アルパカと聴く幸福なクラシック

クラシック音楽が大好きなアルパカが名盤を解説。曲のなりたちや魅力、おすすめの聴き方を解説します。

モーリス・ラヴェル:ダフニスとクロエ【あらすじの解説と名盤5枚】

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牧歌的でおおらか…

深い青をたたえた広大な海…

ギリシャの国の「素朴な恋の物語」


ラヴェル::ダフニスとクロエ 第2組曲《夜明け》

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ギリシャ…

南国特有の、

  • 午後のあたたかさ
  • 光を放つ美しい海
  • ゆったりとした時の流れ

そんな風景が、ありありと想像できる《ダフニスとクロエ》の物語。

それを見事に音楽へと昇華したのが、音楽家モーリス・ラヴェルです。

 

今回はギリシャの「素朴な恋の物語」《ダフニスとクロエ》解説とおすすめ名盤を紹介です。

 

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【解説】モーリス・ラヴェル:ダフニスとクロエ

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モーリス・ラヴェル:ダフニスとクロエは、バレエ音楽として作曲されましたが、その完成までの経緯についての解説があります。

 

古代ギリシャのレスボス島を舞台とした、羊飼いダフニスと、可憐な少女クロエとの恋物語で、当時バレエ・リュッス(ロシア・バレエ団)を旗揚げしたばかりの興行師ディアギレフの依頼によって作曲された。

初演は、1912年に、

振り付けがフォーキン、

ダフニスが不世出のダンサー、ニジンスキー、

指揮がピエール・モントゥー

という豪華な顔触れで行われた。

出典:志鳥栄八郎 著 「不滅の名曲はこのCDで」P137より引用

 

まさしく「今をときめく…いえ、当時をときめくアーティストたち」が結集して生まれたモーリス・ラヴェル:ダフニスとクロエ。

名作にならないわけがないですよね…。

 

ただ、それぞれのアーティストの個性がぶつかり合いがあって、完成への実現が難しいこともあったようです。

それは、アーティストたちが《ダフニスとクロエ》で表現したい世界観の相違でした

つまり、その表現したかったものとは、

  • 「神話の世界」としてのギリシャ(音楽家のラヴェル)
  • 「力強い」ギリシャ(振付師のフォーキン)
  • 「派手で野蛮」なギリシャ(美術と衣装のバクスト)

という違いです。

 

また、興行師であり総監督であったディアギレフも不満をもっていました。

それが、

  • バレエが時間的に長くかかりすぎる
  • ドラマティックな要素に欠ける
  • フォーキンの振り付けには斬新さが足りない
  • ラヴェルの音楽は編成的にコストがかかりすぎる

などの不満でした。

また、ディアギレフは、同時期に《牧神の午後》というバレエ作品もプロデュースしていました。

そして、ディアギレフが、《牧神の午後》に重点を置いていたということがラヴェルをはじめとしたアーティストたちを怒らせたということもあったようです。

 

そんな「複雑な事情」と、「ディアギレフの懸念」がありながらも、《ダフニスとクロエ》の上演は行われました。

 

そして初演の際の批評は芳(かんば)しいものではありませんでした。

  • ギリシャ趣味の曖昧(あいまい)さ
  • 演出がみすぼらしい
  • ラヴェルの音楽が単調だ

などの手ひどいものでした。

けれども、1912年の初演から現在にいたるまで、バレエの演目として残っています。

また、モーリス・ラヴェル:ダフニスとクロエは、ラヴェルの全作品の中でも最高傑作と言われるほどの人気の高い名曲になっています。

 

【あらすじと楽曲を解説】モーリス・ラヴェル:ダフニスとクロエ

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それでは、モーリス・ラヴェル:ダフニスとクロエのあらすじと、楽曲そのものを解説します。 

モーリス・ラヴェル:ダフニスとクロエは、第1場から第3場までの構成になっています。 

 

第1場

序奏と宗教的な踊り

ギリシャのレスボス島の物語

あたたかい春の日の午後。

若い牧人(ヤギ飼いや羊飼い)たちは、牧場を目指します。

ギリシャの精霊ニンフに、捧げものを持っていくためです。

そして、供物を捧げた若者たちは、そこで、心おおらかに踊りを楽しみます。

その若者たちの中には、みなし子のダフニスと、同じくみなし子のクロエがいました。

 

