光るセンスと
裏返し…
そう、深い陰影…♫
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それが…ラヴェルの音楽における大きな魅力のひとつ…。
-
まぶしいくらいの華やかさと、
- さみしいくらいの陰うつさ…。
でも、それがこの上もなく美しい…♫
さて、今回は、そんなラヴェルの音楽のなかでも、もっともラヴェルらしい曲のひとつ。
ラヴェル《弦楽四重奏曲》の解説とおすすめ名盤を紹介です。
【解説】ラヴェル《弦楽四重奏曲》
【解説】ラヴェルらしい名曲、弦楽四重奏曲
ラヴェル《弦楽四重奏曲》のこんな解説があります。
ラヴェルのこの曲は本当にすばらしい。感覚は新鮮だし、まとまりはきちんとしており、弦の用法は巧妙をきわめ、しかもそれらを綜合して無類の生気と安定感を持っている。音楽のどんな隅っこにもラヴェルがさまざまな顔つきで立っていないところはないし、全体がまた実にスマートなラヴェルなのだ。
出典:大木正興・大木正純 共著 「室内楽名曲名盤100」P184より引用
- 感覚は新鮮
- よくまとまり
- 用法は巧妙
なるほど…言い得て妙な解説です。
そしてなんともラヴェルらしい歌いまわしが、ラヴェルファンをコチョコチョとくすぐってくる…。
そんな「うれしい笑みが出てきてしまうほどの名曲」なのですよね。
【解説】フランス人作曲たちの弦楽四重奏曲
そんな素晴らしい賛辞をドビュッシーから贈られたラヴェルですが、実際のところ出版の際には全体的に書き直しを行ったようです。
解説にありました「よくまとまり…」ということは、この書き直しがあってこそのことだったかもしれません。
ちなみに同じフランス人の作曲家のフランクとフォーレも弦楽四重奏曲は作曲しています。
しかし、弦楽四重奏曲を書き上げた時点で、すでに2人とも晩年を迎えていました。
それに比べて、ラヴェルとそれからドビュッシーは若い初期のころに書き上げていることが印象的です。
弦楽四重奏曲は作曲が難しいジャンルと言われますが若いうちから書き上げてしまうというのは驚き。
ちなみにラヴェルが弦楽四重奏曲を作曲したのは28歳(ドビュッシーは31歳)でした。
【各楽章を解説】ラヴェル《弦楽四重奏曲》
それでは、各楽章について解説します。
ラヴェル《弦楽四重奏曲》は第1楽章から第4楽章までの4曲で成り立っています。
第1楽章 アレグロ・モデラート(ほどよく速く)
つき放すような冷たさと、なんとも言えない高貴さが入り混じっていて、なんとも言いようの知れない魅力に包まれた曲です。
そして、ミステリアスであり、どこかペシミスティック(厭世的)でもありますね。
弦楽器たちの歌は、
- 静けさを含み
- しなやかさを楽しみ
- そして、優しい…
フランスの夜の街に敷かれた青い石だたみを照らす月あかりは限りなく白い…。
そんな冷たい青と、限りなく透き通った白が織りなす景色のような曲、それがラヴェル《弦楽四重奏曲》第1楽章なのです。
第2楽章 アセ・ヴィフ:トレ・リトメ(きわめて生き生きと:リズムをはっきりと)
弦たちがピチカートで弾むような歌を歌います。
なんともエネルギッシュな展開をしますが、なんだか神秘的…。
うれしいようで楽しいような歌ですが、決して手放しで喜んでいる感じはなくて、どこか知的で理性的…。
このなんとも言えないバランス感覚がラヴェルらしい…。
そんな楽章です。
第3楽章 トレ・レント(きわめてゆるやかに)
静かに歌うヴァイオリンがどことなく憂うつ…。
でも、その憂うつさが煩(わずら)わしいものでなく、なんとも澄んでいて美しいのです。
そんなヴァイオリンの歌を他の弦楽器が支えます。
そのアンサンブルが展開する会話がなんとも瞑想的でもあります。
澄んだ夜…空を見上げた時に見える深い漆黒…。
そんな映像も浮かんできます。
第4楽章 ヴィフ・エト・アジテ(生き生きと激しく)
最終楽章は、今までの静けさを追い払うような
- 元気で
- 力強い
- 勇ましさ…
…しかし、ラヴェル《弦楽四重奏曲》を覆う独特な情念の炎は、その奥でチロチロと燃え続けています。
- その炎を消さず…
- しかし熱情的に…
- しかし理性の冷たさ寒さを保ちつつ…
そう、このバランス…まるで綱渡り…
少し気を抜けばはるか下の地面へと転落していくという凄まじい緊張感…。
そんななんとも鬼気迫りながらも優美で繊細…
そんなラヴェルの名曲《弦楽四重奏曲》のフィナーレです。
【名盤3選の感想と解説】ラヴェル《弦楽四重奏曲》
パルナン四重奏団
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アルパカのおすすめ度★★★★☆
【名盤の解説】
- 暗い情念…
- 憂うつな思い…
それなのに、その感情の奥を深く見つめて見れば「汲めども尽きせぬ清らかに澄んだ水」が輝きを放ちながらこんこんと溢れ出てくる。
そんな名盤です。
なんともフランス的な退廃感もありながら展開する音芸術はクセになります。
録音が古く、モノラルなのが残念ですが、そのかすれた音の向こう側から聴こえてくるラヴェルの歌の絶品さがわかる名盤でもあります。
ラサール四重奏団
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アルパカのおすすめ度★★★★☆
【名盤の解説】
端正な名盤。
なんとも礼儀正しくと整っていて、もっとも安心して聴けます。
「妖(あや)しさ」とか「奇妙な感覚」は出来るかぎり取り除きながらラヴェルの美しい部分を取り出してきた名盤でもあります。
普段、ラヴェルが理解出来ないという方でも比較的楽しめるかもしれません。
ほどよく引き締まった姿勢の良いラヴェルを表現した名盤です。
アルバン・ベルク四重奏団
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アルパカのおすすめ度★★★★★
【名盤の解説】
この緊張感!
アルバン・ベルク四重奏団でないと、なかなか保てません。
そんな名盤です。
「水も漏らさぬ…」とはこのことでしょうか?
全曲を通してピンと張られた恐ろしく細い綱の上をススス…と進んでいくような…。
聴いている方がヒヤヒヤするくらいの緊張感の中、何くわぬ顔でアクロバットを繰り返す。
そう恐ろしく細い綱の上で…。
「ああ、落ちる!!」
と、思いきや持ちなおす…。
そんなエンタメチックな名盤です。
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【まとめ】ラヴェル《弦楽四重奏曲》
さて、ラヴェル《弦楽四重奏曲》の解説とおすすめ名盤はいかがでしたか?
-
まぶしいくらいの華やかさと、
- さみしいくらいの陰うつさ…。
でも、それがこの上もなく美しい…♫
そんなラヴェルの音楽の魅力が満ちている曲がラヴェル《弦楽四重奏曲》なのですね。
ちょっと心が荒れた時、美感をもった音楽に触れてデフォルト(標準)に戻すっていうのもラヴェル《弦楽四重奏曲》の聴き方のひとつ…。
そんなわけで…
『ひとつの曲で、
たくさんな、楽しみが満喫できる。
それが、クラシック音楽の、醍醐味ですよね。』
今回は、以上になります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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