シェークスピアの
ドタバタ物語(ファンタジー)を
音楽で楽しもう♫
恋に恋して恋だらけ…
あっちに逃げりゃ
こっちが追われ
あっちを追えば、逃げられる!!
さて、今回は、「恋のドタバタファンタジー」を音楽として昇華したメンデルスゾーンの名曲《真夏の夜の夢》解説とおすすめ名盤を紹介です。
- 【解説】メンデルスゾーン《真夏の夜の夢》
- 【あらすじを解説】メンデルスゾーン《真夏の夜の夢》
- 【各曲を解説】メンデルスゾーン《真夏の夜の夢》
- 【3枚の名盤の感想と解説】メンデルスゾーン《真夏の夜の夢》
- 【まとめ】メンデルスゾーン《真夏の夜の夢》
【解説】メンデルスゾーン《真夏の夜の夢》
メンデルスゾーン《真夏の夜の夢》のこんな解説があります。
メンデルスゾーンは、17歳のとき(中略)シェークスピアの喜劇「真夏の夜の夢」をドイツ訳で読んで、すぐにピアノ連弾用の序曲を作曲し、やがてそれをオーケストラ用に編曲した。
ところで、メンデルスゾーンは、1942年春に(中略)プロイセン国王のフリートリヒ・ウィルヘルム4世から(中略)4つの劇の付随音楽を書くよう命令を受けた。(中略)メンデルスゾーンは、まず「真夏の夜の夢」を完成させることにした。
その序曲は、17年前のものがそのままあてられた。その他の付随音楽も、この序曲と大差ない様式で書かれている。つまり、序曲のムードは17年後の付随音楽でも保たれているのである。
出典:門馬直美 著 「管弦楽・協奏曲名曲名盤100」P46より引用
えっ?
序曲を作曲した後、17年も開いて違和感ゼロ!!
そうメンデルスゾーン17歳の頃、シェークスピアの《真夏の夜の夢》に大感動して作曲した序曲、それから17年を経て34歳の頃に完成した全曲版《真夏の夜の夢》。
どちらもムードがそのまま保たれたままで、しかも完成度の高さまでも同じということが驚きです。
メンデルスゾーンって若い頃から才能が開花していたのですね。
また題名の《真夏の夜の夢》の「真夏」とは、「刺すような日差しの暑い時期」というのではなく、むしろ「夏至の頃」を表しています。
この物語は6月24日の聖ヨハネ祭の前夜の物語でもありますので、たしかに「夏至の頃」であることは間違いありません。
けれども題名が《「夏至」の夜の夢》とは訳されませんでした。
誤訳であることは確かですが「恋に焦がれる若者たち」が描かれているわけですし、「熱い(暑い)真夏」がいいという判断だったのでしょうか?
いまだにナゾですね。
でも音楽の明るい雰囲気からして《「真夏」の夜の夢》という題名の付け方自体はある意味において合ってるような気がしなくはありませんね…。
【あらすじを解説】メンデルスゾーン《真夏の夜の夢》
ここでは、ザックリとあらすじを紹介しておきますね。
主要登場人物
ハーミア:ライサンダーと両思いの少女
ライサンダー:ちょっと気が多い青年
デメトリアス:ハーミアに片思いする青年
ヘレナ:デメトリアスに片思い
イージアス:ハーミアの父であり、娘とデメトリアスとの結婚を望んでいる
妖精パック:イタズラ好きの妖精
大公シーシアス:刑の執行の権限を持つ者
【あらすじ】
昔むかし、アテネでのこと…。
少女ハーミアと青年ライサンダーはお互いに惹かれ合っていました。
しかし、ハーミアの父イージアスはデメトリアスとの結婚を望みます。
もちろんハーミアは、父の聞き入れに耳を傾けません。
しかし、アテネでは古い法律により「父の言いつけに背く娘は死刑とする」というものがあり、ハーミアの父は大公シーシアスに裁定を依頼します。
そして大公シーシアスはハーミアに対し、「デメトリアスを取るか死刑を取るか」を迫るのでした。
悩んだ末ハーミアが出した答えは…ライサンダーとの駆け落ち!!…でした。
夜に郊外の森でライサンダーと落ち合った上で、逃避行する計画を練るハーミアとライサンダー。
