重厚感のある趣(おもむ)きと
さわやかなメロディが満載!
ブラームスのいいトコロがつまった1曲
【楽曲を解説】ブラームス:ヴァイオリン協奏曲
重厚で、また交響曲的な広がりのある、ブラームス:ヴァイオリン協奏曲の、こんな解説があります。
この曲を捧げられたヨアヒムは、19世紀後半のハンガリー出身の大ヴァイオリニストで、無名だったころのブラームスの才能をいち早く見抜き、リストやシューマンに紹介し、世に出るきっかけをつくってくれた大恩人であり、ブラームスとは生涯にわたって変わることのない厚い友情で結ばれていた。(中略)
メンデルスゾーンやチャイコフスキーなどの協奏曲と比べると、やや親しみにくいが、繰り返し聴けば聴くほど、強くひきつけられる魅力をもった曲である。
出典:志鳥栄八郎 著 「不滅の名曲はこのCDで」P207より引用
解説にある通り、ブラームスは、このヴァイオリン協奏曲を、親友の ヨアヒムに献呈しています。
そして、ブラームス:ヴァイオリン協奏曲を作曲するキッカケは有名な大ヴァイオリニスト、サラサーテに影響を受けてのこと。サラサーテの奏でる、甘くて優美な音色を聴き、ブラームスの創作意欲に火がつき、ヴァイオリン協奏曲を作曲しようと決めました。
このころのブラームスは、素晴らしいメロディがギュッと詰まった、交響曲第2番を作曲して間もないころで、こんこんと湧き出る泉のごとく、創作意欲が高まっていた頃でした。
【各楽章を解説】ブラームス:ヴァイオリン協奏曲
それでは、各楽章について解説したいと思います。
この曲は第1楽章から第3楽章までの3曲で成り立っています。
第1楽章 アレグロ・ノン・トロッポ(快活に、しかし、速すぎないように)
ブラームスらしい重厚感のある楽章で、また、ブラームス:ヴァイオリン協奏曲について、よく言われるところの交響曲的な壮大な雰囲気もあります。
とても力強く、また華やかな1曲であり、ブラームス:ヴァイオリン協奏曲を象徴しているとも言えると思います。
第2楽章 アダージョ(ゆっくり)
ヴァイオリンくんは、嘆きます。
「あまりにも美しい、このはじまりの、清楚で、可愛らしいオーボエの歌。ああ、私は、なぜこのように歌えないのだろう」
そんな、ヴァイオリンのジェラシー。
「何をおっしゃってるの?」
と、オーボエ。
「私こそ、あなたにジェラシーよ。あなたのようなノビのある歌は、わたしには歌えない、でも、あなたは、いとも簡単にそれを表現してしまうでしょう」
「え?」
「さあ、嘆く前に歌いましょう。お互いのいいトコロをたくさん出しあって…。それに、ブラームス:ヴァイオリン協奏曲は、あなたが主役なのよ。自信をお持ちなさい。あなたの音は、無条件に素晴らしい…。」
そんな会話が聴こえてきそう…。
第3楽章 アレグロ・ジョコーソ、マ・ノン・トロッポ・ヴィヴァーチェ(おどけて、こっけいに、快活に、しかし、速すぎないように)
とても親しみやすいメロディの、いわばブラームス:ヴァイオリン協奏曲の聴かせどころといっていい楽章です。
晴れた朝を迎えた、さわやかさに近い気持ちのいい感覚が、そのまま音楽に昇華したような、素晴らしい1曲でもあります。
【3枚の名盤を解説】ブラームス:ヴァイオリン協奏曲
イツァーク・パールマン:ヴァイオリン
カルロ・マリア・ジュリーニ:指揮
シカゴ交響楽団
アルパカのおすすめ度★★★★★
楽天的で明るいパールマンのヴァイオリンの音とそれを最大限に引き出す、やわらかく、優しいジュリーニの指揮の名盤
こんな肌触りのいいブラームス:ヴァイオリン協奏曲も珍しい。
本来の重厚感のあるブラームスをお好みの方には、向かないかもしれませんが、こんな一風変わった、そよ風が、ほほを、さわるような心地いいブラームスの名盤も、いいものですね。
ヤッシャ・ハイフェッツ:ヴァイオリン
フリッツ・ライナー:指揮
シカゴ交響楽団
アルパカのおすすめ度★★★★☆
タレントのキムタクこと木村拓哉さん。
よく言われることですが、「キムタクが役を演じると、すべてキムタク」になると言われています。
でも、みんな、それがカッコよく、心地いいから引き込まれます。
このハイフェッツも、「ハイフェッツが弾くと、音楽のすべてがハイフェッツになる」わけですが、聴くほうは、それがたまらない魅力だから引き込まれるんですよね〜!
「絢爛!」「豪華!」「パワフル!」「超絶技巧!!」の名盤。
ブラームス:ヴァイオリン協奏曲のブラームスらしからぬ、華麗なる名盤!
「これはブラームスじゃない…。それなのに…それなのに…引き込まれううう!」
さすが、キムタ…(汗)じゃなかったハイフェッツ!!
こんなブラームスも悪くないよ〜。
そんな名盤です!
ダヴィッド・オイストラフ:ヴァイオリン
ジョージ・セル:指揮
クリーヴランド管弦楽団
アルパカのおすすめ度★★★★☆
オイストラフには、指揮者、クランペラーとの歴史的名盤もありますが、このセルとの晩年の共演は、落ち着きと円熟味を増した深い感動の名盤になってます。
ブラームス:ヴァイオリン協奏曲の「ブラームスらしい名盤だったらこの1枚」です。
きれいなメロディと重厚感のあるブラームス:ヴァイオリン協奏曲。
そのいいところを、忠実に表現していると感じます。
上記の2枚の名盤で遊んだ後に、基本に戻りたいなら、この名盤がいいと思います。
いい香りのコーヒーを楽しむように、ブラームスが楽しめます。
Apple Musicで “紹介した名盤” が配信中
【解説と名盤、まとめ】ブラームス:ヴァイオリン協奏曲
さて、ブラームス:ヴァイオリン協奏曲の名盤の紹介と、解説はいかがでしたか?
今回は一風変わった名盤などをメインに入れながら解説してみました。
モーツァルトのような「やさしさ」と、チャイコフスキーのような「豪華さ」のある名盤もなかなかいいものですよね。
そんなわけで…
『ひとつの曲で、
たくさんな、楽しみが満喫できる。
それが、クラシック音楽の、醍醐味ですよね。』
今回は以上になります。
最後までお読みいただきありがとうございました。