ここでは、これから始まる、

  • おおらかで
  • 純粋で
  • 素朴な

《ダフニスとクロエ》のはじまりの曲である「序曲」が奏でられます。

そして、若者たちの踊るさまが、「ラヴェルの美しい音楽」と、「バレエ」によって描かれていきます。

宗教的な踊り

クロエをはじめ、女の子たちは、踊るダフニスの美しい姿を見て集まり、ダフニスを囲むように踊りを展開していきます。

全員の踊り

踊りは盛り上がり、全員が華々しく舞い始めます。

ドルコンのグロテスクな踊り

クロエに想いを寄せる牛飼いのドルコンは、ダフニスに挑戦をしかけます。

つまり、踊りで競って勝ったほうがクロエへの口づけが出来るという挑戦でした。

そして、ドルコンは我さきにと踊り始めますが、そのあまりにもグロテスクな踊りによって周りの若者たちから物笑いにされます。

ダフニスの優雅で軽やかな踊り

次にダフニスの番になり、踊り始めますがその「優雅で軽やか」な踊りが若者たちの目をひき、ダフニスの勝ちが決まったのでした。

お互い惹かれ合うダフニスとクロエは、大喜びで抱き合い口づけを交わします。

舞い上がるダフニスでしたが、クロエは若者たちに紛れてその場を去ります。

リュセイオンの踊り

さて、そこに熟年の女性リュセイオンが現れます。

ダフニスはてっきりクロエが踊っているものと勘違いしますが、それがリュセイオンと知って驚きます。

そして、このリュセイオンは1枚ヴェールを落としながら、ダフニスを誘惑するような踊りを展開します。

ダフニスはこのリュセイオンの行動(踊り)に対して、今までなかつた感情が揺れ動きました。

それを見たリュセイオンはダフニスを、からかうようなしぐさ(踊り)とともに去っていきます。

それと同時に突如、海賊の一団が攻め寄せてきます

クロエはニンフ(妖精)の祭壇にひざまづき救いをもとめますが、その行いもむなしくクロエは海賊にさらわれてしまうのでした。

ダフニスはクロエのサンダルの片方が落ちているのを見つけます。

クロエが海賊にさらわれたことを知り、ショックで気絶してしまいます。

夜想曲

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神秘的であり、そして「おごそかで、やわらかい光」が降りそそいできます

そこに「風の音」をともなって3人のニンフがやってます

3人のニンフは話し合いながら神秘的な踊りをはじめますが、その時、地に倒れているダフニスに気づきます。

3人のニンフはパーン神(しん)の姿に似た岩にダフニスを移動させます。

パーン神とは頭にヤギのような2本の角が生えていて下半身がはヤギのような姿をしたギリシャの神様です。

そして、岩の形をしたパーン神は、徐々にその姿を明らかにしていきます。

意識を取り戻したダフニスは、そのパーン神に対してひざまづき祈りを捧げるのでした。

間奏曲

遠くの方から静かな合唱が聴こえてきます。

これは、自然の持つ深い神秘感を表現しています。

そして、この合唱はその勢いを増して行きます。

第2場

戦いの踊り

ゴツゴツと荒々しい岩場に囲まれた海岸に海賊たちの乗るガレー船が停まり戦利品を下ろしています。

ここで海賊たちの踊りが始まります。

野性的でエネルギッシュな動きをともないます

そして、略奪に成功した海賊たちは宴を催します。

そこで、海賊の頭領ブリュアクシスは、連れてきたクロエに踊りを強要してきます。

クロエの哀願の踊り

クロエは踊りながら隙を見て逃げ出す機会をうかがいます。

そして、何回か脱出をこころみますが、うまく行かずに最後はブリュアクシスに強引に引き寄せられます。

そんなブリュアクシスに対して、クロエは「助けて欲しい」と哀願しますが聞き入れられませんでした。

と、その時、あたりに大きな影が落ちてきます。

気づくと、多くの精霊たちとともに、巨大なパーン神(しん)が姿を現したのです。

その姿に恐れをなした海賊たちは、ほうほうの体(てい)で逃げ出していったのでした。 

第3場

夜明け

夜がしらじらと、そしてゆっくりと明けていきます。

朝の訪れを告げる

  • 鳥の声
  • 羊飼いの笛の音
  • 夜明けそのものを表すメロディ

これらが歌い、からみあいます。

その様がラヴェル独特の「管弦楽の魔術」とも言える見事な音楽をともなって展開します。

そして、ダフニスとクロエは抱き合いながら再会を喜んだのでした。

無言劇

パーン神(しん)は、過去ニンフであるシリンクスに片思いで終わったことがあります。

そんなつらい経験も手伝ってクロエを助けようと決めたのでした。

そして、ダフニスとクロエは、そのパーン神のシリンクスへの片思いをパントマイム(無言劇)として表現するのでした。 

ちなみに、このパーン神と、ニンフであるシリンクスへの「叶わぬ恋物語」についてはコチラの記事をお読みいただけると嬉しいです。

全員の踊り

さて、クライマックを迎えるダフニスとクロエの物語です。

今まで展開したさまざまなメロディが再現されながら

  • やわらかい感性
  • 素朴な恋心
  • 荘厳な神話性

そんな要素を持った、《ダフニスとクロエ》の物語を回想しながら、まとめ上げられて感動的に幕をおろしていくのです♫

 

