歌曲の王
シューベルトが贈る
ミサ曲の傑作♫
およそ600曲♫
シューベルトの歌曲の多さ。
その中にはひっそりと隠れて気づかれることの少ない名曲も…。
「シューベルトのミサ曲第6番」
思うに…名曲です。
さて、今回は、シューベルト《ミサ曲第6番》の解説とおすすめ名盤を紹介です。
【解説】シューベルト:ミサ曲第6番
シューベルト《ミサ曲第6番》についてのこんな解説があります。
自らの作曲技法上の弱点(殊に対位法)を克服せんと、ジモン・ゼヒターの門下となる。
バッハ、ヘンデル、モーツァルトの作品の研究を通じて培った技法、そして宗教音楽への研究の成果が、この変ホ長調のミサ曲には見事に投映されている。伝統を重視しながらも、シューベルトらしいリリシズムと豊かな「歌」がそこには盛り込まれている。
シューベルトの作曲したミサ曲はラテン語のものが6曲、ドイツ語のものが1曲あります。
解説にありますようにどの曲も「リリシズムをともなった」と言いますか「やわらかい感性」に満ちた名曲です。
シューベルトと言えば歌曲の方は有名ですが、ミサ曲が注目されることは多くありません。
シューベルトの残した歌曲は600曲近くあり圧倒的なアピールになっていますし「宗教的な色彩」を含めていないことが注目される要因かもしれません。
ただ、だからと言ってミサ曲が平凡かと言ったらそんなことはなく、6曲あるうちのとくに「5番」と「6番」は完成された美しさに満ちています。
このためシューベルト《ミサ曲第6番》を白鳥の歌(白鳥は死ぬまぎわ歌う歌がもっとも美しいという意味)と言われることもあります。
(シューベルトの歌曲にも《白鳥の歌》というものがありますので、少しややこしいのですが…)
さて、作曲はシューベルトの死の年である1828年の6月から夏にかけてであるとの記録があります。
初演はシューベルトの死後、1829年10月4日にアルザーグルント三位一体教会にて行われました。
【各曲を解説】シューベルト:ミサ曲第6番
それでは、各楽章について解説します。
シューベルト《ミサ曲第6番》は6曲で成り立っています。
1.キリエ
Kyrie eleison.
主よ、あわれんでください
Christe eleison.
キリストよ、あわれんでください
Kyrie eleison.
主よ、あわれんでください
静かな始まりのシューベルト《ミサ曲第6番》です。
とても調和的でなんとも美しいシューベルトらしい歌が聴ける極上の始まりです。
純粋で素朴な3行の言葉を繰り返しますが、この基本テーマがミサ曲全体を表していると言っていいでしょう。
2.グローリア
Gloria, gloria in excelsis Deo,
栄光が、栄光がいと高きところで神に、
et in terra pax hominibus bonae voluntatis.
そして地上にて、よき心の持ち主に悦びがもたらされんことを
(歌詞の冒頭のみ記載)
壮大な曲想はシューベルトの交響曲《ザ・グレイト》を思わせます。
途中で、暗い基調のドラマティックな展開を見せますがフィナーレは華麗なフーガにまで曲の規模を拡大して感動的に終わっていきます。
3.クレド
Credo in unum Deum, factorem coeli et terrae.
わたしは信じます、ひとつなる神を、天と地をつくりし主を
Credo in factorem coeli et terrae,
わたしは信じます、つくり主を、天と地の、
visibilium omnium et invisibilium.
目に見えし全てのもの、そして見えぬもののつくりし主を
(歌詞の冒頭のみ記載)
調和的で天国的な運びになります。
第2部はテノールのソロが歌い始めるとバスとソプラノが加わり見事な三重唱を聴かせます。
やがてキリスト教の「悲劇的なモチーフを歌いますが、それもすぐに終り再び美しい三重唱となり」を繰り返しながら展開する名曲です。
4.サンクトゥス
Sanctus
聖なるかな
Sanctus
聖なるかな
Sanctus
聖なるかな
Dominus Deus Sabaoth.
天軍の主なる神は
(歌詞の冒頭のみ記載)
フガート(フーガ風)な味付けの歌で展開しながら、だんだんと盛り上がっていく形を取ります。
荘厳な宗教的なテーマを音楽的にドラマ性を演出していきながら「シューベルトの歌心」が楽しめます。
5.ベネディクトゥス
Benedictus qui venit
祝福あれ、来たるものが
in nomine Domini.
主のみ名において
(歌詞の冒頭のみ記載)
木漏れ日が注いでくるような穏やかな1曲で、宗教的な音楽における調和の部分を歌い込めています。
シューベルトの、美しい弦楽の調べのなかに織り込まれていく歌が印象的と言えると思います。
最後は音楽的な盛り上がりを見せて終わっていきます。
6.アニュス・デイ
Agnus Dei, qui tollis peccata mundi, miserere nobis.
神の小羊、世の罪を取り去る方、憐れんでください、わたしたちを
(歌詞の冒頭のみ記載)
暗い始まりのアニュス・デイになりますが、普段のシューベルトのように悲劇的なままでは終わりません。
重苦しい展開は続きますが最終的には優美な響きとともに、音楽は宗教的な敬虔さを思わせる静かな終わりへと導かれていきます。
【名盤2選の感想と解説】シューベルト:ミサ曲第6番
ミシェル・コルボ:指揮
ローザンヌ声楽アンサンブル
ローザンヌ室内管弦楽団
アルパカのおすすめ度★★★★★
【名盤の解説】
宗教的なテーマを持った声楽曲を聴くなら、やっぱりコルボの名盤は外したくないところです。
包み込まれるような温かいテーストの音作りの中に描かれる悲劇性や、その裏返しにある深い喜びが色彩豊かに描かれていきます。
細やかに歌われていく歌唱陣を精密な演奏で支えていく演奏陣のコンビネーションも素晴らしくまさしく天国的とも言えそうな名盤です。
ニコラウス・アーノンクール:指揮
アルノルト・シェーンベルク合唱団
ヨーロッパ室内管弦楽団
アルパカのおすすめ度★★★☆☆
【名盤の解説】
オリジナル楽器を使用しながらだからといって淡白になることのないアーノンクールの名盤です。
むしろゆったりと聴かせるところに特徴的なものを感じますし、宗教的なテーマを持つ曲の歌わせ方に好感が持てます。
とても繊細な演奏でシューベルト《ミサ曲第6番》を大切にしながら演奏を展開します。
オリジナル楽器の持つある面で不器用な響きが純粋であって「情に流されがちのミサ曲をバランス良く紡いだ」名盤です。
Apple Musicで “紹介した名盤” が配信中
【まとめ】シューベルト:ミサ曲第6番
さて、シューベルト《ミサ曲第6番》の解説とおすすめ名盤はいかがでしたか?
歌曲で群を抜く業績を遺したシューベルトの楽曲の中でひっそりと隠れてしまった名曲であるミサ曲第6番。
さて、「歌曲の王シューベルト」が贈る歌ごころでいっぱいのミサ曲の傑作、シューベルト《ミサ曲第6番》、おすすめですよ♫
そんなわけで…
『ひとつの曲で、
たくさんな、楽しみが満喫できる。
それが、クラシック音楽の、醍醐味ですよね。』
今回は、以上になります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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