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ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱」【2枚の名盤を解説|感想】苦悩の壁を打ち破り歓喜の世界にいたろうよ!

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苦悩からの解放を目指す時のイメージトレーニングにも最適!歓喜に胸、踊らせよう!!


ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱」 - 第4楽章(歓喜の歌)

 

【楽曲を解説】ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱」

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ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱」の有名な歌はドイツの詩人シラーの「歓喜に寄す」という詩が使われています。

そのことについて、こんな解説があります。

 終楽章に使われている歌詞は、ドイツの大詩人シラーの「歓喜に寄す」であるが、この詩が”愛と平和と喜び”をテーマとし、ヒューマニズムと人類愛をたたえたものであることを忘れてはならない。ベートーヴェンは、この詩が発表されたころ、まだ十代の終わりだったが、この詩の思想に深く共鳴し、この詩に曲をつけようと固く心に誓った。その宿題を果たしたのは、実に40年後の1824年(54歳)のことである。死は3年後に迫っていた 。

出典:志鳥栄八郎 著 「不滅の名曲はこのCDで」p41より引用

 このシラーの詩「歓喜に寄す」の冒頭の訳を引用します。

ああ友よ、
そんな調べではだめなのだ!
声を合わせて、もっと楽しくうたおうではないか、
もっとよろこびにあふれる調べで!
(以上は、ベートーヴェン自身の付け足し)

よろこび、それは神から発する美しい火花。
楽園の遣(つか)わす美しい娘。
わたしたちは熱い感動の思いに突き動かされて、
気高いよろこびよ、おまえの国へ歩み入る!
お前は世のしきたりがつめたく引き裂いたものを、
不思議な力でふたたびとけ合わせる。
お前のやさしい翼に懐(いだ)かれると、すべてのものは同胞(はらから)となる。

訳:喜多尾道冬

なんとも高貴な精神を謳(うた)っています。

解説にありますが、この詩に曲をつけようと決心し、それが実現するまでにベートーヴェンは、実に40年の歳月を重ねています。

その間、多くの名曲を生み出しつつ、構想を暖めつづけたところが、ベートーヴェンの偉大なところですね。

ベートーベンは、交響曲第9番「合唱」の初演(作曲後初めて演奏されること)の際、難聴の障害により、ほとんど耳が聴こえず、別の指揮者が音楽を進行していたそうです。

その間は、ベートーヴェンはその指揮者の横にいながら、リズムをとる役をしていたそうです。

そして演奏は終わり、大喝采と大きな拍手がわき起こります。
しかし、ほとんど耳が聞こえないベートーヴェンは、その拍手が聞こえず、「演奏は失敗であったのか」とうなだれます。

しかし、女性歌手がベートーヴェンに近寄り、手を取って聴衆の方を振り向かせます。
そこで初めて、拍手喝采を送る大声援の聴衆を見ることができたとの記録が残っているようですね。

そして、聴衆の要望で、部分的にではありますが、2度のアンコール演奏も行なったようです。

その後、3度目のアンコールを行おうとしたようですが、兵隊に止められてしまったとのことです。

このエピソードから、当時の聴衆がどれほど熱狂したかが伝わってきます。

また、ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱」にはこんな逸話もあります。
1970年代、CD(コンパクトディスク)の開発の際の世界的な規格統一の問題でメーカーどうしで揉めたそうです。

つまり、現在の直径12センチ(75分)にするか、11.5センチ(60分)にするかで揉めていたそうです。

この時、判断の決め手になったのは、当時のCBS・ソニーレコード株式会社社長、大賀典雄氏の

「CDが12センチ(最大75分)でないとベートーヴェン:交響曲第9番「合唱」が1枚で入りきらない。」

というひとことで決まったそうで、なんとも驚くべきエピソードですね。

(また、最大75分なら、クラシック音楽の95%以上の曲が1枚で入るという意見も反映されました。)

 

【各楽章を解説】ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱」

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それでは、さまざまなエピソードに富んだベートーヴェン:交響曲第9番「合唱」の各楽章についての解説をしたいと思います。

この曲は第1楽章から第4楽章までの4曲で成り立っています。

 

第1楽章「アレグロ・マ・ノン・トロッポ・ウンポコ・マエストーソ(速く、しかしあまり速すぎないように、やや威厳をもって)」

ホルンと弦楽器の静かなささやきから始まります。

そのささやきは、徐々に大きな声にと変わりながら、「苦悩」と「激動」のテーマが展開していきます。

「難聴」という障害を抱えながら、音楽を生み出す使命を持って生まれたベートーヴェン。

その苦悩の人生の劇的な独白とも取れる響き。

これはやはり有名なベートーヴェン「交響曲第5番『運命』」に通ずるテーマでもありますね。

ただ「交響曲第5番『運命』」が突然、現れた「苦悩」だとするならば、ベートーヴェン「交響曲第9番『合唱』」の「苦悩」は継続する「苦悩」とも言えそうです。

淡々と、しかし深く、ベートーヴェンの心に襲いかかる「苦悩」とその格闘。
そんな1曲に聴こえます。

 

第2楽章「モルト・ヴィヴァーチェ(とても速く)」

「苦悩」に立ち向かう際における、ある面、勇者としてのベートーヴェンの雄々(おお)しき姿。

勇気りんりん、力強く、また元気の出る1曲です。

 

