アルパカと聴く幸福なクラシック

クラシック音楽が大好きなアルパカが名盤を解説します。曲のなりたちや魅力、おすすめの聴き方もお伝えしますよ♫

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ラヴェル:ピアノ協奏曲【感想と解説|6枚の名盤】ムチの音、ピシャッ!「愉快で楽天的」なピアノ協奏曲!!

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めっちゃ楽しくてリズミカル!

ラヴェルの弾(はじ)けたジャズ的名曲!!

笑いとユーモアが欲しい時に聴きたい♫


ラヴェル: ピアノ協奏曲:第1楽章

【楽曲を解説】モーリス・ラヴェル:ピアノ協奏曲

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モーリス・ラヴェル:ピアノ協奏曲は、ラヴェル晩年における「原点回帰」であったことを知ることのできる、こんな解説があります。 

(初演をしたピアニストの)マルグリット・ロンは、この曲がバスク的な色彩の濃厚な音楽だと見ているが、バスク地方というのはラヴェルの出身地であり、長い遍歴の旅をへて、彼はとうとう音楽の上で生誕の地へ戻ってきたのだ(中略)

故郷に帰って、彼の心は武装を解いた。

顔からは仮面が外され、バスク人の素面が現われたのである。

楽想はバスク地方の祭りの若者達の心のように陽気で快活だ

バスク人達はこの陽性の協奏曲を聴く時、自分等自身を感じるのだそうだ。

出典:諸井誠 著 「ピアノ名曲名盤100」P192より引用

1931年に作曲された、モーリス・ラヴェル:ピアノ協奏曲は、ラヴェルが他界するまでに完成させた最後から2番目の音楽です。

この翌年にモーリス・ラヴェルは自動車事故に見舞われてしまいます。

そして、1933年、これがもととなって脳に障害をきたしてしまい帰らぬ人となってしまいました。

解説にありましたが、モーリス・ラヴェルは人生の最後を迎えるにあたって、故郷バスク地方の陽気で明るい曲調のピアノ協奏曲を作曲します。

これは解説にあったように、言わば「モーリス・ラヴェルの原点回帰であった」と言っていいのかもしれません

また、過去にモーリス・ラヴェルが、アメリカに足を運んだ際に聴いたジャスの影響があったとも言われています

たしかに、この独特の明るいテンポは、ジャスやまたジャズ以外のスペインのバスク地方の影響などがあったのかもしれませんね。 

【各楽章を解説】モーリス・ラヴェル:ピアノ協奏曲

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それでは、各楽章について解説したいと思います。

モーリス・ラヴェル:ピアノ協奏曲は第1楽章から第3楽章までの3曲で成り立っています。

第1楽章 アレグラメンテ(明るく楽しげに)

ピシャッ!

ムチの、はじける音が鳴り響いて始まる、なんとも独特なモーリス・ラヴェル:ピアノ協奏曲    第1楽章です。

せかせかと目まぐるしく、しかし、なんとも楽しげに展開するモーリス・ラヴェル:ピアノ協奏曲のジャズ的で「楽天的な明るさ」を象徴する第1楽章でもあります。

ピアノ協奏曲には、めずらしくピッコロの高い音や、ハープの優美な音が絡みながら展開していきます。

また、ピアノとトランペット、トロンボーンが絶妙に絡むのはアメリカ滞在中にモーリス・ラヴェルが感銘を受けたジャズの影響なのでしょう。

フランスの粋な趣味とアメリカのジャスの都会性が見事にマッチしています。

こんなウキウキとする高揚感は、フランス人モーリス・ラヴェルの「シャレの効いた遊びの美学」が結実したものと感じて、心を上向きにさせてくれる力がありますね。

ちなみに冒頭に鳴るムチの音ですが、本当のムチを使っているわけではなく、2枚の細長い板2枚の片側を、ちょうつがいでつなげたものです。

これを「ピシャ!!」と、いきおいよく閉じることによってムチのような効果音を鳴らす言わば「ムチのようなもの」なのです。

つまり「ムチ」そのものを鳴らして演奏するわけではないのですね。

念のための解説でした。

第2楽章 アダージョ・アッサイ(きわめてゆっくりと)

