アルパカと聴く幸福なクラシック

クラシック音楽が大好きなアルパカが名盤を解説します。曲のなりたちや魅力、おすすめの聴き方もお伝えしますよ♫

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ブラームス:ドイツ・レクイエム【解説と名盤5選】重厚に、そして高らかに鳴る鎮魂

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恩師の遺志か

母の死か

突き動かされる心

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作曲の動機はさまざま…

最愛の母の死はやはり大きかったのでしょうか…。

今回は、ブラームスドイツ・レクイエム解説とおすすめ名盤を紹介です。

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【解説】ブラームス:ドイツ・レクイエム

《ドイツ・レクイエム》は、ラテン語の典礼文ではなく、ドイツ語の歌詞を用いている。(中略)なぜブラームスが、ラテン語ではなくドイツ語で「レクイエム」を作ろうとしたかは諸説ある。1856年夏のシューマンの死が、この作曲の動機のひとつとなった説。そのシューマンが、ドイツ語のレクイエムの作曲計画を持っていたことを知ったブラームスが、その遺志を引きついだ説。ブラームスの老母の死と強く関係しているという説。

出典:國土潤一 著 「声楽曲名曲名盤100」P194より引用

解説にありますが、ブラームスがドイツ・レクイエムの構想を練り始めたのは1856年に恩師であるシューマンが亡くなったことがありますシューマンが生前ドイツ語でレクイエムを作曲しようと考えていたこともそして、1865年に最愛の母が亡くなったことも理由のひとつと考えられています。

母を亡くした後に、書いている途中だったドイツ・レクイエムの作曲の筆が急に進み始めます。特に「母の死」が、ドイツ・レクイエムの完成する大きなきっかけであったことは想像に難くありません。

1867年12月1日にウィーン楽友協会において作曲途中ではありましたが、第1曲から第3曲の試演がヨハン・ヘルベックの指揮で行われましたが不評を買います

これにめげずに作曲を続けたブラームスは1868年4月10日にブレーメンにおいて第5曲以外の全曲をブラームス自身の指揮で演奏を行ない評価は良好でした。この後も何度かの試演が行われて1869年2月18日にカール・ライネッケ指揮、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団によって全曲初演が行われて成功をおさめました。

普通、レクイエムはひとりの故人に向けて作曲されますがドイツ・レクイエムは広く一般に向けて作曲されたことから珍しい部類に入るといえます。

 

全曲初演:1869年2月18日

指揮:カール・ライネッケ

ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団

編成:

弦5部、ピッコロ×2、フルート×2、オーボエ×2、クラリネット×2、ファゴット×2、コントラファゴット×1、ホルン×4、トランペット×2、トロンボーン×3、チューバ×1、ティンパニ×3、ハープ×1or2、(オルガン)、混声4部、ソプラノ独唱、バリトン独唱

 

【歌詞を解説】ブラームス:ドイツ・レクイエム

第1曲 幸いなるかな、悲しみとともにあるひとよ

Selig sind, die da Leid tragen,

悲しみとともにある人は、幸いなるかな

denn sie sollen getröstet werden.

彼らは、慰められるのだから…

《マタイ福音書 5章4節》

 

Die mit Tränen säen,

涙して種をまく人は

werden mit Freuden ernten.

喜びとともに刈りいれることでしょう

Sie gehen hin und weinen

彼らは行きて、涙する

und tragen edlen Samen,

気高き種を負い

und kommen mit Freuden

そして、喜びとともに来たり

und bringen ihre Garben.

実りの束を持ち帰ります

《詩篇 126章5〜6節》

 

第2曲 人はみな草のごとく

Denn alles Fleisch es ist wie Gras

人はみな草のごとく

und alle Herrlichkeit des Menschen

人の誉れはすべて

wie des Grases Blumen.

草花のごとし

Das Gras ist verdorret

草は枯れ

und die Blume abgefallen.

花は落つ

《第1ペテロ書簡 1章24節》

 

So seid nun geduldig, lieben Brüder,

ゆえに、今はこらえなさい、愛する兄弟たちよ

bis auf die Zukunft des Herrn.

