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ベートーヴェン:ピアノソナタ第26番《告別》【解説と名盤3選】さよならが生んだ名作の軌跡!

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別れと創作

隠された思い

発露する名曲♫

ベートーヴェン:ピアノソナタ第26番《告別》

ナポレオン戦争時のウィーンの混乱、愛弟子との別れが創作の契機につながります。今回は、ベートーヴェンピアノソナタ第26番《告別》解説とおすすめ名盤を紹介!

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【解説】ベートーヴェン:ピアノソナタ第26番《告別》

いわばベートーヴェンの《別れの曲》である。 ルドルフとルートヴィヒ、二人のルーの別れは、1809年、フランス軍のウィーン包囲によって余儀なくされた。 ルドルフは音楽を熱愛する大公であり、ルートヴィヒを師としてその意のままになる音楽家でもあった。ルートヴィヒもまた、愛弟子であり、パトロンでもあるこの若い大公を心から愛していた。5月4日、ホルン信号が鳴って、大公を乗せた馬車は、見送るベートーヴェン達を後にして未練気に去って行った。

出典:諸井誠 著 「ピアノ名曲名盤100」P58より引用

解説にありますが、作曲の弟子でありパトロンでもあった、18歳年下のルドルフとの別れの時がやってきます。1809年、ナポレオン軍がウィーンへと迫る4月にルドルフ大公はじめ王侯貴族らは戦禍を逃れるべくウィーンを離れることになります。

翌年、1810年にルドルフがウィーンに戻ってくるわけですが、この間に作曲されたのがピアノソナタ第26番《告別》です。自筆譜に書き込まれた言葉があります。

告別  1809年5月4日ウィーン

敬愛する皇帝陛下、大公ルドルフの出発に際して

第1楽章に《告別(Das Lebewohl)》と書き入れたことで《告別》と呼ばれるようになりました。ベートーヴェン自身が曲の名付け親になったのは珍しいケースです。ピアノソナタに限っていうと、ベートーヴェン自身が副題をつけたのは《告別》以外には《悲愴》(ピアノソナタ第8番)しかありません

ちなみに第2楽章には「不在(Die Abwesenheit)」第3楽章には「再会(Das Wiedersehen)」と書いています。ベートーヴェンが弟子であるルドルフに寄せていた愛情のほどがうかがえます。ルドルフ大公はベートーヴェンにとって重要なパトロンであり、唯一の公式な作曲弟子でもありました。

ルドルフは1808年にベートーヴェンに年金を支給する契約の支持者としても知られています。ナポレオン戦争中でもベートーヴェンへの支援を続け深い信頼関係を築きます。ベートーヴェンの想いはルドルフ大公に献呈した作品の多さに表れています

楽譜を出版の際、ベートーヴェンの書き入れた言葉は出版社によってフランス語に訳されていました。もともとドイツ語で書いていたベートーヴェンは出版社に抗議します。フランス語とドイツ語では言葉の持つニュアンスが違っていたからです。

フランス語の「les adieux」は複数形であり、数人に投げかける意味合いの言葉だという主張でした。しかし、ドイツ語の告別「Das Lebewohl」は大切に思う人に対して心をこめていう言葉だったからです。音楽に対してはもちろん、言葉に対しても敏感であったことがうかがえるエピソードです。

【ルドルフ大公に献呈された代表的な曲】

  • ピアノ協奏曲第4番
  • ピアノ協奏曲第5番《皇帝》
  • ピアノ三重奏曲 第7番 《大 公》
  • ピアノソナタ第29番《ハンマークラヴィーア》
  • ミサ・ソレムニス

 

【各楽章を解説】ベートーヴェン:ピアノソナタ第26番《告別》

第1楽章《告別》 アダージョ|アレグロ(ゆっくりと|速く)

《告別》と《別れ》のどちらかで副題を迷った形跡があります。別れという「日常」の要素の濃い表現ではなく、日常から離れた「厳か」な雰囲気を含んだ副題を選んだということでしょうか

