーグナー:ジークフリート牧歌
- 【楽曲を解説】ワーグナー:ジークフリート牧歌
- 【3枚の名盤を解説】ワーグナー:ジークフリート牧歌
- 【解説と名盤、まとめ】ワーグナー:ジークフリート牧歌
【素敵なエピソードを解説】ワーグナー:ジークフリート牧歌
ワーグナーは、長男が生まれた喜びと感謝の思いを妻のコジマに伝えるために、「ジークフリート牧歌」を作曲しました。
その際に行なった、こんなエピソードの解説があります。
ワーグナーは、この曲を、愛妻コジマの誕生日のプレゼントにしようとして作曲し、ひそかに楽員たちに練習させた。
そして、誕生日の12月25日の朝、コジマの寝室に通じるらせん状の階段に勢ぞろいした楽員たちに、まだ寝ている彼女のためにこの曲を演奏させたのである。
美しい音楽の調べに驚いて目を覚ました彼女は、思いがけない贈り物に涙を流して喜んだという。
曲は、全体に牧歌的な気分にみちあふれていて、聴いていると、長男を得たワーグナーの喜びと、コジマへの感謝の気持ちが痛いほど伝わってくる。
出典:志鳥栄八郎 著 「不滅の名曲はこのCDで」p100より引用
以上のような、エピソードのある「ワーグナー:ジークフリート牧歌」です。
心がほっこりするいいエピソードですよね。
でも、いざ楽譜を出版しようとなった際、コジマは嫌がったそうです。
なぜかというと、この「ワーグナー:ジークフリート牧歌」という1曲が「家族のための音楽」であって、「公的なもの」になることを拒んだためと言われています。
たしかに、思い出のつまった音楽が、商業ベースにのることは、なんとなく思い出が薄れるような感覚で嫌なものかもしれません。
ただ、その後、出版の運びになるわけですが、実際に1878年に出版されると、売れ行きがとてもよく、演奏の機会も増えたとのことですね。
さて、もうひとつ、小さなエピソードを書いておきましょう。
この、コジマの寝室前での演奏ですが、当時、5歳だった長女イゾルデと3歳だったエヴァはこの「ワーグナー:ジークフリート牧歌」のことを「階段の音楽」と名付けたそうです。
それは、楽団員が階段の上に立って、演奏する姿を見ていたからです。
なんとも可愛らしいエピソードですね。
【楽曲を解説】ワーグナー:ジークフリート牧歌
感謝の思いと喜びと、そして、大きな希望に満ちた楽曲「ワーグナー:ジークフリート牧歌」。
始まりは「朝」のイメージでしょうか。
空気が澄み、さわやかで、静かな気持ちのいい清らかさ。
夜が明けてから、時がたつとともに、だんだんと日が昇り、「清く澄んだ光」から、「暖かい光」へと変化をとげていきます。
音楽自体も、スピードを少しあげながら、勇ましくなっていきます。
しかし、その勇ましさが、行き過ぎることはなく、ほどほどのところで、抑えられながら進みます。
常に調和が保たれて、息子が誕生したことの「喜び」の思いで、音楽は運ばれます。
少し、勇ましくなった音楽も、最後はだんだんと静かなものへと戻っていって、フェードアウト、音楽は終わっていきますね。
【3枚の名盤を解説】ワーグナー:ジークフリート牧歌
アルパカが初めて「ワーグナー:ジークフリート牧歌」を効いたのは、ブルーノ・ワルターの演奏でした。
本当は別の曲が欲しくて、ゲットしたのですが、そのCDに併録されていた1曲だったのです。
もちろんその曲も感動したのですが、この「ワーグナー:ジークフリート牧歌」も痛く感動して、このCDがアルパカの中では、感動の名盤となっていますね♫
ブルーノ・ワルター:指揮 コロンビア交響楽団
アルパカおすすめ度★★★★☆
これはすでに、「ワーグナー夫妻の喜び」を、糸口として表現された、壮大な自然への讃歌にまで昇華されているような、素晴らしい名盤ですね。
草原の草、一枚一枚についた朝つゆが、静かにのぼる太陽の光を集めながら、それを一生懸命に、反射して、草原全体を輝かせんとして、甲斐甲斐(かいがい)しく、その本来の役割を、果たしていきます。
鳥はさえずり、小川の水の流れは、心地よく草原の景観をより素晴らしいものへと彩(いろど)っていきますね。
そして、音楽は最大の自然による「喜びの謳歌」とも言える盛り上がりをみせます。
さらに、太陽は光を、ますます強めながら、朝から午後へと向かう時の流れの中で、その偉大な姿をあらわにしていきますね。
こじんまりとした趣(おもむ)きのある本来の「ワーグナー:ジークフリート牧歌」とは、イメージが違うように感じます。
でも、こんな雄大な表現の「ワーグナー:ジークフリート牧歌」、悪くない名盤なんですよね!
