絵画の放つ
イマジネーション!
音楽で美術館を散策できる名曲!!
美術館散歩…。
そんな時が音楽で体験できる♫
ムソルグスキー:展覧会の絵の世界へようこそ!
【解説】ムソルグスキー:展覧会の絵
ムソルグスキーの友人の死がキッカケで作曲されたムソルグスキー:展覧会の絵。
こんなエピソードを含む解説があります。
ムソルグスキーの親友で建築家のヴィクトル・ハルトマンが1874年に亡くなり、そのデッサンや設計図などによる遺作展覧会が開かれた。
ムソルグスキーは、この会から受けた印象をもとに、同年にピアノ用の
組曲「展覧会の絵」を作曲した。(中略)ラヴェルもこの編曲の仕事に情熱を注ぎ、すばらしい管弦楽曲に仕上げた。
ラヴェルは、オーケストラの各楽器を名人芸的に活用して、各曲で前人未踏ともいえる効果をあげるようにした。
(中略)
そしてこの編曲で「展覧会の絵」は一段と有名になった。
ラヴェル以後も、この曲を管弦楽用に編曲した人はいるが、結局はラヴェルのものが一般的に演奏されている
出典:門馬直美 著 「管弦楽・協奏曲名曲名盤100」P90より引用
「ロシア国民楽派」のひとりと言われるロシアの作曲家ムソルグスキー。
5人いる「ロシア国民楽派」の作曲家の中でも、斬新で独創的と言われていて、後の印象主義音楽が生まれる発想のもとになっているとも言われていますね。
確かに、ムソルグスキー:展覧会の絵を聴いていると、なんとも広い美術館に展開する美しく、また勇壮な絵画のイメージがありありと浮かんできます。
(ちなみにムソルグスキー以外の「ロシア国民楽派」の作曲家は、バラキレフ・キュイ・ボロディン・リムスキーコルサコフの4人です)
【各曲を解説】ムソルグスキー:展覧会の絵
第1プロムナード
有名なムソルグスキー:展覧会の絵の中でも、もっとも有名な1曲。
トランペットで高らかに歌われるプロムナードのテーマは、これから展開する「展覧会の絵」の並ぶさまと、その壮大さを想像させますね。
1.小人(グノーム)
「小人(こびと)」というと、可愛らしい妖精をイメージしますが、なかなかどうして、おどろおどろしさのある1曲です。
あるいは「夜の世界に怯える小人たち」なのでしょうか。
第2プロムナード
柔らかい木管楽器や弦楽器で静かに奏でられるプロムナードです。
古城
さまざまな栄枯盛衰を繰り返したであろう朽ちかけた古い城のもと、吟遊詩人は詠います。
音楽の静けさは、優美で奥深い、まさしく古城全体が発する何か、そうオーラのようなものが感じとれます。
第3プロムナード
「さて、次の絵へと進みますか…」
トランペットの奏でるテーマとともに、ずしりと重いトロンボーンの音がからみます。
短いプロムナードの後は間髪入れずに次の曲へと進みます。
テュイルリーの庭 - 遊びの後の子供たちの口げんか
テュイルリーの庭とは、パリのルーブル美術館の隣にあるテュイルリー公園のことです。
そこで遊ぶ子どもや口げんかをしている様を描いています。
ムソルグスキーの友人、ハルトマンが実際にその子どもたちを見て描いた絵がもととなって作曲されています。
ビドロ(牛車)
ズシリ、ズシリと大地をゆく牛車…と一般的には言われています。
ただ、当時に起こったポーランドのロシアからの独立運動による反乱と、それをロシアが鎮圧した際のポーランド人の苦しみを音楽にしたとも言われています。
どちらかと言うと、この重くズシリとくる響きは牛車のそれというよりはポーランドの民衆の苦しみに近いように感じます。
ロシア人のムソルグスキーがポーランドの反乱を支持するとしたらそれはロシア人にとってのタブーとなります。
そのためにムソルグスキーがビドロを「牛車」と意味づけたという説ですが、なんだか納得のいく説ではあります。
第4プロムナード
ここでも木管楽器がメインになり、静かに進みます。
すると、チョコマカと小さな生き物が目の前を横切ります…。
卵の殻をつけた雛(ひな)の踊り
たまごの殻をつけたままの雛(ひな)が、チョコマカ、チョコマカとまさしく「踊るように」遊びます。
そんな愉快で楽しい雰囲気を音楽として表現しています。
サムエル・ゴールデンベルクとシュムイレ
威圧的なユダヤ人、ゴールデンベルクと、卑屈なユダヤ人、シュムイレの言い争いを描いています。
ゴールデンベルクの重く、威圧的に語る様から始まります。
それに対して、シュムイレは、恐怖心を含んだ、かん高い声で言い返します。
そして、2人の言い合いは時に重なり合いながら続き、最後はゴールデンベルクがシュムイレをねじ伏せることで言い争いは終わりを迎えます。