始まりは静かに重々しく始まりますが、しみじみとした旋律が消え入りそうな瞬間に力強い表現に変貌して高らかに歌います。再会の時を思って希望を託すような明るさを伴って展開する楽章です。

 

第2楽章《不在》 アンダンテ・エスプレッシーヴォ(歩く速さで、表情豊かに)

心を覆う不安な感情が静寂を紡ぎ出します。ベートーヴェンの深い部分から、感情があふれ出て流れる優美なメロディが印象的です。慈しみ満ちる優しさと繊細な心が表れているようです

戦争への恐れと愛弟子の「不在」で安否を気づかい揺れ動く心情が、そのまま第2楽章に昇華したようにも思います。

 

第3楽章《再会》 ヴィヴァッチーシマメンテ(大いに活き活きと)

第2楽章から打って変わっての情熱が発露する第3楽章は、活動的で前向きなベートーヴェンの気持ちが伝わってくるようです。

「再会」の喜びや安心の思いが紡ぐ音楽で台風一過とでもいえる、通り過ぎた風の後に晴れ渡る大空がどこまでも青く澄んでいくような最終楽章です。

 

【名盤3選の感想と解説】ベートーヴェン:ピアノソナタ第26番《告別》

 

ヴィルヘルム・バックハウス ピアノ 

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アルパカのおすすめ度★★★★★

【名盤の解説】

堅固なタッチから響き渡る《告別》は、別れの時でも内心で強くある心の表れのように聴こえます。ベートーヴェンのピアノソナタのひとつの理想的なカタチともいえるバックハウスのピアニズム。温かみのある第1楽章ではバックハウスの力強さが向こう見ずな印象になることはありません

第2楽章の「孤高」といえるほどに透明度を増していくさみしさと哀しみが胸のあたりの温度を下げていきます。ひるがえって第3楽章での情熱の高まりはバックハウスの技巧が冴え渡って息を呑む思いです。重厚さの中に適度に詩情を織りなした名盤です。

 

アルフレッド・ブレンデル:ピアノ

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アルパカのおすすめ度★★★★★

【名盤の解説】

バックハウスとは打って変わって優美な印象の名盤です。ひとつひとつの音の珠(たま)がきらめいていて、ベートーヴェンの持つメロディの美しさを再認識させてくれます。第1楽章での哀しみの感情も情熱的に歌うピアノもどこか淡々とした中に深い味わいを醸し出しています。ベートーヴェンの内面世界に耳をかたむけて聴こえた音をそのままにピアノをタッチして紡いだブレンデルのベートーヴェン世界。

寂しさと静寂、希望と喜びが交差しながら過剰に感情を高ぶらせることなく弾きこなしていくブレンデルのピアノは何度聴いても新たな美感の発見があります

 

ルドルフ・ブッフビンダー ピアノ

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アルパカのおすすめ度★★★☆☆

【名盤の解説】

起伏に富んだ表現で劇的な《告別》が聴ける名盤です。技術的な精密さと情感の表現のバランスの良さが際立っています。

第1楽章では力強さを、第2楽章では感情の揺れ動きを、第3楽章ではスピード感を強調しながら、全体としての変化が多い名演。ベートーヴェンを活き活きと表現しながら、新たな側面を掘り起こした名盤です。

 

【まとめ】ベートーヴェン:ピアノソナタ第26番《告別》

ベートーヴェンピアノソナタ第26番《告別》の解説とおすすめ名盤はいかがでしたか?

別れと創作

隠された思い

発露する名曲♫

ベートーヴェン自身が曲の名付け親になったのは珍しく、それだけ多い入れも強かったことでしょう。そんな名曲ベートーヴェンピアノソナタ第26番《告別》。

じっくり聴くとベートーヴェンの当時の思いが伝わってきます

 

 そんなわけで…

 

『ひとつの曲で、

 

たくさんな楽しみが満喫できる。

 

それが、クラシック音楽の醍醐味ですよね』

 

今回は、以上になります。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

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