第3楽章「アダージョ・モルト・エ・カンタービレ(落ちついてゆっくりと、歌うように)」

第1楽章と第2楽章とは打って変わって、瞑想的で、静かな心の声に耳を傾けるような、1曲ですね。

「戦士の休息」とも取れそうな、傷つき、打ちひしがれた疲れた精神を安らぎの世界へと誘います。

まるで、女神が寄り添って、戦士の傷を癒やしているようにも感じられます。

 

第4楽章「プレスト(きわめて速く)ーレチタティーヴォ(話すような独唱)・アレグロ・アッサイ(非常に速く)」

シラーの詩「歓喜に寄す」が高らかに、荘厳に、そして、勇ましく、生きとし生けるものに対する讃歌が歌われます。

「苦悩」と「激動」から始まった闘いのドラマは、深い闇を打ち破り、最大級の「歓喜」への飛翔を果たす。

まさしくこのベートーヴェン:交響曲第9番「合唱」の聴かせどころ、クライマックスですね。

 

【2枚の名盤を解説】ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱」

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ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱」には数多くの名盤が存在します。

これらの演奏を聴く際、ベートーヴェンが、楽譜に書き込んだ、「苦悩」や、「激動」の心情。それを超えて、歓喜にいたる過程をどのように表現するかが、大切になってきそうですね。

そして、基本的には大きな2つの表現方法があるように思います。

①それを上から眺め、冷静に楽譜を読み込み、そして、透徹(とうてつー透き通り、澄んでいること)した目で見て、表現するか。

②あるいは、深く共感をし、寄りそい、慈愛の思いを暖かさをもって表現するか。

このあたりになるかもしれません。

 

ヘルベルト・フォン・カラヤン:指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

上記の①のタイプ、つまり冷静に楽譜を読みこんで、音楽作りをしたタイプです。

その音楽は疾風が吹き抜けるがごとく演奏で、洗練され、磨き抜かれた美感に貫かれていますね。

言わば、「超カッコいい、ベートーヴェン:交響曲第9番『合唱』」というところです。

また、先ほど、CDの規格のことを書きました。

つまり、12センチのCDでないとベートーヴェン:交響曲第9番「合唱」が1枚で入り切らないと言う意見です。

実は、この意見の元は、指揮者、カラヤンだったという説もあります。

どういうことかと言いますと、このカラヤンの主張をソニーの大賀典雄氏が聞き取り、橋渡し的に開発者たちに伝えたということですね。

(鶴の一声とはこのことでしょうか。クラシック音楽界ではカラヤンは「帝王」と呼ばれていましたので、当然といえば当然ですが…。)

ともあれ、カラヤンは生涯でベートーヴェン:交響曲第9番「合唱」を5回も録音しているとのことですので、その思い入れも相当なものですよね。

(ジャケットは80年代録音のものです。)

 

ブルーノ・ワルター:指揮 コロンビア交響楽団

上記の②のタイプです。
つまり、音楽に、深く共感をし、寄りそい、慈愛の思いと暖かさをもって表現しています。

この指揮者のブルーノ・ワルターは、ユダヤ人(旧約聖書を信じる人)であったことからナチスに国を追われ、アメリカに亡命して音楽活動を行なったわけですが、ベートーヴェンの味わった「苦悩」に対して、少なからず「共感」していたのはほぼ間違い無いと思います。

取り乱すこと無く、ゆったりと落ちついていたテンポで、ベートーヴェンがその音楽で語りたかった心情を、余すところなく語り尽くしていると思います。

アルパカにとっては定番とも言える名盤です♬

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【なぜ、年末に各地で演奏されるのか?】ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱」

最後にベートーヴェン:交響曲第9番「合唱」にまつわるエピソードをもうひとつ。

1940年代の後半、日本では、戦後ということもあって、オーケストラの収入がなかなか得られない時代でした。

その楽団員や、合唱団に所属する人たちは、その年を超す収入も確保出来ずに苦労していました。

そこで、人気の高いベートーヴェン:交響曲第9番「合唱」を年末に演奏することを恒例にすることによって、楽団員や、また合唱団も収入が期待できて、年末年始を過ごしやすくなる。

そんな思惑があって、年末には日本の各地で、ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱」が演奏されることになったのですね。

このことによって、楽団員や合唱団の方たちは、年を重ねるごとに、おせち料理やお雑煮が、だんだんと食卓にのぼっていったことが想像できます。

いろいろな意味で、このベートーヴェン:交響曲第9番「合唱」は『歓喜』なのですよね〜♬

 

【解説と名盤、まとめ】ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱」

さて、ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱」、名盤の紹介と解説はいかがでしたか?

さまざまな「イイ話」を紹介してきました。

でも、ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱」が、たくさんの「イイ話」が生まれるくらいの名曲であるという言い方も、できるのではないでしょうか。

年末にベートーヴェン:交響曲第9番「合唱」を聴くなんてもう古い…かもしれません。

でも、こんな「先が見えない不安な時代」だからこそ、古くて、新しい価値を含んでいるとも言えるベートーヴェン:交響曲第9番「合唱」を聴くのも、中々いいものではないかなと思うのです。

 

 そんなわけで…

 

『ひとつの曲で、

たくさんな、楽しみが満喫できる。

それが、クラシック音楽の、醍醐味ですよね。』

 

今回は以上になります。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

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