第5プロムナード
さて、ムソルグスキー:展覧会の絵も後半がスタートです。
リモージュの市場
市場でのご婦人たちの、けたたましいおしゃべりや、けんかの情景を描いています。
非常にペラペラと早口にしゃべり、そして、ののしりあう様がよく描けていますね。
カタコンベ - ローマ時代の墓
ローマ時代の地下墓地、キリスト教徒が眠る墓を描いています。
解説にもありますが、もともとはムソルグスキーが亡くなった友人ハルトマンのために作曲されたのがムソルグスキー:展覧会の絵です。
ある面で、ムソルグスキーのハルトマンへの追悼と悲しみの思いが、入っているのかもしれません。
死せる言葉による死者への呼びかけ
今は亡き友人、ハルトマンへのムソルグスキーの語りかけととれましょうか。
深く、そして悲しげに話しかけている様がうかがえます。
話しかけ続けていて、ふと気づくと、明るくかすかな光が差しかけてくるような雰囲気に音楽は変わっていきます。
これは、「昇天する友人、ハルトマン」を描いているのかも…。
そんなふうに感じます。
鶏の足の上の小屋(バーバ・ヤガーの小屋)
スラヴ民話に登場する老いた魔女、あるいは妖怪とも言われるバーバ・ヤガー。
魔術を駆使し、人間の子どもを喰ってしまうとも言われていますが、その恐怖を音楽で描いています。
キエフの大門
ハルトマンのデザインしたキエフの門の設計図をもとに作曲された1曲です。
まるで「大きく、また威厳のあるキエフの大門が目の前に展開しているよう」です。
誰もが見上げる立派なキエフの門を前にした様がありありと浮かんできます。
そして、最後は鳴り響く鐘とともに、ムソルグスキー:展覧会の絵が華々しくも壮大な印象を残してフィナーレを迎えていくのです。
【3枚の名盤の感想と解説】ムソルグスキー:展覧会の絵
サー・ゲオルグ・ショルティ:指揮 シカゴ交響楽団
アルパカのおすすめ度★★★★★
【解説】
全体的に少しゆったりめのテンポで進められているのが特徴です。
ただ、そのためシカゴ交響楽団の重厚で明解な音世界が十分に堪能できる名盤になっているとの感想を持ちます。
録音もなめらかで美しく、ムソルグスキー:展覧会の絵の音色を味わうのには最適な名盤の1枚と言えそうという感想です。
アンドレ・クリュイタンス:指揮 パリ音楽院管弦楽団
アルパカのおすすめ度★★★★☆
【解説】
芳醇な香りの音楽展開の趣味の良さがバツグンという名盤です。
録音が古いのが難点ではありますが、その向こうから聞こえるムソルグスキー:展覧会の絵の特徴は「色彩感の豊かさ」ですね。
フランスの音楽、とくにラヴェルを得意としたクリュイタンスですので、ラヴェルが編曲をほどこしたムソルグスキー:展覧会の絵はやっぱり名人芸という感想の名盤。
そんな華やかさが特徴の名盤でもありますね。
ヘルベルト・フォン・カラヤン:指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
アルパカのおすすめ度★★★☆☆
【解説】
「この音の美感、やっぱり上手いなあ!!」
そんな感想です。
艶(あで)やかな音はムソルグスキー:展覧会の絵における「デン!!」と居並ぶ「絵」のイメージや特徴を持ちます。
その色合いも鮮やかで飽きさせません。
「少しクールな印象も特徴」ではありますが、それが少し冷たいという感想も持ちます。
ただ、やっぱりさすがはカラヤンとベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の素晴らしさは色褪せることはない。
そんな名盤です。
Apple Musicで “紹介した名盤” が配信中
【解説と名盤、まとめ】ムソルグスキー:展覧会の絵
さて、ムソルグスキー:展覧会の絵の名盤のオススメと、解説はいかがでしたか?
「芸術の秋」に聴くもヨシ、美術館にいく時間的余裕がない時に聴くもヨシです。
ムソルグスキー:展覧会の絵に耳をかたむけ、澄ませれば、きっと壮大な美術館とドラマティックな絵の世界を堪能できる!!
そんな素晴らしい特徴をもったムソルグスキー:展覧会の絵の世界をたっぷりと楽しんでみませんか?
そんなわけで…
『ひとつの曲で、
たくさんな、楽しみが満喫できる。
それが、クラシック音楽の、醍醐味ですよね。』
今回は、以上になります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
関連記事↓
「絵」ではなく「童話」を描いたこんな音楽も素晴らしい↓
色彩ゆたかな管弦楽をもっと楽しもう↓