はかなくも美しい
透きとおるような白鳥の純白
クサクサして、心の透明度が落ちた時に聴きたい♫
- 【楽曲を解説】サン=サーンス:《白鳥》動物の謝肉祭
- 【各曲の感想と解説】サン=サーンス:《白鳥》動物の謝肉祭
- 【4枚の名盤の感想と解説】サン=サーンス:《白鳥》動物の謝肉祭
- 【解説と名盤、まとめ】サン=サーンス:《白鳥》動物の謝肉祭
サン=サーンス:《白鳥》は、チェロとピアノで、静かに奏でられる、憂いをおびた美しい1曲。
このサン=サーンス:《白鳥》をもとにした、バレエ作品、「瀕死の白鳥」があります。
これは、傷つき、もがきながらも、その透明で白い、「天使のごとき羽根」を広げます。
そして、その清き時のなかで、静かに息を引き取っていく様が描かれています。
この、バレエ作品「瀕死の白鳥」のイメージもあるのでしょう。
サン=サーンス:動物の謝肉祭のなかの第13曲目である《白鳥》はとても印象的で心に残る1曲という感想が持てます。
ちなみに、使用される楽器としては、ピアノ2台、チェロ1挺となっていますが、ピアノ1台で演奏される機会も多いです。
そして、ピアノが表しているのが、きれいに、はかなく揺らめく湖の水面。
そして、チェロは、静かに死を迎える「白鳥そのもの」を表現しています。
作曲の動機としては、チェリストのシャルル・ルブーク主催のプライベートなパーティーで演奏するためでした。
《白鳥》が収録されている、サン=サーンス:動物の謝肉祭は、そんな、ごくうちうちでの、演奏を目的に作曲したものです。
そのため、内容的には、たくさんのユーモアを盛り込んで作られています。
つまり、
- 先輩の作曲家オッフェンバックの曲「天国と地獄」をゆったりと演奏するというパロディ(第4曲「亀」)。
- 「初心者のように努めて下手くそにピアノを弾くように」との指示を入れたり(第11曲「ピアニスト」)
- 「過去の音楽は化石である」という立場から、自身の曲をモチーフにすることをはじめ、何曲かをブラックユーモアたっぷりに表現(第12曲「化石」)。
以上のような、パロディとユーモアたっぷりに、サン=サーンスは、動物の謝肉祭を作曲しています。
そんな、要素が多かったため、サン=サーンスの生前には、《動物の謝肉祭》は、公式に演奏される機会はなかったそうです。
ただ、例外として、第13曲《白鳥》のみは、出版されました。
完全なオリジナル曲ですし、また、《白鳥》は、当時から、「いい曲」として、認められていたからです。
【楽曲を解説】サン=サーンス:《白鳥》動物の謝肉祭
さて、サン=サーンス:動物の謝肉祭の愉しい雰囲気を表した、こんな解説があります。
動物をあつかったり、描いたりした音楽は多いが、この曲ほど愉快な作品はない。
この組曲は、サン=サーンスが、1886年(51歳)に、(中略)謝肉祭の音楽会で演奏された。
この曲は、副題に「動物園の大幻想曲」とあるように、亀やライオン、ロバといった動物たちを次々に登場さて、その生態を、たいへんユーモラスに描いたものである。(中略)
出典:志鳥栄八郎 著 「不滅の名曲はこのCDで」P110より引用
全部で14曲ある、サン=サーンス:動物の謝肉祭。
解説にありますように、たくさんの動物たちの姿や、しぐさ、動作といったものが活き活きと描かれていて、全く飽きさせない面白さでいっぱいという感想です。
その中でも、特に、有名な《白鳥》は第13曲目に登場しますね。
【各曲の感想と解説】サン=サーンス:《白鳥》動物の謝肉祭
それでは、各曲について解説します。
この曲は第1曲から第14曲までの全14曲で成り立っています。
第1曲 序奏と獅子王の行進曲
サン=サーンス: 組曲「動物の謝肉祭」:序奏と獅子王の行進曲
音楽の始まり、ファンファーレのように響く、ピアノのスピーディーな反復から始まります。
百獣の王、ライオンの、大きなあくびとともに始まる、朝のイメージにも感じられます。
また、堂々とジャングルをゆくライオンの姿が、ありありと浮かびます。
この後に続く、サン=サーンス:動物の謝肉祭の始まりにふさわしい、勇壮な感想の1曲ですね。
第2曲 めんどりとおんどり
めんどりと、おんどりの、夫婦喧嘩の様が描かれます。
けたたましく言葉のやり取りをする様が見えてくるようです。
ピアノと弦楽器でおんどりのイメージ、その後、クラリネットでめんどりのイメージが現われます。
「喧嘩」であるのに、なんだか微笑ましいですね。
第3曲 ラバ(アジアロバ)
ラバが一瞬にして、駆けていく。
そんな数十秒がピアノで、描かれます!
