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ベートーヴェン:ピアノソナタ第29番《ハンマークラヴィーア》【解説と名盤3選】ただ、空前絶後!

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その完成

後世の絶望…

創造性、発露す!

ベートーヴェン:ピアノソナタ第29番《ハンマークラヴィーア》

ピアノソナタ、究極の革新《ハンマークラヴィーア》。技術的な難易度の高さとピアノ音楽の可能性を大きく切り開いた名曲です。この記事では《ハンマークラヴィーア》作曲の背景と特徴をお伝えします

ピアノソナタ全体としてみても魅力的な、ベートーヴェンピアノソナタ第29番《ハンマークラヴィーア》名盤も紹介。

【ここをクリックすると名盤の解説へ飛びます】

【解説】ベートーヴェンピアノソナタ第29番《ハンマークラヴィーア》

長い、ながーいソナタである。第3楽章=アダージョ だけで充分1曲分。(中略)ベートーヴェン最晩年の1818年の作であるから、その難解さからいって、作曲者の生前に理解されたものではない。私見によれば、ワーグナーやブルックナーの長大な楽劇や交響曲が本当に理解されるようになったのと同様に、《ハンマークラヴィア》と仇名されたこの曲がコンサートの曲目にのぼるようになったのは、今世紀(20世紀)に入ってからのことである。

出典:諸井誠 著 「ピアノ名曲名盤100」P60より引用

「ハンマークラヴィーアのための大ソナタ」と記すように…

ベートーヴェンはピアノソナタ第28番以降の作品に対しての呼称をシュタイナー社(楽譜の出版社)に要求していました。現在では、ピアノソナタ第29番のみが「ハンマークラヴィーア」と呼ばれています。しかし、あえてピアノ・ソナタ第29番が副題として定着したことは、ある意味で納得です。

ベートーヴェンのピアノソナタ全曲といわず古今東西のピアノソナタの中でも傑作中の傑作だからです。後世の作曲者たちにとっては大きな壁であり、演奏するに際しては難関であり大事業です。当時のピアニストは技術水準が追いつかずに弾くことができませんでした。しかし、ベートーヴェンは語っています。

50年経てば人も弾く…

作曲時に出会ったフォルテピアノも大きく影響しました。第1楽章から第3楽章をウィーンの伝統的なシュトライヒャー製、第4楽章をイギリスの現代のピアノに近いブロードウッド製のフォルテピアノを使って作曲しています。当時のいわば最先端技術が結集したフォルテピアノが産婆の役割を担いつつ、ピアノソナタの傑作は産声をあげたわけです

ちなみに「ハンマークラヴィーア」とは「フォルテピアノ」のドイツ語です。ベートーヴェンはある時期から発想表示などをドイツで記していました。「フォルテピアノ」をあえて「ハンマークラヴィーア」と表現したことを含め、ドイツという国への敬意の表れだったかもしれません。

ピアノソナタ第29番《ハンマークラヴィーア》について弟子への手紙の中で「自己最大の作品」と書き送ってもいます。

 

【各楽章を解説】ベートーヴェンピアノソナタ第29番《ハンマークラヴィーア》

第1楽章 アレグロ

前向きで明るい始まりは、革新的なピアノソナタらしく豪華な姿をもって立ち現れます。対比的に柔らかなメロディを歌う場面が展開したかと思うと再び冒頭の豪華なモチーフが表れて聴き手を魅了します。

豊かな起伏を何度も繰り返しながら自由自在に展開し、劇的なシナリオを紡いで最大限の高まりへと登り詰めながら終わりを迎えます

 

第2楽章 アッサイ・ヴィヴァーチェ

よく弾みテンポ良く舞い上がるようです。一瞬、雲が覆うように暗い基調へと転調しますが最後は雲が取り払われて冒頭のテンポが戻り、ある瞬間この短い第2楽章がふっつりと断ち切れます

 

