泣きたい夜に
そっと寄りそって
共感してくれる癒やしの名曲
夜の静寂(しじま)の孤独の中で、ふと、寂しさを感じた時に、効(聴)いてくる…。
じんわり心が満たされて、あけた窓から差す「月の光の透明感」に感動できる。
そんな心が、取り戻せるから…。
- 【楽曲を解説】ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ
- 【ピアノについて】【ドビュッシーとの比較】ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ
- 【3枚の名盤を解説】ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ
- 【アルパカの体験】ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ
- 【解説と名盤、まとめ】ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ
【楽曲を解説】ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ
もともとはピアノ曲の「ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ」です。
その後ラヴェル自身の手によって、管弦楽版に編曲されました。
そして、ラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」に対する謙虚な姿勢がうかがえるこんな解説があります。
ラヴェル自身によれば、不完全な作品でシャブリエからの影響をあまりにもはっきり示しすぎているとのことだった。
しかし、才気にあふれた繊細なピアニズムと若い女性の心をとらえるような題名などで、このピアノ曲は大へんに評判がよかった。
(中略)1910年に小編成(管弦楽)に編曲して発表してからは、この曲の愛好者は一段とふえたのだった。
出典:門馬直美 著 「管弦楽・協奏曲名曲名盤100」p160より引用
題名の「亡き王女」とは、実際に、「王女が亡くなった」という意味ではありません。
フランス語で「亡き王女」つまり「infante(インファンテ) défunte(デファンテ)」という響きが「韻を踏んでいていい」。
そんな理由から付けたタイトルでした。
いかにも、音楽家らしい、そして、フランス人のラヴェルらしいシャレの効いたタイトルの付け方でいいですよね。
それに加えて、「亡き王女のためのパヴァーヌ」というタイトルそのものも、豊かなイメージが湧いてきます。
ちなみにパヴァーヌとは、16世紀ころからヨーロッパの宮廷で普及していた舞踏で、男女による、非常にゆったりとした動きのものを言います。
さらに、ラヴェルが、「亡き王女のためのパヴァーヌ」を作曲する際に、インスピレーションを受けた絵画があります。
それが、ルーヴル美術館で見た「ディエゴ・ベラスケス」作の「スペインの王女、マルガリータ」の子供の頃を描いたものです。
これは、1つの説ではありますが、イマジネーションが豊かなラヴェルのことですから、本当のことのように感じますよね。
【ピアノについて】【ドビュッシーとの比較】ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ
ラヴェルのピアノ曲は、その対象とする「物や心の風景」がありありと実感できるという感覚があります。
ラヴェルと比較される作曲家として、クロード・ドビュッシー(ピアノ曲「月の光」などが有名)がいます。
ドビュッシーは、もう少し、「物や心の風景」の描き方が、聴くもののイメージの湧き出ることを手伝う「印象を大事にする曲づくり」をしているように感じます。
2人の作曲する曲は、雰囲気が似ていますが、あえて、絵画にたとえると、わかりやすいかもしれません。
つまり、微妙な違いではありますが、どちらかというとラヴェルが、「写実派的」そして、ドビュッシーが「印象派的」という違いに感じます。
「ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ」という曲においてもそうですね。
つまり、「人の、心のうちにある優しさや、そうであるがゆえの、傷つきやすい悲しさ」が見えてきて感動を与えてくれる曲に仕上がっていると思います。
それが「ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ」なのですね。
【3枚の名盤を解説】ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ
それでは、名盤の解説に入りましょう♫
アンドレ・クリュイタンス:指揮 パリ音楽院管弦楽団
アルパカおすすめ度★★★★★
冒頭のホルンの音は、心のうちに「悲しみ」を秘めながらも凛(りん)とした佇(たたず)まいを思わせます。
それに続いて歌われるオーボエをはじめとした木管楽器たちが、なんともつややか。
しかも、語り口のなんとも、ゆったりとした、癒やしの名盤なことでしょう。
キラキラと透徹(透き通って、にごりがない)した、聴く人の心の柔らかい部分に届く名盤です。
ジャン・マルティノン:指揮 パリ管弦楽団
アルパカおすすめ度★★★★☆
あとくちスッキリのさわやか系の名盤です。
ラヴェルの持つ本来の、「シャイなオシャレ感や、静けさ」が満ちています。
また、ラヴェルの音楽の「涼やかな目元の紳士」を思わせる礼儀正しさのある名盤ですね。
サンソン・フランソワ:ピアノ
アルパカおすすめ度★★★☆☆
ピアノ版の「ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ」です。
少し突き放した感のある演奏ですが、シャープで、端正な名盤。
「カッコいい」ラヴェルを、ピアノで堪能したいなら、いい名盤です。
ラヴェルをはじめ、ショパンやドビュッシーというオシャレ感のある曲を、好んで演奏したフランソワ。
「ラヴェルは俺に任せろ」的な自信がうかがえる名盤とも言えそうです。
モニク・アース:ピアノ
アルパカおすすめ度★★★★★
深くて静かな月の夜。
敬虔な修道女が、目を閉じてお祈りしてる。
そのピアノの音は、遠いお空の、静かな国に通じてる。
まるで「光」のその音と、手を組み祈るその声がそのままこの名盤にギュッと詰まってます。
なんとも余韻の残る名盤です。
Apple Musicで “紹介した名盤” が配信中
【アルパカの体験】ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ
高校を卒業して間もなくのころ、喫茶店でアルバイトをしていたことがあるアルパカ。
お客様の注文を聞き違えて怒られたり、さらに、食べ終わった食事とともに、お水の入ったコップまで下げてしまったりして…。
また、テーブルに何も無くなったお客様が、そそくさと会計を済ませて出ていってしまいました。
もちろん、その後、マスターに怒られて、しょんぼり。
似たようなミスは、ほぼ毎日続き、ストーンと落ち込むアルパカなのでした。
「あ〜、もうダメだ〜。辞めよう。」
心のなかでそんな言葉を繰り返す日々が続きます。
そんなある日、ふと耳に入ってきたのが、喫茶店の有線放送から流れる「ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ」でした。
その時は曲名がわかりませんでしたが、なんとも言えず、癒やされて、どこか物悲しいのに、心に染み入ってくる。
そんな不思議な魅力を感じたものでした。
その曲を聴きながらトレンチ(鉄製の丸いおぼん)を片手に立ち尽くし、まるで、曲の流れている間だけ、時間が止まったような感覚でした。
【解説と名盤、まとめ】ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ
「ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ」の名盤解説はいかがでしたか?
晩年、ラヴェルは、交通事故の影響による記憶障害におちいります。
その際、どこからともなく聴こえてくる「ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ」に触れて、
「この素晴らしい曲は誰の曲だ?」
と、感銘の言葉を口にします。
ラヴェル自身では、評価の低かったはずの「ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ」。
心にわだかまりや、ひっかかりも無く、素直な気持ちで聴いた時、ラヴェルは自分の曲の本当の素晴らしさに、初めて気づけたのかもしれませんね。
そんなわけで…
『ひとつの曲で、
たくさんな、楽しみが満喫できる。
それが、クラシック音楽の、醍醐味ですよね。』
今回は以上になります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。