主の来たれるその時は近づいている

Siehe ein Ackermann wartet

見なさい、農夫が待っているのを

auf die köstliche Frucht der Erde

尊き大地の豊かさを

und ist geduldig darüber,

また、こらえていつかその上に、

bis er empfahe den Morgenregen und Abendregen.

朝の雨と、夕べの雨を得られるまで

《ヤコブ書簡 5章7節》

 

Aber des Herrn Wort bleibet in Ewigkeit.

されど主の言葉は残る、とこしえに

《第1ペテロ書簡 1章25節》

 

Die Erlöseten des Herrn werden wieder kommen

主の救いに預かりし人々は、再び戻れり

und gen Zion kommen mit Jauchzen;

シオンへと、喜びいさむ声とともに来たらん

ewige Freude wird über ihrem Haupte sein;

とこしえの喜びを、こうべ(頭)にいただきて

Freude und Wonne werden sie ergreifen

喜びいさんでつかみとり

und Schmerz und Seufzen wird weg müssen.

そして、悩み苦しみと、なげきとは消え去らん

《イザヤ書 35章10節》

 

第3曲 主よ、知らしめたまえ

Herr, lehre doch mich,

主よ、知らしめたまえ

daß ein Ende mit mir haben muß,

われに終わりのときがおとずれること

und mein Leben ein Ziel hat,

わが命に限りあることを

und ich davon muß.

いずれ、この世を去らねばならぬことを

Siehe, meine Tage sind einer Hand breit vor dir,

見よ、わが日常は手のひらの幅に過ぎぬ、あなたの前では

und mein Leben ist wie nichts vor dir.

そして、わが命は無であることと同じ、あなたの前では

Ach, wie gar nichts sind alle Menschen,

おお、なにゆえ空しいか、全ての人は、

die doch so sicher leben.

本当に生きておりながら

Sie gehen daher wie ein Schemen,

うつろうこと、まるで影のよう

und machen ihnen viel vergebliche Unruhe;

そして、うつろに思いわずらう

sie sammeln und wissen nicht,

かれらは、集めて積み上げても知ることがない

wer es kriegen wird.

誰がそれを手に入れるのかを

Nun Herr, wes soll ich mich trösten?

されば主よ、われは何をよりどころとすれば…

Ich hoffe auf dich.

われは待ち望む、あなたを

《詩篇 39章4〜7節》

 

Der Gerechten Seelen sind in Gottes Hand

正しい人の魂は、神の手のうちにあります

und keine Qual rühret sie an.

そして、どのような思い悩みも触ることがありません

《知恵の書 3章1節》

 

第4曲 万軍の主よ!あなたのいますところは

Wie lieblich sind deine Wohnungen,

なんと慈しみ深きことでしょう、あなたのいますところは

Herr Zebaoth !

万軍の主よ!

Meine Seele verlanget und sehnet sich

心の底から、わたしの魂は求め慕います

nach den Vorhöfen des Herrn;

主の庭園を

mein Leib und Seele freuen sich

わたしの身と魂は、喜びに打ち震えます

in dem lebendigen Gott.

神の、み前にあって

Wohl denen, die in deinem Hause wohnen,

幸いなるかな、あなたの家に憩うひと

die loben dich immerdar.

あなたをいかなる時にも、ことほぐひと

《詩篇 84章1、2、4節》

 

第5曲 あなた方は今、悲しみの中にあり

Ihr habt nun Traurigkeit;

あなた方は今、悲しみの中にあり

aber ich will euch wieder sehen

されど、私はあなた方に相まみえましょう

und euer Herz soll sich freuen,

そのとき、あなた方は、心、喜び

und eure Freude soll niemand von euch nehmen.

その喜びを何ものも奪うことは叶いません

《ヨハネ福音書 16章22節》

 

Ich will euch trösten,

あなた方を慰めましょう、

wie einen seine Mutter tröstet.

