壮大で、スケールが大きい
チェコの第2の国歌ともいわれる《モルダウ》
川の流れのごとき音楽が、あなたを癒やしてくれる!
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チェコの独立への思い、夢、希望がつまった、スメタナ:わが祖国、その中でも、もっとも有名で、壮大な1曲《モルダウ》の感想を中心に解説です。
- 【楽曲を解説】スメタナ:交響詩《わが祖国》「モルダウ」
- 【各曲を解説】スメタナ:交響詩《わが祖国》「モルダウ」
- 【3枚の名盤を解説】スメタナ:交響詩《わが祖国》「モルダウ」
- 【解説と名盤、まとめ】スメタナ:《モルダウ》【わが祖国】
【楽曲を解説】スメタナ:交響詩《わが祖国》「モルダウ」
スメタナ:わが祖国の2曲目の、モルダウは親しみやすい旋律と壮大な川のイメージが浮かぶことから、日本でも有名な1曲です。
そのモルダウ川は、チェコ国内では、最も長い川として知られています。
曲としては、モルダウ川の上流の静かな流れから始まります。
つまり、フルートとクラリネットの、ゆるやかな、かけあいから始まります。
だんだんと下流へむけて流れていくにしたがって、川幅が大きく、ゆったりとしていくイメージは、さまざまな楽器が壮大に合流していく中で、表現されているという感想を持ちます。
川の流れるドラマを、音楽がつむぎながら、最後は豪華に盛り上がっていきます。
これは、作曲者スメタナの、祖国チェコの希望を思う気持ちが、表されていると言われています。
そんな、国の風土や、作曲者スメタナのエピソードを含む、こんな解説があります。
ボヘミアは、本当の意味での、独立の喜びを長い間味わうことができず、とくにドイツの支配で苦しんでいた。
それだけに、独立をのぞむ愛国的な精神をもった文化人が続々とボヘミアから輩出した。
スメタナもその一人であり、オペラでそういう思想を打ちだしたばかりでなく、管弦楽曲でもその方向をすすめた。
その代表的なものが「わが祖国」である。(中略)
この6曲は、スメタナの命日に開幕される『プラハの春』と呼ばれる音楽祭の初日 (5月12日)に、必ず毎年チェコ・フィルで演奏されている。
出典:門馬直美 著 「管弦楽・協奏曲名曲名盤100」P58より引用
オーストリア帝国の属領であったチェコは、スメタナの生きた19世紀には、独立への思いと機運が高まっていました。
スメタナは、音楽での影響を与えるという立場で、チェコの国民運動に参加します。
そして、その思いで、作曲された、スメタナ:交響詩《わが祖国》のなかの「モルダウ」。
この曲は、現在、チェコの第2の国歌とも言われるほど、親しまれています。
そして、日本人の私たちの記憶にも残る、素晴らしい1曲でもあるという感想を持ちます。
【各曲を解説】スメタナ:交響詩《わが祖国》「モルダウ」
それでは、各曲について解説したいと思います。
この曲は第1曲から第6曲までの6曲で成り立っています。
第1曲 ヴィシェフラト(高い城)
ボヘミア国王の城であったヴィシェフラド。
このヴィシェフラトとは、「高い城」という意味です。
チェコ国内での、伝統的な「カトリック」と「フス派」というキリスト教勢力との対立の中で、被害を被って朽ち果ててしまったヴィシェフラト城。
そんなヴィシェフラト城の栄枯盛衰を、ハープの音で、象徴される吟遊詩人が語るという内容の曲です。
第2曲 モルダウ
こちらは、冒頭で解説しました。
第3曲 シャールカ
恋人の不実に怒り、男たちへの復習を誓う、女戦士シャールカは、女性のみの部隊(アマゾネス)を編成。
シャールカは自分の体を木に縛りつけます。
そして、その美しさに惹かれ部隊長のツチラドは縄を解き、シャールカを救います。
ツチラドは、美しきシャールカに求愛し、それを受け入れるかに見せるシャールカ。
しかし、仕掛けておいた「酒」をツチラドと、その部隊の男たちに飲ませ、酔わせ、また眠らせます。
そして、時を見計らって、シャールカ率いるアマゾネス部隊が、出現、ツチラド以下、部隊の男たちを皆殺しに…。
そんな場面を、迫力のある音楽で描いています。
第4曲 ボヘミアの森と草原から
