マメールロワとは、マザーグースのこと
楽しい童話をラヴェルの音楽で…
管弦楽の魔術師ラヴェルの傑作!
「マ・メール・ロワ」とは、フランス人、シャルル・ペローが描いた童話の世界。
子供時代に立ち返って、音楽で遊ぶのも楽しいものです。
【楽曲の解説】ラヴェル:マ・メール・ロワ
管弦楽の色彩が豊かな、ラヴェル:マ・メール・ロワ。
ラヴェルが、子ども好きであったことの、エピソードを含む、こんな解説があります。
ラヴェルは、たいへん子ども好きな人であった。彼は、生涯を独身でとおしたが、彼がよく遊びに行った親友ゴデブスキーの家では、友人をほったらかしにして、ジャンとミミーというふたりの子どもと、何時間も遊んでいたという。
このジャンとミミーのために書かれたのが、原曲のピアノ連弾用の組曲(中略)ラヴェルが、どんなに子どもたちに、愛情をこめて、これらのおとぎ話の世界を、幻想的に、美しく描いているかが、よくわかるであろう。
出典:志鳥栄八郎 著 「不滅の名曲はこのCDで」P138より引用
解説にありますラヴェルが「子ども好き」ということは、ラヴェル自身が、子供のような純粋な心を持ち続けていたということかもしれませんね。
なぜならば、ラヴェルの作曲する音楽には、透明で、きれいなメロディや響きが、感じられるからです。
ジャンとミミー と遊びながら、体は大人でも、心は、子どもに戻っていたのだと思います。
【各曲の解説とあらすじ】ラヴェル:マ・メール・ロワ
ラヴェル:マ・メール・ロワは、はじめピアノ連弾用の曲として作曲されました。
その後、ピアノ連弾版を管弦楽版へと編曲、さらにそれを、バレエ版として作曲し、発展させています。
つまり、バレエ版には、間奏曲を挟み込んで、規模を大きくして、豪華にしたつくりにしています。
このラヴェル:マ・メール・ロワのバレエ版をもとに、各曲についての解説をしたいと思います。
前奏曲
静かな森の、朝のイメージでしょうか。
鳥たちのさえずりや、夜がしらじらと明けていく神秘感と、ラヴェルが得意とする管弦楽の美しい調べが全体を覆います。(間奏曲)
第1場 紡ぎ車の踊りと情景
老婆の姿で、紡ぎ車を回す魔女。
そこに、興味しんしんの王女がやってきますが、王女の手にスピンドルが刺さり、気を失ってしまいます。
そして、そのまま魔法がかかり、王女は、深く、そして、永い眠りに落ちていってしまいます。
これは、過去、予言されていたことでしたが、それが起こってしまったのです。
曲としては、妖精の姿と、紡ぎ車が回転するさまと、それから、ダンスのイメージですね。
第2場 眠れる森の美女のパヴァーヌ
「眠れる森の美女(王女)」のまわりで、踊る付き人たちのイメージです。
眠りからさめない王女を思い、寂しく物哀しいメロディで奏でられます。
この後、間奏が入ります。
まず、妖精ベニーニュが、王女のもとに、飛んで現れるさまが、描かれます。
そして、召使いのこどもに、言い聞かせます。
王女の永い眠りの間、さみしい王女の、せめてものなぐさめとして、お話をしてさしあげなさいと…。
そして、このあと、いくつかのお話しが始まっていくわけです。 (間奏曲)
第3場 美女と野獣の対話
魔女の魔法によって、姿を野獣に変えられてしまった王子が、こころ優しい姫と出会い対話することで、魔法が解けるさまが描かれます。
ずっしりと重低音のコントラバスーンで野獣が語り、それに、優しくおうじるように、クラリネットが姫の語りを表現します。
なんとも、こっけいで楽しい1曲に仕上がっていますよね。(間奏曲)
第4場 親指小僧
貧しい夫婦に育てられている親指小僧(一寸法師)は、口減らしために、山に捨てられる羽目に…。
しかし、親指小僧は、山に連れられていく途中に、目印として、パンくずを落としていきます。
捨てられたあと、これをたどれば、家へと帰れると思ってのことでした。
さて、パンくずを目当てに、家へ帰ろうとする親指小僧です。
ところが、なんと、そのパンくずを森の小鳥が、食べてしまっていて、さあ大変…。
そんな物語を音楽にしています。
ここで、間奏曲が入ります。(間奏曲)
第5場 パゴダの女王レドロネット
中国の陶器で出来た人形たちが歌い、また、楽器を奏で始めました。
くるみや、アーモンドの殻で出来た楽器を奏でてるよう…。
この小さな楽器を使って、人形たちは、楽しみます。