第4曲 亀
運動会のかけっこで有名な「天国と地獄」。
本来、アップテンポな曲を思い切り遅くして、ゆったりと、てくてくと進む亀の姿が、描かれます。
作曲者オッフェンバックを、からかっているような作りです。
でも、決して、そんな思惑はなく、サン=サーンスの、「音楽を心から楽しむワクワクした気持ち」から作られたのだという感想です。
第5曲 象
ベルリオーズの《ファウストの劫罰》の「妖精のワルツ」と、メンデルスゾーンの《真夏の夜の夢》の「スケルツォ」が引用されています。
「象」がテーマの曲なのに、引用された曲の2曲ともが「妖精」がテーマ。
象が、羽をつけて、お空を飛んでいくイメージなのでしょうか。
ただ、演奏自体は、象の重い雰囲気で、表されています。
第6曲 カンガルー
2台のピアノで、カンガルーの、ピョンピョンと、跳ねながら進む姿が、想像できます。
とても愉快です。
第7曲 水族館
青く透き通った、水族館の巨大な、トンネル水槽を思い浮かべるとピッタリ。
大きな水族館の弱い光の中で、ふんわりと浮かぶ、青、青、青。
そのいっぱいの青の幻想的な世界の中を泳ぐ、魚たちの美しくも、楽しく生きる姿。
そんな光景が浮かびますね。
第8曲 耳の長い登場人物
意味ありげのタイトルですが、サン=サーンスの解説が残っていないため、はっきりしたことはわかりません。
ただ、動物的にはロバ。
そして、もう一つの意味としては、現代のSNSでの、炎上よろしく、サン=サーンスを批判していた批評家へのからかいとも言われています。
第9曲 森の奥に棲むカッコウ
ピアノが深い森、クラリネットで、カッコウの鳴き声が奏でられます。
耳をすますと、本当に森の中にいるみたいな、感想が持てます。
第10曲 大きな鳥かご
動物園の大きな鳥かごの中を、ハタハタと飛び回る鳥の姿。
フルートの音が鳥の声、弦楽器の小刻みに奏でられるのは、鳥の羽ばたきです。
なんとも元気な鳥たちの躍動感が伝わってきますね。
第11曲 ピアニスト
人間も動物です。
そして、ピアニストが一生懸命ピアノの練習曲「チェルニー」を弾いていますが、どうしようもなく下手っぴです。
楽譜には、「初心者のように努めて下手くそにピアノを弾くように」と指示があります。
第12曲 化石
すでに、化石となった音楽ということです。
つまり、サン=サーンス作曲の《交響詩「死の舞踏》「骸骨の踊り」や、「きらきら星」、ロッシーニの《セビリアの理髪師》「ロジーナのアリア」のメロディが出てきます。
これらを、すでに過去のもの、「化石となった音楽」と皮肉っているわけです。
第13曲 白鳥
こちらは、冒頭で解説しました。
第14曲 終曲(フィナーレ)
ライオン、ラバ、とり、カンガルー、ピアニストはじめ、動物たちが、全員集合します。
楽しくワイワイと群れて踊る動物たちの、スピーディーでエネルギッシュな姿が描かれるフィナーレです。
【4枚の名盤の感想と解説】サン=サーンス:《白鳥》動物の謝肉祭
シャルル・デュトワ:指揮 ロンドン・シンフォニエッタ
アルパカのおすすめ度★★★★★
さわやかな彩りの管弦楽が、動物たちの活躍を描きます。
たくさんな動物たちが、夢のような歌や踊り、ドタバタを展開する様が、あらゆるところに鮮やかな足跡を残している名盤。
「音の魔術師」デュトワの魔法で、動物たちも語りだす!
そんな感想の名盤です。
ユージン・オーマンディ:指揮 フィラデルフィア管弦楽団
アルパカのおすすめ度★★★★☆
全体がキレが良く、すっきりまとまっている、聴きやすい名盤。
骨太な構築感があって、バランスもいいですね。
そんな生真面目に音楽を作っていても、本来のサン=サーンス:動物の謝肉祭の楽しい要素は詰まっています。
「フィラデルフィア・サウンド」「オーマンディ・トーン」とも評された、美しい弦の音色を中心に磨かれた、音楽性を堪能出来る名盤です。
クレーメル(vn)アルゲリッチ(pf)マイスキー(vc)他
アルパカのおすすめ度★★★★☆
ギドン・クレーメル、マルタ・アルゲリッチ、ミッシャ・マイスキーと言った名手たちが揃っての、サン=サーンス:動物の謝肉祭の名盤
豪華なソリストたちが、こんなに楽しくハジけるさまは、なかなか聴けません。
これもサン=サーンス:動物の謝肉祭という素材の音楽が存在しているからこそ、結実した楽しみとの感想です。
耳をしっかり澄まして聴きたい、素晴らしい名盤です。
カール・ベーム:指揮 ウィーンフィルハーモニー管弦楽団
アルパカのおすすめ度★★★★☆
香りの高い珠玉のアンサンブルが聴ける名盤。
とてもきれいで、美しいサン=サーンス:動物の謝肉祭が聴けます。
ただ、全体の面白みという意味では、少し弾(はじ)け方は足りないかも…。
サン=サーンス:動物の謝肉祭のような曲は、おどけすぎるくらいがいいような気もします。
とは言え、やっぱり、この名盤は、私達への耳のごちそうという感想。
極上に美味しい音楽のおもてなしを、ありがたく召し上がりましょうか。
Apple Musicで “紹介した名盤” が配信中
【解説と名盤、まとめ】サン=サーンス:《白鳥》動物の謝肉祭
さて、サン=サーンス:動物の謝肉祭の、名盤の紹介と、解説はいかがでしたか?
躍動し、たわむれて楽しむ動物たちの活躍する、サン=サーンス:動物の謝肉祭。
《白鳥》は有名であり、名曲であることは、誰もが知っていることですね。
でも、《白鳥》以外の曲も実は、「楽しい名曲」であることは、あまり知られていません。
外出自粛で、動物園には行けない!
それならせめて、音楽で動物園の世界に入り込むというのもアリですよ。
そんなわけで…
『ひとつの曲で、
たくさんな、楽しみが満喫できる。
それが、クラシック音楽の、醍醐味ですよね。』
今回は以上になります。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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