第3楽章 アダージョ・ソステヌート

第2楽章が絶たれたあとの、この空虚感は演奏者によっては20分近くの時間を使ってピアノを歌わせる巨大なアダージョ楽章です。ベートーヴェンの伝記を記したヴィルヘルム・フォン・レンツは「全世界のすべての苦悩の霊廟」と表現。

神韻縹渺(しんいんひょうびょう)たる…とはこのこと。打ちひしがれて現れる孤独なベートーヴェンの心情を思います。自身の聴力の衰えから、とばりが降りるように消えてゆく音とそこから生まれる心の闇。

深い沈黙に比例するように湧き出てくる旋律のインスピレーションに、息を飲む思いです。多くのピアニストを苦しめもする《ハンマークラヴィーア》という曲のひとつの関門…。

 

第4楽章 ラルゴ|アレグロ・リゾルート

第3楽章を引き継ぎながら闇から、ジワリジワリと光へと飛翔する最終楽章のコントラストが印象的です。あまりにも壮大で感動的な三声のフーガです。第1楽章から第3楽章まで語られてきた物語が空を舞うような巨大な螺旋を描くような広がりをみせます

全ての空虚や孤独、闇を振り払って膨らんでゆく嵐のような楽章で激しい。しかし神々しい神殿を築き上げていくごとき荘厳な様相を呈しながら、拡大していく感動的な最終楽章です。

 

【名盤3選の感想と解説】ベートーヴェンピアノソナタ第29番《ハンマークラヴィーア》

 

エミール・ギレリス:ピアノ

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アルパカのおすすめ度★★★★★

【名盤の解説】

ひとつの理想形ともいえる、鋭敏で盤石なタッチが作り出すベートーヴェンに圧倒される名盤です。重厚な面持ちで展開しますが第2楽章では明朗、第3楽章の静寂と沈黙の美は詩的な歌に満ちています。

最終楽章では、せきを切ったようにあふれ出て止まない地に足のついた力強いフーガが天を目指して飛翔します。堂々として格調高いドイツ的要素と磨き抜かれた音の美感が楽しめる名盤です。

 

ヴィルヘルム・バックハウス:ピアノ

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【名盤の解説】

力強く楷書的。あいまいさのカケラすらも感じさせない男性性とでもいいましょうか。第1楽章は極彩色に広がる感覚で鮮やかな広がりに息を呑み、第2楽章では弾みます。第3楽章では嘆きで形作られた音世界を展開しますが、第4楽章ではその静寂の世界を容赦なく打ち破っていくパワーを感じます。

聴き終わると、いい意味でのため息が漏れるほどの大いなる音楽からの開放を感じます。優れた技巧と情熱が破壊力を伴って迫ってくる名盤です。

 

マウリツィオ・ポリーニ:ピアノ

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【名盤の解説】

冴えわたる感性がさわやかにハジけた名盤で、超絶技巧に裏付けられたキレのある音が心地良い。バックハウスの力強さとは違った繊細さを加味したメロディアスな魅力を感じます。

力強さがあるものの叙情的な歌心と知性をバランス良くブレンドしながら痛快に弾きこなします。実に爽快で聴きごたえのあるきらびやかな名盤です。

 

【まとめ】ベートーヴェンピアノソナタ第29番《ハンマークラヴィーア》

ベートーヴェンピアノソナタ第29番《ハンマークラヴィーア》の解説とおすすめ名盤はいかがでしたか?

  • その完成
  • 後世の絶望…
  • 創造性、発露す!

《ハンマークラヴィーア》は、ベートーヴェンが作曲したことで、ピアノソナタにおける大きな革新を遂げました。その後のピアノソナタの可能性を大きく開いた曲。しかし、言い方を変えるとその後の作曲家の大きな壁としてはだかったことも事実です。

ピアノソナタにとっての大きな起点となった《ハンマークラヴィーア》について書いてきました。いつかたっぷりとした時間をとって聴き入りたいものですね

 

 そんなわけで…

 

『ひとつの曲で、

 

たくさんな楽しみが満喫できる。

 

それが、クラシック音楽の醍醐味ですよね』

 

今回は、以上になります。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

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