ハーミアは、このことをこっそりとヘレナには打ち明けます。
しかし、ヘレナは、この計画のことをデメトリアスに漏らしてしまいます。
ハーミアとは婚約をしたはずであり、好意を寄せてもいたデメトリアスは、ハーミアを追いかけるべく駆け出します。
そして、そのデメトリアスを想うヘレナもその後を追うことになるのでした。
同じころ、森においては妖精の王様とその妻である妖精の女王が仲たがいをしていました。
腹を立てた妖精の王様は妖精の女王をこらしめるために、女王のまぶたに「ホレ薬」を塗ろうと考えます。
この「ホレ薬」はまぶたの上に塗ると目を開けた時に見た相手に恋してしまうという薬でした。
妖精の王様は、妖精であるパックを呼び出してロバのお面をかぶせます。
そして、妖精の女王のまぶたに「ホレ薬」塗らせますが、妖精の女王が目を覚まして始めて見たのがロバの頭…。
そう、妖精の女王はロバの頭に恋してしまうのでした。
そんなイタズラの後、デメトリアスに恋しながらも想いが届かないヘレナを可愛そうに思った妖精の王様はデメトリアスのまぶたにも「ホレ薬」を塗るように命じます。
しかし、妖精パックはデメトリアスに「ホレ薬」を塗るところ、間違えてライサンダーに塗ってしまいます。
しかもその後にデメトリアスにも「ホレ薬」を塗ってしまったものだから大変!
なんと、ヘレナはデメトリアスと、ライサンダーという2人の男に追われる羽目におちいります。
そして、純粋な恋心をバカにされたと思ってプンプン怒るヘレナ。
さらに、ライサンダーを奪われたと思ったハーミアはヘレナに襲いかかります。
しかも、しかも、ライサンダーとデメトリアスはヘレナを巡る恋争いを決闘によって決着をつけようとして大混乱!!
「ヤバい!!」
そう考えた妖精パックは「ホレ薬」の解毒剤とも言えるものをライサンダーに塗ることに成功するのでした。
これによりライサンダーとハーミアはもとの恋仲に戻り、デメトリアスとヘレナも恋仲となります。
そして、妖精の王様と女王も「ホレ薬」の効き目がなくなり仲直りします。
「ライサンダーとハーミア」「デメトリアスとヘレナ」の仲睦まじいさまを見た大公シーシアスはハーミアの父の申し出を却下し、2組のカップルは幸福な結婚をしたのでした。
そう、物語は大団円!
めでたしめでたし…!!
そんなあらすじです。
【各曲を解説】メンデルスゾーン《真夏の夜の夢》
それでは、各楽章について解説したいと思います。
メンデルスゾーン《真夏の夜の夢》は序曲を含む全13曲で成り立っています。
ちなみに「メロドラマ」の部分はアルバムなどではカットされることが多いです。
序曲 op.21
若者たちの恋がいっぱいの
- ドタバタ
- ハチャメチャ
- ファンタジー
そんなワクワクして楽しいイメージが、グングン広がるメンデルスゾーンらしく朗らかで開放的な序曲です♫
若者たちの
- 恋模様や、
- ドタバタ…
- そして、妖精たちのイタズラ…
そんな《真夏の夜の夢》の楽しくもハチャメチャな展開を表現した、なんとも美しいメロディのメンデルスゾーンの
- ノリノリで!
- 才能の大開花!!
- そして、あふれる音楽への情熱!!!
まさしく、そんな熱(暑)い《真夏》のごとき音楽活動への飛翔!
そんな、メンデルスゾーン《真夏の夜の夢》の序曲です!!
スケルツォ op.61-1
ワクワクする物語の始まりを予感させます。
妖精パックが叫びます!
「丘でも谷でも、僕はどこへだって超高速で飛翔できるんだぜい!!!」のセリフのままに空飛ぶ妖精パックのテーマとも言える1曲です。
妖精の行進 op.61-2
ふわり…。
軽やかに登場する妖精たちの様が木管楽器の柔らかい音色で描かれていきます。
歌と合唱《舌の裂けたまだら蛇》op.61-3
まだらなヘビは舌が裂け
ハリネズミ、ハリがいっぱい出てくるな!
イタズラするなやイモリとトカゲ!
