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ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第15番【解説と名盤3選】苦しみと喜び、素直な感情が織りなす四重奏!

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病の苦しみと

癒える喜び

心を映す名曲♫

ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第15番

病に呻吟する魂の「蚕が糸を吐くように静かに紡がれていく歌」と「癒される時に降りる至福の光…」

今回は、ベートーヴェン弦楽四重奏曲第15番解説とおすすめ名盤を紹介です。

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【解説】ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第15番

ベートーヴェンを苦しめた肉体上の故障はあの不幸な耳疾だけではなく(中略)深刻な腸カタルに見舞われ、進行中だったこのイ短調作品132の筆も中断を余儀なくされる。(中略)作曲再開後に書かれた第3楽章には「病気がいえた者の神への聖なる感謝の歌」と記されている。しかも続く第四楽章は回復の喜びを表わすかのような行進曲風の音楽であり、さらに終楽章では、当初は第9交響曲の終楽章主題とするつもりだった雄渾な楽想によって大きなクライマックスが形造られるのである。

出典:大木正興・大木正純 共著 「室内楽名曲名盤100」P80より引用

解説にあるように想像すら難しいベートーヴェンの病の苦しみから発された名曲で、これほど生の心情が表れた曲も珍しいです。ロシア貴族であるニコライ・ガリツィンからの依頼で作曲された3曲の弦楽四重奏曲(第12番、13番、15番)の中の1曲になります。

現在、3曲の弦楽四重奏曲は別名「ガリツィン四重奏曲」と呼ばれるわけですが、第12番の朗らかさと、第13番の哲学性を帯びた深みが特徴です。第15番は日常の中で翻弄されながらも、右に揺れ左にと揺れる感情の動きと不安を歌っているように感じます

ガリツィン四重奏曲は3曲が同時期に並行して作曲されたわけですが、この間に医者はベートーヴェンに対して腸カタルの薬を処方します。しかしベートーヴェンは用法を超えた量を飲んでしまったことで医者は食餌療法に切り替えるなどの対処をせざるを得なかったようです。

病に苦しめられながらも作曲は続け、病の苦しみが癒えた際の心情をも音楽にするベートーヴェンの音楽への情熱が伝わってきます

 

初演:1825年11月6日 赤いハリネズミ館にて

演奏:シュパンツィヒ弦楽四重奏団

 

【各楽章を解説】ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第15番

第1楽章 アッサイ・ソステヌート|アレグロ(じっくりと音を持続して|速く)

深い闇の底から響く低音のうごめきの中から、ひときわ高らかに歌われるヴァイオリンの苦しみの叫び。耳の病のやるせなさと、腸カタルがかきむしる痛みと症状の苦悩にうめき悶えるさまが伝わってくるようです。

どの作曲家も到達し得なかった弦楽四重奏曲の可能性への飛翔。どこまでも高みを目指し、登っていくような渾身の力を振り絞った強さと哲学性を感じます。旋律作家としてのベートーヴェンが耽美な色彩をまとわせながら歌い上げた苦悩の歌を聴く思いです。

 

第2楽章 アレグロ・マ・ノン・タント(快活に、しかしあまり過度にならずに)

苦悶の第1楽章を忘れたかのような舞い上がるようなメヌエットであり、なんとも柔らかな雰囲気のある曲です。まるで幸福な心とともに気持ちよく河原沿いを散歩するような感覚です。

 

第3楽章 「病気がいえた者の神への聖なる感謝の歌」モルト・アダージョ|アンダンテ (きわめてゆるやかに|歩くような速さで)

病の回復を神に感謝し祈るような思いの穏やかで平和な曲です。苦しみや悲しみの後になって初めて何事もない平凡な毎日のありがたさが感じられるもの

夏の暑さを超えてこそ秋の涼やかさを知り、冬の寒さはいずれ春の喜びで満たしてくれる。涼やかさと喜びは、暑さ寒さを超えた先にしか本当はないのかもしれません。第3楽章は全5楽章のうち最も長い楽章です。

 

第4楽章 アッラ・マルチャ「アタッカ」(行進曲風に「間を置かず演奏」)

弾むような足取りを思わせ、まさしく行進曲風になります。第5楽章へと橋渡しをするような役割の短い曲で、いわば間奏曲風に挟まれた形になります。

 

第5楽章 アレグロ・アパッショナート|プレスト(熱情的に速く|急速に)

解説にありますが「第9交響曲の終楽章主題とするつもりだった雄渾(ゆうこん)な楽想」で綴られる楽章でメランコリックな印象を持たせながらも熱情的。第1楽章からベートーヴェンの身に降りてきた事象と感じ取った情感が描かれました。ドラマの幕引きを思わせるような感動的な最終楽章です。

 

【名盤3選の感想と解説】ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第15番

 

ブダペスト弦楽四重奏団

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アルパカのおすすめ度★★★★★

【名盤の解説】

緊張感が保たれながら強い気迫で圧倒してくる名盤です。それほど端正でもなければ香るような気品に満ちているわけでもありません。どちらかというと無愛想で人を寄せ付けないよなクールさを持っています。

しかし、ブダペスト弦楽四重奏団に引き込まれていく感覚は、何か危険なものにあえて近づきスリルを感じとりたいあの感覚です。作曲当時のベートーヴェンの感情を切々と伝えてくる弦楽器たちの男泣きに胸つかまれる息苦しさです。

この息苦しさが、ブダペスト弦楽四重奏団の持つ独特な美感であり天にも届かんばかりに突き抜けていく高らかな歌が聴けます。ベートーヴェンの弦楽四重奏曲におけるひとつの理想形を提示しえた名演奏といっても過言ではないでしょう。

 

アルバンベルク弦楽四重奏団 

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アルパカのおすすめ度★★★★★

【名盤の解説】

ベートーヴェンの弦楽四重奏曲の演奏の中でも、想像を絶するような精緻なアンサンブルの名盤。緊張感の高さはブダペスト弦楽四重奏団に匹敵しながら透明感と、放たれる哀惜の感情は耽美の極地。

変化にも富んでおり第2楽章の踊るようなメヌエットでは舞い上がり第3楽章の「神への聖なる感謝の歌」は敬虔さそのものの美第4楽章では喜び、行進し、第5楽章ではドラマティックに歌います

 

ラ・サール弦楽四重奏団

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アルパカのおすすめ度★★★☆☆

【名盤の解説】

深刻さというよりはスッキリと小気味良い名盤で、初めて聴く方にも受け入れやすい印象です。情感たっぷりという曲調からは少し離れますが、洗練された方向へと磨かれたものを感じます。

ベートーヴェンの暗い感情へのアプローチが少ない分、第2楽章から第4楽章における朗らかさはとても気品があって好感が持てます。前向きでエネルギッシュな現代的な美感があり生命力あふれる名盤です。

 

【まとめ】ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第15番

ベートーヴェン弦楽四重奏曲第15番、解説とおすすめ名盤はいかがでしたか?

病の苦しみと

癒える喜び

心を映す名曲♫

病に苦しむベートーヴェンが紡ぐ魂の呻きと病の痛みのくびきから解放され味わう日常の幸福…。あざなえる縄のように交互に訪れる苦難と幸福、そのグラデーションを色鮮やかに弦楽四重奏曲に昇華したベートーヴェンの名曲

ぜひ一度、聴いてみてくださいね。おすすめです。

 

 そんなわけで…

 

『ひとつの曲で、

 

たくさんな、楽しみが満喫できる。

 

それが、クラシック音楽の、醍醐味ですよね。』

 

今回は、以上になります。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

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