【第1組曲と第2組曲とは?】モーリス・ラヴェル:ダフニスとクロエ

さて、モーリス・ラヴェル《ダフニスとクロエ》は 、ラヴェル自身が、第1組曲と第2組曲としても発表しています。

これはバレエを伴わない通常の演奏会で使用するためのものです。

ただ、そうは言っても、バレエ版の《ダフニスとクロエ》の音楽を部分的に取り出したものであって、特に第1組曲、第2組曲用に編曲をほどこしているわけではありません。

内容としては、

第1組曲

第1組曲とは、バレエ曲の

  1. 第1場の《夜想曲》
  2. 第1場の《間奏曲》
  3. 第2場の《戦いの踊り》

の、以上3曲となります。

第2組曲

第2組曲とは、バレエ曲の第3場の

  1. 《夜明け》
  2. 《無言劇》
  3. 《全員の踊り》

の3曲になります。

この第1組曲と第2組曲は作曲者のラヴェルが選んだだけあって聴きやすく、また親しみやすい曲で構成されていますね。

そして、とく演奏される機会が多いのは第2組曲のほうです。 

 

【5枚の名盤の感想と解説】モーリス・ラヴェル:ダフニスとクロエ

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ピエール・モントゥー:指揮 ロンドン交響楽団

 

アルパカのおすすめ度★★★★☆

【名盤の解説】

冒頭の解説で、音楽評論家の志鳥栄八郎先生が書かれていましたが、モーリス・ラヴェル:ダフニスとクロエの初演はモントゥーが行っています。

そうなことで一度は聴いておきたい名盤のひとつですね。

モントゥーの繊細さや優しさは、この素朴な物語《ダフニスとクロエ》に似つかわしいですね。

古い録音のため、音質には問題がありますが、聴く価値はある名盤と言っていいと思います。

 

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シャルル・デュトワ:指揮 モントリオール交響楽団

 

アルパカのおすすめ度★★★★☆

【名盤の解説】

管弦楽のアンサンブルが絶妙で美しい名盤です。

録音も鮮明で聴きやすいですね。

管弦楽の、

  • 「作曲」の魔術師、ラヴェルと、
  • 「演奏」の魔術師、デュトワの、

2人が時代を超えてタッグを組んだ名盤とも言えます。

神秘的なモーリス・ラヴェル《ダフニスとクロエ》を魔術的に美しく仕上げた綺麗な展開の名盤です。

ピエール・ブーレーズ:指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

 

アルパカのおすすめ度★★★★☆

【名盤の解説】

緻密なアンサンブルと盛り上がりに独特なこだわりが感じられる名盤です。

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の精巧さはラヴェルには合わないというイメージはあります。

それでも、中々どうして知的さの中にも程よい遊びがあって飽きさせません

「感性や優美さ」に寄ったモーリス・ラヴェル:ダフニスとクロエの演奏は素晴らしいです。

でも、それに少し聴き飽きてきたらブーレーズ版《ダフニスとクロエ》の知的さは悪くない。

そんな名盤ですね。

アンドレ・クリュイタンス:指揮 パリ音楽院管弦楽団

 

アルパカのおすすめ度★★★★☆

【名盤の解説】

優美さの中にひそむ豪華さ、華美に流れすぎないセンスの良さは、さすがは「フランス音楽の重鎮であるクリュイタンス」ですね。

録音が古くなろうとも、いくら時を経ても、その輝きを失わない不滅の名盤とも言えそうです。

モーリス・ラヴェル:ダフニスとクロエに、「フランス感」を優先したいならクリュイタンスはオススメの名盤ですね。

 

ジャン・マルティノン:指揮 パリ管弦楽団

 

アルパカのおすすめ度★★★★☆

【名盤の解説】

「フランス感」と言われて忘れてはならない、もうひとり指揮者はマルティノンですね。

クリュイタンスのような、骨太な音作りというよりは「繊細さが強く表れた」フランス的な名盤です。

「クリュイタンスのフランス感」と「マルティノンのフランス感」の違いを聴き比べても面白いですね。

モーリス・ラヴェル:ダフニスとクロエの世界観、南国のあたたかく優しい風を音楽で楽しめますね。 

  

【解説と名盤、まとめ】モーリス・ラヴェル:ダフニスとクロエ

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さて、モーリス・ラヴェル《ダフニスとクロエ》の解説とおすすめ名盤はいかがでしたか?

  • 牧歌的で
  • おおらか
  • 素朴な恋の物語

ふだん、中々そんな感性で生きていくことは難しいことですね。

ただ、「そんな感性は、大切なもの」でもあると思います。

 

さあ、ほんの30分ちょっとの間、モーリス・ラヴェル:ダフニスとクロエの、ギリシャの素朴な世界に心、遊ばせてみませんか?

 

 

 そんなわけで…

 

『ひとつの曲で、

たくさんな、楽しみが満喫できる。

それが、クラシック音楽の、醍醐味ですよね。』

 

今回は、以上になります。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

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今回紹介したパーン神のシリンクスへの片思いの物語 

ラヴェルの超有名曲!! 

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