スメタナの故郷ボヘミアの深い森が描かれます。
空気のおいしい緑の豊かな森の中、さわやかな風が吹き、鳥たちはさえずる。
太陽の光は、茂った木々に、さえぎられながらも、優しく照らしてくる。
そんな情景が浮かびます。
第5曲 ターボル
チェコの民衆を、良心にもとづいた信仰に導いた宗教改革者、ヤン・フス。
教会権力に敢然と立ち向かい、聖書をチェコ語に翻訳、民衆に希望の未来を示します。しかし、その後、異端として、火刑に処され、命を落とします。
その後、信者たちは、立ち上がり、フス戦争を起こします。
そんなチェコの宗教的な歴史が描かれていきます。
ズシリと重い、同じメロディが、繰り返される中で、管楽器たちが彩りを添える形で、展開する1曲。
ひるむことなく、勇気をもって、改革運動を推し進めたチェコの偉人ヤン・フスと、その後の信者たちのイメージが、音楽になっています。
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第6曲 ブラニーク
フス戦争は、17年の長きに渡り展開します。
しかし、民衆が鎮圧されて終わりを迎えてしまいます。
しかし、ブラニーク山に眠る、破れし信者たちは、チェコが危機に直面した際には復活し、再び出陣し、栄光をもたらすと信じられています。
そんな、壮大なイメージを音楽に結実したもの。
ラストでは、スメタナ:交響詩《わが祖国》第1曲目のヴィシェフラト(高い城)のテーマが復活し、チェコの栄光を思わせるフィナーレを迎えます。
【3枚の名盤を解説】スメタナ:交響詩《わが祖国》「モルダウ」
ヴァーツラフ・ノイマン:指揮 チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
アルパカのおすすめ度★★★★☆
ノイマンとチェコフィルハーモニーの国を思う気持ちが、音楽に結実しました。
木管の温かい響き、「チェコ節」とも言える歌いまわしは、ノイマン独特のニュアンスの名盤。
チェコに旅したかったら、この名盤とともに、耳だけ拝借…。
きっと、チェコの緑豊かな、大自然がまぶたのうちに展開しますよ。
ラファエル・クーベリック:指揮 バイエルン放送交響楽団
アルパカのおすすめ度★★★★☆
安定感と重厚感のあるアンサンブルは、クーベリックとバイエルン放送交響楽団の特徴ですね。
スメタナ:交響詩《わが祖国》の構造を知り、しっかり構築されたバランスのいい安心の演奏で聴ける名盤。
力強く元気の出る名盤でもありますね。
スデニェック・コシュラー:指揮 チェコナショナル交響楽団
アルパカのおすすめ度★★★★☆
チェコゆかりの曲を聴くなら、1度は聴いておきたいコシュラーの名盤。
ノイマンやクーベリックよりは、抑揚をつけたスメタナ:交響詩《わが祖国》となっています。
押し付けがましい感じがなく聴けるのは、その音の持つ温かみのためなのだという感想を持ちます。
表現は、起伏に富んでいても、どこか奥ゆかしさを感じるのは、チェコを思う気持ちの表れとも言える名盤。
全体的に、自然な流れで進む音楽は、「これがチェコにおける心地いい自然の姿なのかな」と思わせてくれる。
そんな感想の名盤ですね。
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【解説と名盤、まとめ】スメタナ:《モルダウ》【わが祖国】
さて、スメタナ:交響詩《わが祖国》「モルダウ」の名盤の紹介と、解説はいかがでしたか?
豊かな自然と激動の歴史を持つチェコという国を音楽で散策。
そんな楽しみも味わえるスメタナ:交響詩《わが祖国》「モルダウ」。
忙しい毎日の中、せめて、音楽で、自然にふれるのも悪くないですよ〜。
そんなわけで…
『ひとつの曲で、
たくさんな、楽しみが満喫できる。
それが、クラシック音楽の、醍醐味ですよね。』
今回は以上になります。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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祖国を思う気持ちは万国共通ですね。