花咲く弦楽四重奏曲!
青春!情感!華々しい!
3曲そろって素晴らしい名曲群!!
No. 7 in F Major, Op. 59, No. 1 "Rasumovsky" - 1. Allegro
光り輝く傑作!
ベートーヴェンの「ラズモフスキー」とはベートーヴェンの弦楽四重奏曲の第7番〜第9番の3曲の総称です。
今回はそのラズモフスキーの解説とおすすめ名盤を紹介です。
- 【全曲解説】ベートーヴェン:ラズモフスキー1番〜3番
- 【解説】ベートーヴェン:ラズモフスキー1番(弦楽四重奏曲第7番)
- 【解説】ベートーヴェン:ラズモフスキー2番(弦楽四重奏曲第8番)
- 【解説】ベートーヴェン:ラズモフスキー3番(弦楽四重奏曲第9番)
- 【5種の名盤の感想と解説】ベートーヴェン:ラズモフスキー1番〜3番
- 【解説と名盤、まとめ】ベートーヴェン:ラズモフスキー1番〜3番
【全曲解説】ベートーヴェン:ラズモフスキー1番〜3番
有名なエピソードを含む、こんな解説があります。
オーストリア大使としてウィーンに駐在していたロシアの貴族ラズモフスキー伯爵の抱えていた弦楽四重奏団(中略)のために書かれたもので、この三曲が「ラズモフスキー」と呼ばれているのはそのためである。
これらの曲は、ベートーヴェンが36歳の時(1806年)に作曲したもので、いずれの曲も、初期のころの作品と比べて格段の進歩を示し、独自のスタイルをもった傑作となっている。
出典:志鳥栄八郎 著 「不滅の名曲はこのCDで」P251より引用
ベートーベンの有名な言葉があります。
「精神がわたしに語りかけている時、あなたの哀れなヴァイオリンのことなど考えていられると思うか?」
この言葉はベートーヴェンの作曲したラズモフスキーに対して「演奏するには、難しすぎる」と訴えた当時のヴァイオリニスト、シュパンツィヒに向けて語ったものです。
そして、解説にあったラズモフスキー伯爵の抱えていた弦楽四重奏団のリーダーであったのが、そのシュパンツィヒでした。
そんなエピソードがあるくらい高度に仕上がった弦楽四重奏曲なわけですが、その上、メロディもこの上なく美しいのが特徴です。
古今東西の弦楽四重奏曲の中でも若々しくフレッシュな魅力も備えたベートーヴェン:ラズモフスキーは、演奏される機会も多い名曲ですね。
今回は、ラズモフスキー3曲を順を追って解説していきます。
【解説】ベートーヴェン:ラズモフスキー1番(弦楽四重奏曲第7番)
「青春四重奏曲」そんなイメージのベートーヴェン:ラズモフスキー1番(弦楽四重奏曲第7番)です。
第1楽章 アレグロ(速く)
様々な感情が入り乱れながらも喜びや希望を失わない。
そして、人が成長していくにつれて「子どもでもなければ大人でもない」そんなとき
- 自由と責任
- 感情の開放と抑制
- 理想と現実
これらのはざまで、心は揺れ動きながらもやっぱり輝いてるのが「青春」。
アルパカが、その複雑でありながら輝いてるイメージを感じる曲がベートーヴェン:ラズモフスキー1番なのです。
第2楽章 アレグロ・ヴィヴァーチェ・エ・センプレ・スケルツァンド(常におどけて)
なんと明るさと、こっけいさが入り混じった楽しいメロディなことでしょう!
ベートーヴェン:ラズモフスキーシリーズの「青春の楽しさや嬉しさ」がギュッとつまった楽章ですね。
「『青春』ってこんな曲のような気持ちのが持続してる状態を言う」のではないかと思ってしまいます。
そんな「嬉しい気持ちがいっぱい」の1曲です。
第3楽章 アダージョ・モルト・エ・メスト(きわめてゆるやかで、悲しげに)
「青春」の時にある、この悲しみは一体どんな場面でしょう。
- 親しい人との永遠の別れ?
- 失った恋の悲しみや片思い?
- 感情をゆさぶられる「怒り」のうらにある悲しみ…?