母が、その子を慰めるように。

《イザヤ書 66章13節》

 

Sehet mich an:

私を見なさい

Ich habe eine kleine Zeit

私は、つかのまの

Mühe und Arbeit gehabt

骨折りと苦しみとで

und habe großen Trost funden.

大いなる慰めを得られました

《ベンシラの知恵 51章35節》

 

第6曲 われらここにとこしえの地なく

Denn wir haben hie keine bleibende Statt,

われら、ここにとこしえの地なく

sondern die zukünftige suchen wir.

来るべき都を求める

《ヘブライ書簡 13章14節》

 

Siehe, ich sage euch ein Geheimnis:

見なさい、あなたたちに神秘を伝えよう

Wir werden nicht alle entschlafen,

私たちは全てが眠るわけではない

wir werden aber alle verwandelt werden;

されど、私たちは全てを変えることができる

《第1コリントス書簡 15章51節》

 

und dasselbige plötzlich, in einem Augenblick,

不意に、またたく間に

zu der Zeit der letzten Posaune.

終わりのラッパの時に

Denn es wird die Posaune schallen,

つまり、ラッパが鳴り響き

und die Toten werden auferstehen unverweslich

死者は朽ちることなくよみがえる

und wir werden verwandelt werden.

私たちは変えられる

《第1コリントス書簡 15章52節》

 

Dann wird erfüllet werden das Wort, das geschrieben steht:

しかして、書かれた言葉はその通りになる

Der Tod ist verschlungen in den Sieg.

「死は、勝利のうちに呑みこまれる」

Tod, wo ist dein Stachel?

死よ、あなたのトゲはどこにあるというのだ

Hölle, wo ist dein Sieg?

地獄よ、あなたの勝利はどこにあるというのだ?

《第1コリントス書簡 15章54、55節》

 

Herr, du bist würdig

主よ、あなたこそふさわしい方

zu nehmen Preis und Ehre und Kraft,

賛美と、ことほぎの力を授かるにふさわしい

denn du hast alle Dinge erschaffen,

なぜなら、あなたは万物を創ったのであり

und durch deinen Willen haben sie das Wesen

そして、あなたの心ひとつにより、それらはあり…

und sind geschaffen.

そして、創られたのですから

《ヨハネ黙示録 4章11節》

 

第7曲 幸いなるかな、主のうちにありて死ぬるひと

Selig sind die Toten,

幸いなるかな、死者のうち

die in dem Herrn sterben, von nun an.

主のうちにありて死ぬるひと、今よりのち

Ja, der Geist spricht,

「そうである」と精霊は語ります

daß sie ruhen von ihrer Arbeit;

かれらは苦しみより、ほどかれる

denn ihre Werke folgen ihnen nach.

かれらの成したことは後に従うのだから

《ヨハネ黙示録 14章13節》

 

【名盤3選の感想と解説】ブラームス:ドイツ・レクイエム 

 

オットー・クレンペラー:指揮 フィルハーモニア管弦楽団 

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アルパカのおすすめ度★★★★★

【名盤の解説】

あくまでも厳格に、しっかりとテンポを保ちながら展開する名盤です。ソプラノにシュヴァルツコップ、バリトンにフィッシャーディースカウを迎えた完璧さ。まさしく堅牢な城壁に囲まれ天を摩するがごとき聖堂の威容。言い方を変えれば近づきがたさもあるとも感じます。フィッシャー=ディースカウもあまりに完璧なだけに、どことなくほんの少しの冷たさを感じるのは意地悪な見方かも…。

全体の合唱の整い方、美しさも昔から名盤のほまれ高いアルバムだけはあります。1961年のかなり古い録音ではありますが、聴きやすい音質になってはいますのでこの点でもおすすめの1枚です。

ヘルベルト・フォン・カラヤン:指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 

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アルパカのおすすめ度★★★★★

【名盤の解説】

カラヤン指揮のドイツ・レクイエムは録音が5種(1947年、1957年、1964年、1976年、1983年)と映像での記録もいくつか残っています。今回紹介する1964年の録音はベルリン・フィルハーモニー管弦楽団のもので重い印象がありドイツ・レクイエムにはむしろ合っているかもしれません。

