明るく弾ける
楽しいメロディ!
音楽物語でワクワクしよう!!
とっさの出来事の時、その場をつくろうためについた小さなウソ。物事がこんがらがって、ウソの上にさらにウソで塗り固める。
そんな積み重ねをした後に「いっそのこと正直に打ちあけて理解をもとめておけば良かった…」なんて後悔したりして…。
ウソを塗り固めたがゆえに「空想の英雄」が大活躍してしまうという「壮大なる『ウソ』」の物語をおひとついかが?
- 【解説】プロコフィエフ:組曲《キージェ中尉》
- 【あらすじを解説】プロコフィエフ :組曲《キージェ中尉》
- 【各曲を解説】プロコフィエフ :組曲《キージェ中尉》
- 【名盤3選を解説】プロコフィエフ :組曲《キージェ中尉》
- 【解説と名盤、まとめ】プロコフィエフ :組曲《キージェ中尉》
【解説】プロコフィエフ:組曲《キージェ中尉》
同名の映画の伴奏音楽として書かれ(中略)帝政ロシア時代の貴族社会の無知無能ぶりを痛烈に風刺した喜劇(中略)この組曲のなかでもっとも有名なのは、ロシア民謡調の「ロマンス」と、リズミカルな「トロイカ」である。
出典:志鳥栄八郎 著 「新版 不滅の名曲はこのCDで」P152より引用
解説にありますように始めは映画の伴奏音楽として作曲されました。後にプロコフィエフ自身が演奏会用に編曲を施します。5つの場面を組曲の形にし音楽を聴くことで、ありありと物語を想像して楽しむことができるのです。
皇帝の勘違いから始まり、臣下たちの慌てふためきや架空の人物であるキージェ中尉が活躍する様子が描かれます。音楽としても聴きやすいメロディとノリの良いリズムに乗っかって組曲《キージェ中尉》が展開します。
初演:1934年12月21日、モスクワにて
指揮:プロコフィエフ
編成:
弦5部、フルート×2、ピッコロ、オーボエ×2、クラリネット×2、ファゴット×2、テナーサクソフォン、ホルン×4、コルネット、トランペット×2、トロンボーン×3、チューバ、トライアングル、大太鼓、小太鼓、鈴、シンバル、タンバリン、ハープ、チェレスタ、ピアノ
【あらすじを解説】プロコフィエフ :組曲《キージェ中尉》
皇帝のお怒り
時は帝政ロシアの時代。
ある日の昼下がり、皇帝が、すやすやと気持ちよく昼寝をしていますと、ある女官が大きな悲鳴をあげます。
「キャーッ!」
目を覚まされてしまった皇帝は怒りが爆発。
「今日の当直責任者は誰か!」
あわてふためいた臣下が、あいまいに答えますが皇帝はそれを聞き違えます。
「キージェ中尉か。それならその者を極寒のシベリアへの流刑に処す!」
という命令を下したのでした。
皇帝のお心変わり
臣下たちは架空の人物であるキージェ中尉をシベリア送りにしたことにしてホッと胸をなでおろします。
しかし、数日たったある日、皇帝は
「もしかしたらキージェ中尉は暗殺者からワシの身を守るためにあんなことを女官にさせたのかもしれぬ。」
と考えて…
皇帝はキージェ中尉に恩赦を与え、呼び戻すように臣下に命令を下します。
そして褒美(ほうび)として国の中でも絶世の美女と誉れの高い者と結婚させろと言ってきます。
臣下たちは、いつわりの結婚式をあげることで事なきを得ますが臣下たちの心労は日々つのるばかり…。今後、なにごともなく時が過ぎてゆくことを祈りますが、その願いは見事に裏切られます。
皇帝は、キージェ中尉に功労として勲章を与えることを決定したからです。血の気が引いていく臣下たち。
「さあ、どうする。」
「キージェなんて全く存在しない人物だぞ。」
「このままだと私たちは刑を免れないし、ウソをついていた期間が長いため死刑という結果もないとは言い切れんぞ!」
さあ、どうしたものか、臣下たちは戦々恐々です。
妙案ひらめく?