妖精の女王には近寄るな!
メロドラマ op.61-4
登場人物のセリフに付けたBGM
間奏曲 op.61-5
ハーミアがライサンダーを求めながらも会えぬ、さみしい思いを表しています。
その後、明るい感じの行進曲へと曲調が変わっていきます。
メロドラマ op.61-6
登場人物のセリフに付けたBGM
夜想曲 op.61-7
- ライサンダー
- ハミーリア
- ディミトリアス
- ヘレーナ
4人の若者たちが森の中で眠る場面を描いています。
優美なメロディに満ちていて美しい1曲です。
メロドラマ op.61-8
登場人物のセリフに付けたBGM
結婚行進曲 op.61-9
メンデルスゾーン《真夏の夜の夢》の中でも最も有名な曲です。
…が、最近では結婚式で聞く機会もめっきり減りました。
明るくて開放的な幸福を象徴するような1曲です。
プロローグと葬送行進曲 op.61-10
死者を弔う、暗くて悲しい曲です。
ティンパニとファゴットのリズムに対して、クラリネットが美しい歌をからめてきます。
道化師たちの踊り op.61-11
序曲のメロディを使った舞曲ではありますが、道化師たちの楽しく舞う姿が想像出来る楽しい1曲。
メロドラマ op.61-12
登場人物のセリフに付けたBGM
終曲《ほのかな光》op.61-13
再び序曲のメロディが表れますが、ここでは合唱が伴います。
物語の最後の大団円を象徴するような明るい内容で、
- ファンタジー
- メルヘン
- 恋物語
色んな要素を含んだメンデルスゾーン《真夏の夜の夢》の終幕を飾る華やかで楽しい1曲です。
【3枚の名盤の感想と解説】メンデルスゾーン《真夏の夜の夢》
アンドレ・プレヴィン:指揮 ウィーンフィルハーモニー管弦楽団
アルパカのおすすめ度★★★★★
【名盤の解説】
ウィーンフィルの柔らかくて気品のある響きが《真夏の夜の夢》のファンタジー要素を優美に表現している名盤です。
とくに
- 木管楽器の音のまろやかさ
- 弦楽器のかろやかさ
が、メンデルスゾーン《真夏の夜の夢》には似つかわしい。
妖精たちのシャカシャカと駆け回り、飛び回る姿が浮かんでくるような名盤ですね。
オットー・クレンペラー:指揮 フィルハーモニア管弦楽団
アルパカのおすすめ度★★★★☆
【名盤の解説】
重厚感のある名盤であり、深い森の中で展開するファンタジーというイメージです。
少し軽めの演奏が多い曲目ですし、それがメンデルスゾーン《真夏の夜の夢》には合ってはいますが軽くなりすぎても聴き応えがありません。
まさしく、その「聴き応え」があり、演奏もゆったりめで「風格のあるズッシリとした印象」を耳の記憶として残してくれる名盤です。
ラファエル・クーベリック:指揮 バイエルン放送交響楽団
アルパカのおすすめ度★★★★★
【名盤の解説】
なんとも豊かな潤いを感じさせてくれる名盤です。
キビキビと痛快な印象ですが、決して軽薄な感じにはなりません。
そこはさすがにクーベリックとバイエルン放送交響楽団であって、実にバランス感覚に優れた名盤。
ソプラノのエディット・マティスをはじめとする独唱陣も堂に入っていて舌を巻きます。
柔らかさと重厚さが随所で発揮されながら表情豊かに展開するメンデルスゾーン《真夏の夜の夢》の名盤です。
Apple Musicで “紹介した名盤” が配信中
【まとめ】メンデルスゾーン《真夏の夜の夢》
さて、メンデルスゾーン《真夏の夜の夢》の解説とおすすめ名盤はいかがでしたか?
恋に恋して恋だらけ…
あっちに逃げりゃ
こっちが追われ
あっちを追えば、逃げられる!!
そんな楽しくてワクワクするメンデルスゾーンの名曲《真夏の夜の夢》 、暑い夏や明るい気分になりたい時にオススメですよ!
そんなわけで…
『ひとつの曲で、
たくさんな、楽しみが満喫できる。
それが、クラシック音楽の、醍醐味ですよね。』
今回は、以上になります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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