繊細な「青春」のときには様々な心の小さなさざなみにも感じやすいもの…。
そんな人生の純粋な一時期の感性を歌っているようですね。
第4楽章 テーマ・ルス:アレグロ(ロシア風主題:速く)
心が春のようなあたたかい光に満たされたようなさわやかな1曲です。
感情の回復が早いのも「青春」の特権…。
ほがらかに、楽天的に「青春」を謳歌する、うれしく楽しい一幕が描かれている。
そんな印象のベートーヴェン:ラズモフスキー1番のフィナーレです。
【解説】ベートーヴェン:ラズモフスキー2番(弦楽四重奏曲第8番)
「情感四重奏曲」
ベートーヴェン:ラズモフスキーの3曲の中では、そんなイメージの曲です。
唯一「短調の曲」であって、とくに「暗い情感」のこもった深みのある1曲となっています。
刺激的でパンチの強い、ベートーヴェン:ラズモフスキー1番や3番と比べますと地味な立ち位置にいますが、いつまでも心の奥底では記憶に残ります。
なぜなら、ベートーヴェン:ラズモフスキーのなかでも、「内省的で、聴いた後に香り高い印象が残る1曲」とも言えるからです。
第1楽章 アレグロ(速く)
「ジャン、ジャン♫」
という、激しく始まりながら、その後の展開はとても緊迫した刺激的な内容になっています。
ベートーヴェン:ラズモフスキー2番の「悲劇的な情感」がもっとも濃く表れている楽章でもあり、惹きつけるものを感じます。
まさしくベートーヴェン:ラズモフスキー2番における聴かせどころ満載の「始まりの楽章」です。
第2楽章 モルト・アダージョ(きわめてゆっくりと:深い感情を持って)
ベートーヴェン:ラズモフスキー全3曲の中でも、もっとも「憂いの情感」のこもった名曲です。
ゆっくりとした音楽の流れとともに、その「憂いの情感」が含まれているという特徴があり、とても深い内省の気持ちを思い起こさせてくれる曲でもあります。
冬の時期に「しとしとと降る冷たい雨」の印象もありますね。
第3楽章 アレグレット(やや速く)
冒頭は少し速めに走り抜けていく「小さな悲しみ」という印象です。
途中、明るめの曲調にもなりながら曲は進んでいきます。
だんだんと「暗い情感」からは離れはじめている印象ですが、天気で言うと少し雲がかかっている感じとも言えそうな1曲です。
第4楽章 プレスト(きわめて速く)
第1楽章〜第3楽章の憂うつな傾向のある雰囲気から開放された明るい1曲です。
テンポも速く、かろやかな足どりは、ベートーヴェン:ラズモフスキー2番のフィナーレを印象的にしている一因にもなっています。
つまり、この起伏に富んだ展開のドラマティックさが魅力となっているのですね。
【解説】ベートーヴェン:ラズモフスキー3番(弦楽四重奏曲第9番)
「華やか四重奏曲」というイメージですね。
ベートーヴェン:ラズモフスキーの最後を飾る3曲目は、最後にふさわしく「ハッピーエンド」な展開です。
まるでこのベートーヴェン:ラズモフスキーシリーズそのものが3楽章形式の壮大な音楽であり、ドラマであったとの感想を持つにいたります。
第1楽章 序奏:アンダンテ・コン・モート:アレグロ・ヴィヴァーチェ(歩くような速さで動きをつけて:快活に速く)
「堂々とした明るい系四重奏曲」の象徴とも言える開放的で力強い1曲です。
なんとも明るく前向きで、恐れひとつない明るさに満ちています。
グイグイとまた小気味良い元気になれる1曲でもあります。
第2楽章 アンダンテ・コン・モート・クアジ・アレグレット(歩くような速さで動きをつけて:やや速く)
第1楽章とは打って変わって暗くて重厚な1曲となっています。
ベートーヴェン:ラズモフスキー3番の全体を引き締めている、ある意味重要な楽章ですね。
重荷を背負っていく旅人のイメージを感じたりもします。
しかし、着実な確かな一歩一歩を耐えながら進んでいるようです。
第3楽章 メヌエット:グラツィオーソ(踊るように:優雅に)
歯切れのよい展開であり、第2楽章の暗くて重いイメージからは完全に離れています。