臣下たちは、考えあぐねて時は過ぎるばかりですが、ある臣下に妙案がひらめきます。
「キージェ中尉には戦場において戦死してもらおう。」
「どういうことだ。」
「キージェ中尉が死んだことにして、すべてをご破算にしてしまえば丸く収まるのではないか。」
「なるほど、それは妙案だ。その方向で話を進めよう。」
一同が大賛成します。
早速、臣下たちは涙ながらに皇帝にウソの報告をします。名誉の戦死を遂げたキージェ中尉の活躍を皇帝に伝えたうえで、壮大な葬儀を執り行うことを伝えます。
内容を聞いた皇帝も心から同意してキージェ中尉が安らかに眠ることを祈るとともに、臣下たちの心の中にも安らかなる日々が戻ってきたのでした。
【各曲を解説】プロコフィエフ :組曲《キージェ中尉》
キージェの誕生
トランペットが静かに奏でられ次第にかわいらしいピッコロとフルートの旋律が混ざり合います。様々な楽器が絡み合い勇壮な行進曲を織りなしていきます。これこそ『キージェ中尉』の始まりの曲です。
ロマンス
《キージェ中尉》のテーマをゆっくりめのテンポでしっとりと聴いていく内容です。
架空の人物にしては、リアルな恋物語を思わせてくれるロマンティックな一曲ですね。
キージェの結婚
盛大な(架空の)結婚式がもよおされている様子が色彩豊かに活き活きと描かれています。
皇帝に振り回されながら、慌てふためく臣下たちの活躍と架空の人物であるキージェ中尉の喜ぶ顔が見えてくるようですよね。
トロイカ
シベリアの広大な雪原をキージェ中尉の3頭立てのソリがスピーディーに滑走します。雪けむりを巻き上げて、3頭の馬たちが「ヒヒ〜ン!」といななきながら駆け抜ける。
「パカラ!パカラ!」「パカラ!パカラ!」と走る馬のヒズメの音。雪原では「シャララ!シャララ!」「シャララ!シャララ!」という音に変わり、雪国の寒さを想像させます。躍動する馬と雪上をゆく爽快感が想像できる一曲です。
キージェの葬式
これまで奏でてきたメロディが重なりながら、壮大なスケールで音楽が展開していきます。
キージェ中尉の名誉の戦死による荘厳な葬式。
「本当は存在していないキージェ中尉」の人生の様々な出来事を色彩豊かに振り返るという内容です。
【名盤3選を解説】プロコフィエフ :組曲《キージェ中尉》
ユージン・オーマンディ:指揮 フィラデルフィア管弦楽団
アルパカにとって、初めてのプロコフィエフ :組曲《キージェ中尉》体験アルバム。
力強く勇敢でもあるキージェ中尉が活躍する姿が、オーマンディの骨太な表現でいかんなく表現されていてプロコフィエフ :組曲《キージェ中尉》の世界に引き込まれる音楽体験です!
うわべだけのお上手な言葉をつらねてウソを付きまくる臣下たちの活躍まで勇敢に感じられるから不思議!!
「トロイカ」における馬の3頭立てのソリも元気に駆け抜ける様子がうかがえます。
このプロコフィエフ :組曲《キージェ中尉》の楽しさを一音一音に込めた勇敢な演奏を求めるならこの1枚ですね。
ジョージ・セル:指揮 クリーヴランド管弦楽団
理性と知性を兼ねそなえた英雄、キージェ中尉の誕生です。「理性と知性」を感じさせながらも冷たさはなく「温もり」のある素晴らしいバランス感覚。
敵に対して勇猛果敢(ゆうもうかかん)に攻め込みながら、その頭脳は常に戦場の全体に神経が行き渡り細部における取りこぼしがありません。
皇帝の臣下たちも深い知恵を持つお調子者のように皇帝を煙(けむ)に巻きます。おどけた中にもキラリと光る鋭い個性を感じます。
ピリッとひきしまった珠玉の1枚です。
シャルル・デュトワ:指揮 モントリオール交響楽団
フレッシュな印象鮮やかな音の色彩リズムのノリなどが素晴らしく、ドラマティック。
架空のヒーロー、キージェ中尉が、まるで、目の前で、勇ましく活躍している姿がありありと見えるようです。
懐深く多くの部下に慕われる徳高きキージェ中尉の姿が浮かんでくるようですね。
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【解説と名盤、まとめ】プロコフィエフ :組曲《キージェ中尉》
「キージェ中尉」という架空の人物を中心に展開するドタバタなドラマはいかにも楽しげで聴くだけで元気が出てきてしまう。こんな愉快で「壮大なる『ウソ』」の物語を聴いて胸、踊らせてみませんか?
『ひとつの曲で、
たくさんな、楽しみが満喫できる。
それが、クラシック音楽の、醍醐味ですよね。』
今回は以上になります。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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