中国的な響きの、ノリがいい聴きやすい1曲ですね。
ここで間奏曲がはいります。(間奏曲)
終曲 妖精の園
深く、そして、永い眠りに落ちていた王女。
その噂を聞きつけた他国の王子が、王女のもとをおとずれます。
そして、王女が眠りに落ちてから、ちょうど100年たったその時、王女は眠りからさめます。
そして、王子と王女は結ばれ、妖精ベニーニュとともに、国をあげての祝福で、盛り上がります。
そして、この、ラヴェル:マ・メール・ロワの、音楽物語りは終わっていくのです。
【6枚の名盤を解説】ラヴェル:マ・メール・ロワ
ピエール・ブーレーズ:指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
アルパカのおすすめ度★★★★☆
一音一音がしっかり奏でられていて、童話世界の細部まで気持ちいい。
録音もキレイですのでおススメの名盤です。
全体としては、キレイにまとまりすぎている感が無くはないです。
でも、本来のラヴェル:マ・メール・ロワのつくりが、とてもよく整って、バランスがいいものだということが、よくわかる名盤です。
ピエール・モントゥー:指揮 ロンドン交響楽団
アルパカのおすすめ度★★★★★
なんとも繊細で、思いやりに満ちた名盤なことでしょう。
淡い、パステルカラー調 で彩られた、とても、肌触りのいい名盤とも言えそうですよね。
ピエール・モントゥーの美感と、それを申し分なく、発揮したロンドン交響楽団に、ただただ脱帽です。
100年後、生まれ変わっても、また聴きたい、ラヴェル:マ・メール・ロワの素晴らしい名盤です。
ラストの盛り上がり、「妖精の園」の美しさは絶品ですね。
アンドレ・クリュイタンス:指揮 パリ音楽院管弦楽団
アルパカのおすすめ度★★★★☆
華やかで力強い名盤。
「ラヴェルと言えばクリュイタンス」というくらいに、ラヴェルを得意にしていました。
この、ラヴェル:マ・メール・ロワに限って言えば、少し骨太に過ぎるかなという印象はあります。
ただ、なかなかどうして、色彩ゆたかな、ラヴェルの音世界を表現しきってる名盤です。
シャルル・デュトワ:指揮 モントリオール交響楽団
アルパカのおすすめ度★★★★★
ラヴェル:マ・メール・ロワの繊細さを気づかせてくれる名盤。
管弦楽曲を作曲する魔術師、ラヴェルと、管弦楽曲を演奏する魔術師、デュトワがタッグを組んだ素晴らしく華々しい名盤。
そして、その華々しさが決して、嫌みにならない趣味の良さもあるから舌を巻きます。
童話と音楽の気持ちいい魔術にかかって存分に楽しみたい名盤でもありますね。
エルネスト・アンセルメ:指揮 スイルロマンド管弦楽団
アルパカのおすすめ度★★★★☆
ズシリと重厚感のある名盤です。
輪郭をはっきり表現した、油絵的な、強い印象の残る名盤でもあります。
もちろんドタバタ劇の部分は、ワクワクしますし、感性をさわってくる部分も、なかなかにリリシズムがあるといいますか、詩情が伝わってきます。
一見(一聴?)骨太ですが、粗雑な感じは、ありません。
そんな元気を与えてくれる名盤です。
マルタ・アルゲリッチ:ピアノ
アルパカのおすすめ度★★★★☆
もともとは、ピアノ連弾用に作曲された、ラヴェル:マ・メール・ロワ。
このアルゲリッチの名盤は、なんと、「ピアノと打楽器」というコンビで展開する、ラヴェル:マ・メール・ロワです。
ピアノの繊細な響きと、打楽器の迫力をつくり出す効果が合わさって、心地いい名盤でもあります。
なるほど、ピアノ連弾もいいものですが、こんな発想もアリだなと思って感動できる。
そんな名盤です。
Apple Musicで “紹介した名盤” が配信中
【解説と名盤、まとめ】ラヴェル:マ・メール・ロワ
さて、ラヴェル:マ・メール・ロワの、名盤の紹介と、解説はいかがでしたか?
ラヴェルの特徴である優しくて、あたたかいメロディと、管弦楽の美しさが楽しめる童話の世界。
ラヴェル:マメールロワ。
本を読むには、忙しくて時間がない。
そんな時は、音楽を聴くことで、「童話の世界に、入り込んじゃう」っていう方法もアリですよ。
そんなわけで…
『ひとつの曲で、
たくさんな、楽しみが満喫できる。
それが、クラシック音楽の、醍醐味ですよね。』
今回は以上になります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。