ラヴェルの優美な曲の中でも特に美しいメロディに満ちている素晴らしい1曲

この第2楽章の美しさが「弾けた魅力」のモーリス・ラヴェル:ピアノ協奏曲を、より深みのある曲へと昇華させているように感じるのは、たぶんアルパカだけではないと思います。

特徴的なのは、柔らかい弦楽器と木管楽器の響きと印象的なイングリッシュホルンの歌うメロディですね。

聴き終わった後にも、いつまでも記憶の中に、そよ風のように奏でられる第2楽章

日々の喧騒の中を過ごすうちに負った、傷ついた心を癒やすときにもジックリ聴きたい名曲ですね。

第3楽章 プレスト(きわめて速く)

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第2楽章の優美な曲とはガラッと変わって軽快に弾むようなリズムの1曲です。

さて、この第3楽章は《ゴジラ》のテーマ曲のヒントになっているのではないかと言われています。

たしかに《ゴジラ》のテーマ曲の「だだだ、だだだ、だだだだだだだ…♫」のリズムは確かにモーリス・ラヴェル:ピアノ協奏曲 第3楽章の中に聴こえますね。

この《ゴジラ》のテーマを作曲した伊福部昭は、大のラヴェルファンでした。

その好きさかげんは、なかなかのもので、書類を記載する際には自分の誕生日をいつわって、ラヴェルの誕生日を書き入れるほどだったと言われています。

そんな伊福部昭の《ゴジラ》のテーマは、伊福部昭のラヴェルへのリスペクト無くしては生まれ得なかったと言っていいでしょう。

まあ、曲の雰囲気は真逆ではありますけれども…。

つまり、モーリス・ラヴェル:ピアノ協奏曲は「軽快」であり、ゴジラのテーマは「重厚」なイメージですよね。

またジャズの要素は第1楽章に引き続いて再び現われます。

そんな意味でモーリス・ラヴェル:ピアノ協奏曲は全体的にはジャズ要素は特徴として表れていると感じますね。


ラヴェル: ピアノ協奏曲:第3楽章

(動画の27秒のあたりなどがゴジラのテーマっぽい雰囲気です。)

【6枚の名盤の感想と解説】モーリス・ラヴェル:ピアノ協奏曲

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マルタ・アルゲリッチ:ピアノ 
クラウディオ・アバド:指揮 
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

アルパカのおすすめ度★★★★★

【解説】

ダイナミックで絢爛豪華。

24歳の若きアルゲリッチの瑞々(みずみず)しいパッションが弾ける、ラヴェル:ピアノ協奏曲を聴く上での、ひとつの理想のカタチ。

第2楽章の優美さも、ここではアルゲリッチの女性性が発揮されて素晴らしい名盤

若きアバドのフレッシュさとベルリン・フィルハーモニー管弦楽団のサポートも素晴らしい。

アルゲリッチの「自由に舞うピアノと、それにやさしく風を送る管弦楽のコンビに脱帽という名盤」でもあります。

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サンソン・フランソワ:ピアノ 
アンドレ・クリュイタンス:指揮 
パリ音楽院管弦楽団
 

アルパカのおすすめ度★★★★☆

【解説】

ほどよくエスプリ(するどい知恵)の効いたフランス趣味が、かぐわしいという名盤

少しジャズ要素のあるラヴェル:ピアノ協奏曲は、ほとんど匂わない程度のほのかなタバコの香りがします。

クリュイタンスの演奏もどこか「おかしみ」をふくませていて、ラヴェル:ピアノ協奏曲をピアニストのフランソワと楽しんでいる光景が見えるようで楽しい名盤でもあります。

「ラヴェルにはやっぱりフランスの風味が必要よね」。

そんなあなたにピッタリの名盤です

エレーヌ・グリモー:ピアノ 
ヘスス・ロペス=コボス:指揮 
ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団

アルパカのおすすめ度★★★★★

【解説】

「どれだけ、遊び、おどけて、気まぐれ気分で楽しめるか」が、モーリス・ラヴェル:ピアノ協奏曲の第1楽章に、絶対的に欲しい要素ですね。

 無邪気でおてんば娘、グリモーがフィールドを走り回る!