1976年もベルリン・フィルハーモニー管弦楽団ですが、1960年代の頃には独特な厚みをともなっている面で良いかもしれません。壮麗な音楽作りをするカラヤンですがこの64年盤はほどよい落ち着きがあるところも魅力です。さすがはヤノヴィッツと言える声の美しさとヴェヒターの誠実さに惹かれます。クレンペラーの録音でもそうでしたが録音された年代にしてはいい音質で聴けるのもうれしい名盤です。

ダニエル・バレンボイム:指揮 シカゴ交響楽団 

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アルパカのおすすめ度★★★★☆

【名盤の解説】

シカゴ交響楽団のうまさを引き出すことに成功したバレンボイムの名盤です。現代的なセンスが光る明快さがありますがドイツ的というには少し遠いかもしれません。とても朗らかな響きも魅力で伝統的な名盤が少し飽きたかな…といった頃に聴くと新鮮です。

ソプラノのウイリアムスとバリトンのハンプソンも往年の名歌手には及ばないものの合唱団の壮大さにも支えられていい結果を招き寄せています。バレンボイムの総合力がよく発揮された名盤とも言えそうです。

フィリップ・ヘレヴェッヘ:指揮 シャンゼリゼ管弦楽団

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アルパカのおすすめ度★★★★☆

【名盤の解説】

落ち着いた古楽器の演奏で聴くのもなかなかいいものです。ドイツ・レクイエムというとスケールの大きい構想を見事に実現した壮大な曲です。しかし元のテキストになっているのは聖書なわけですし、こんな素朴な印象のドイツ・レクイエムがあってもいいはず。

ヘレヴェッヘの古楽器を鳴らすことに長けた指揮者のもとでソリスト、合唱、管弦楽のそれぞれが譲り合ってお互いがお互いの良さを引き出そうとしている感覚があります。大編成で声楽と管弦楽が感動的に主張する本来のドイツ・レクイエムももちろん魅力。しかしこんな慎み深い名盤もいいものです。

ミシェル・コルボ:指揮 デンマーク放送交響楽団&合唱団 

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アルパカのおすすめ度★★★☆☆

【名盤の解説】

注目度の低さから★を3つにしましたが「レクイエム」を「鎮魂曲」と訳した場合にはこれほどしっくり来る演奏はありません。コルボはフォーレやモーツァルトのレクイエムなどにおいても素晴らしい名盤を残しています。そのライン上で捉えたドイツ・レクイエムといったところです。

ドイツ的な重厚感は望めませんが、ヘレヴェッヘの「慎みの美徳」をさらに突き詰めるとコルボのドイツ・レクイエムになります。「合唱」の可能性を追求したコルボがドイツらしい重厚感から開放されて、とても「神秘的なブラームスへと昇華」させています。

ドイツ・レクイエムの名盤が多すぎて胃もたれしてしまっていませんか?およそドイツ・レクイエムらしくない静謐(せいひつ)さと隠れ家のような落ち着いたドイツ・レクイエムでひと休み…おすすめです。

 

【まとめ】ブラームス:ドイツ・レクイエム

ブラームスドイツ・レクイエムの解説とおすすめ名盤はいかがでしたか?

恩師の遺志か

母の死か

突き動かされる心

 

作曲の直接の動機はわからないものの、いくつかの動機が重なってブラームスの心を動かしたというところが本当だったのかもしれません。そんなブラームスの当時の心の内がのぞけるような壮大なドイツ・レクイエム。

3大レクイエム(モーツァルト、ヴェルディ、フォーレ)に入ることはできませんでしたが、ブラームスの曲の中でもクラシック音楽全体の中でも名曲といえます。ブラームスの心情を想像しながらじっくり聴くと沁みてくるレクイエムですね。

 

 

 そんなわけで…

 

『ひとつの曲で、

 

たくさんな、楽しみが満喫できる。

 

それが、クラシック音楽の、醍醐味ですよね。』

 

今回は、以上になります。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

 

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