「舞曲風のノリ」の、明るい1曲でもありますね。
第4楽章 アレグロ・モルト(非常に速く)
第3楽章から切れ目なく展開する積極的で明るい1曲。
第1楽章の後の感情の波が上下しながらも展開してきたベートーヴェン:ラズモフスキー3番。
そして、なにより、ベートーヴェン:ラズモフスキーシリーズのフィナーレを飾る「超アップテンポな楽しい展開と性格をもつ素晴らしい名曲」と言えますね。
【5種の名盤の感想と解説】ベートーヴェン:ラズモフスキー1番〜3番
アルバン・ベルク弦楽四重奏団
アルパカのおすすめ度★★★★★
【解説】
水も漏らさぬほどの整ったアンサンブルが素晴らしい名盤です。
この完璧さからくる緊張感を楽しみたいときにおすすめです。
音のつややかさも聴きどころであり、ベートーヴェン:ラズモフスキー全曲を通して素晴らしい名盤です。
「青春」のハツラツとした輝き。
「情感」の深く心のうちに沈潜(ちんせん)する感覚。
「華々しさ」がおおらかに展開するさま。
その磨き抜かれた技術と精神は聴いていてしびれる名盤とも言えそうです。
アマデウス弦楽四重奏団
アルパカのおすすめ度★★★★☆
【解説】
アルバン・ベルク弦楽四重奏団のような完璧さのなかにも血の通った体温が感じられる名盤です。
ドイツ的伝統のある厚みの中にも重苦しいものは感じられず自由であり、なんとも言えないまろやかな響きも特徴のおすすめ名盤でもありますね。
その特徴はとくに第9番の華やかさに表れています。
決して目に差し込んでくる華やかさではなく、包み込まれるような品の良さのあるおすすめ名盤でもあります。
エマーソン弦楽四重奏団
アルパカのおすすめ度★★★★☆
【解説】
ふくよかな耳ざわりであたたかい名盤です。
晴れやかで、ほがらかな響きは、とくに第7番での演奏におすすめです。
少し行儀が良すぎる感じはありますが、真面目な表現のラズモフスキーで、聴いていて飽きの来ないところがいい名盤ですね。
また第8番の第2楽章は「情感たっぷり」であり、そこにエマーソン四重奏団のあたたかさが加わるのでこちらもおすすめです。
スメタナ四重奏団
アルパカのおすすめ度★★★★☆
【解説】
チェコの生んだ、牧歌的でありながら、たおやかな優しさに満ちたスメタナ四重奏団のおすすめ名盤です。
スメタナ四重奏団です、緻密で完璧なことは言わずもがなですが、ベートーヴェンの持つ重厚な印象も優しい歌に昇華していて心地いいです。
隠し味として、ほんの少し牧歌的要素を含ませたベートーヴェンもなかなかおすすめ。
そんな名盤ですね。
ブダペスト弦楽四重奏団
アルパカのおすすめ度★★★★☆
【解説】
厳格さとピンと張りつめたアンサンブルはブダペスト弦楽四重奏団における独特の響きでありおすすめのポイントですね。
長く名盤の地位あり、今後もそれは変わることはない名盤なのだと思います。
奇をてらうことはありませんし、よくも悪くも「愚直にベートーヴェンの真意を追求する」「求道者における瞑想的透明感のある響き」とも言えそうな名盤です。
ぜひ一度、この研ぎ澄まされた精神性に触れられることをおすすめします。
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【解説と名盤、まとめ】ベートーヴェン:ラズモフスキー1番〜3番
ベートーヴェン:ラズモフスキー1番〜3番の解説と名盤のオススメは、いかがでしたか?
ベートーヴェン:ラズモフスキー1番〜3番の曲の持つ色鮮やかさはもちろん、有名なエピソードも印象的ですね。
- 青春!
- 情感!
- 華々しい!
アルパカの感じるイメージも紹介しつつ解説してみました。
色んなイメージをもって聴くのもクラシック音楽の醍醐味でもありますね。
そんなわけで…
『ひとつの曲で、
たくさんな、楽しみが満喫できる。
それが、クラシック音楽の、醍醐味ですよね。』
今回は、以上になります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。