グリモーが、弾けてて、遊び心満載の名盤!

また、指揮者もグリモーとたわむれ、じゃれてるさまが、楽しくてしょうがない名盤でもあります!!

そして、それに相対するような第2楽章は、繊細で、ロンティックなところがたまらない。

そして、第3楽章の、グリモーの、おてんばぶりも注目!

庭を駆けずりまわるグリモーちゃんを、必死に追いかけて、笑いが止まらない指揮者のロペス=コボス!

さあ、この追いかけっこは、いつまで続くの〜!!! 

う〜ん、楽しい名盤とは、この名盤のことを言うのかも…。

アルド・チッコリーニ:ピアノ 
ジャン・マルティノン:指揮 
パリ管弦楽団

アルパカのおすすめ度★★★★☆

【解説】

こんなに繊細で美しいラヴェル:ピアノ協奏曲は一度は聴いておきたい名盤です。

「弾けていて、元気系」といよりは、「キラキラきらめいた、癒やし系」のラヴェル:ピアノ協奏曲です。

そして、その本領発揮は、なんと言っても第2楽章ですね。

ピアノのチッコリーニの繊細なニュアンスと、その美感を絶妙で印象派的な淡いタッチでサポートするマルティノンとパリ管弦楽団。

これは、繊細な面での超絶名盤と言えそうです。

元気で明るい、モーリス・ラヴェル:ピアノ協奏曲を、楽しんだ後は、ゆったりと耳を遊ばせるためのモーリス・ラヴェル:ピアノ協奏曲も悪くないという名盤です。

モニク・アース:ピアノ 
ポール・バレー:指揮 
フランス国立管弦楽団

 

アルパカのおすすめ度★★★☆☆

【名盤の解説】

理性が効いていて情感に支配されることなく淡々と演奏いている感がある名盤

遊び心というよりは本来のモーリス・ラヴェルの音楽の持つ美感に注目している感がある。

そんな名盤です。

この演奏傾向は、第1楽章や、第3楽章の弾けた感は少ないかもしれません。

ただ、第2楽章での美感は存分に素晴らしいものとして表れているという名盤です。

表現が淡々としている分、余計なものが、そぎ落とされて本来のラヴェルの音楽の持つ癒やしと調和へと届いていて心地いい名盤ですね。

 

ゾルタン・コチシュ:ピアノ 
イヴァン・フィッシャー:指揮 
ブダペスト祝祭管弦楽団

 

アルパカのおすすめ度★★★★★

【名盤の解説】

「繊細なタッチの感性に優しく触れてくる」系のコチシュのピアノは、モーリス・ラヴェル:ピアノ協奏曲にもピッタリ。

第1楽章の「弾ける」というよりは「さわやか」第2楽章の「そよ風」というよりは「たおやか」第3楽章の「軽快」というよりは「あざやか」

そんなコチシュの個性があふれていながらラヴェル本来の美しいイメージが壊ることのない名盤です。

 

【解説と名盤、まとめ】モーリス・ラヴェル:ピアノ協奏曲

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さて、モーリス・ラヴェル:ピアノ協奏曲の名盤の紹介と、解説はいかがでしたか?

こんなに陽気で、愉快で、楽天的なピアノ協奏曲はそんなに多くはないのではないでしょうか?

楽しくて、明るくなれて、感性にも沁みてくる

こんなオシャレなセンスがキラキラしてるモーリス・ラヴェル:ピアノ協奏曲でも聴いて心を上昇気流にのせたいですね。

 

 そんなわけで…

 

『ひとつの曲で、

たくさんな、楽しみが満喫できる。

それが、クラシック音楽の、醍醐味ですよね。』

 

今回は以上になります。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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