サー・ゲオルグ・ショルティ:指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
アルパカおすすめ度★★★★★
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の団員による、小編成での演奏は、品が良くて、小気味いいですね。
実際に、コジマへのサプライズで、演奏された際は、こんな感じの響きだったかもしれません。
「優しい朝を迎えて、目を覚ますコジマ。
ドアの向こうから、聴こえてくる、かすかな合奏。
生まれて間もない、ジークフリートを抱えながら、扉を開きます。
すると、そこにはワーグナーをはじめとした、小編成の楽団員が、『ワーグナー:ジークフリート牧』を静かに奏しています。
あまりの嬉しさに涙がこみ上げてくるコジマ」。
そんな姿が、ありありと見えてきそうな名盤です。
生まれたばかりの「ジークフリートの可愛らしさの表現」にも感じられて、静かな楽しみを与えてくれる名盤ですよね〜。
グレン・グールド:ピアノ
アルパカおすすめ度★★★☆☆
ピアニストのグレン・グールドが、ピアノ版に編曲した名盤です。
管弦楽版の「ワーグナー:ジークフリート牧歌」は、ワーグナーの気持ちの表現された「喜びの歌」です。
生まれてきてくれた、息子ジークフリートと、身を削る思いで、ジークフリートを産んでくれた、妻コジマへの最大の感謝の思いの発露(はつろ)ですね。
でも、このグレン・グールドのピアノ版の「ワーグナー:ジークフリート牧歌」は、管弦楽版とは逆。
つまり、生まれてきた「ジークフリートの感じた気持ち」の表現のように聴こえてくるのはアルパカだけなのでしょうか?
生まれられた喜びの中、まだ、よく目が見えず、耳も聞こえない、そして、もちろん、しゃべることも出来ません。
そんな中、おとうさんのリヒャルト(ワーグナー)やお母さんのコジマへの、かすかな意識をもっての、喜びと、愉しみの気持ちの表れ。
さらに、ジークフリートによる、限りなく言葉少なの、せいいっぱいの「うれしいよ」「愉(たの)しいよ」のほほ笑み。
そんな風に聴こえてきます。
淡々と静かにピアノによって運ばれる「ワーグナー:ジークフリート牧歌」のジークフリートの目線にフォーカスした(と、アルパカが思える)名盤です。
【解説と名盤、まとめ】ワーグナー:ジークフリート牧歌
さて、「ワーグナー:ジークフリート牧歌」の名盤の紹介と、解説はいかがでしたか?
「緊急事態宣言」が出て、なかなか外にも出れずに、ストレスはたまるばかりですね。
でも、「引きこもらなければならない」時ならば、せめて心をあたためてくれる名曲、名盤に触れて、乗り切っていきたいものですよね。
そんなわけで…
『ひとつの曲で、
たくさんな、楽しみが満喫できる。
それが、クラシック音楽の、醍醐味ですよね。』
今回は以上になります。
最後までお読みいただきありがとうございました。
こんな癒やしの1曲も↓
エスプリの効いたこんな小さな歌もいいかも…↓