エキゾチック要素、満載!
太陽のような明るさと
かすかに感じる哀しみと…。
ハンガリーの民族舞曲、チャールダーシュ。
これを聴いて非常に感動したブラームスは、110冊ものチャールダーシュの楽譜を集めました。この中からメロディの素晴らしい部分をとりだして「ピアノ連弾用(1台のピアノを使って2人で演奏)」21曲に編曲。
これが、「ブラームス:ハンガリー舞曲集」として、愛され、聴かれています。
ただ、現在、よく聴かれているのは、「ピアノ連弾版」ではなく「管弦楽版」です。この「管弦楽版」用の編曲はブラームス以外の作曲者のものがほとんど。ブラームス自身が管弦楽への編曲は、第1曲目、3曲目、10曲目の3曲のみです。
- 【エキゾチックな特徴を持つ】ブラームス:ハンガリー舞曲集
- 【特徴を紹介!】ブラームス:ハンガリー舞曲集
- 【3枚の名盤を紹介】ブラームス:ハンガリー舞曲集
- 【解説と名盤、まとめ】ブラームス:ハンガリー舞曲集
【エキゾチックな特徴を持つ】ブラームス:ハンガリー舞曲集
エキゾチックで、楽天的な明るさや、時に憂いをおびた哀しさが特徴の「ブラームス:ハンガリー舞曲集」。
さて、どのようなプロセスを経て完成にいたったのかを、みていきましょう。
ブラームス、チャールダーシュと出会う
20歳の頃、ブラームスは、ハンガリーからの亡命者であり、ヴァイオリニストでもあるレメーニと親交を深めます。
このレメーニは、ブラームスの前で、チャールダーシュを弾いて聴かせますが、これが、ブラームスのとても気に入るものとなりました。
これがブラームスとチャールダーシュとの出会いのキッカケでした。
そもそもチャールダーシュってどんな音楽なの?
この「チャールダーシュ」という音楽の源流は、ヨーロッパのいたるところで、ロマ(ジプシー)たちが、生計を立てるために行っていた音楽の演奏や、ダンスのことです。
ロマたちが奏でる音楽やダンスはエキゾチックである(異国情緒がある)ことが特徴でした。
とくに、ハンガリーの国内では、酒場などで、おもに「兵士を募集するために歌ったり、踊ったりする音楽」という特徴も持っていました。
そして、この音楽のことをハンガリーでは、「チャールダーシュ」と呼んでいたのですね。
ちなみに「チャールダ」とは、ハンガリー語で「酒場」の意味とのこと。
訴訟を起こされたブラームス
この「チャールダーシュ」を気に入り、編曲を手掛け、完成させたブラームスでしたが、初めの出版は不評でした。
ただ、時を経て、新しいハンガリー舞曲集の出版を重ねるうちに、好評を博していきました。
しかし、ヴァイオリニストのレメーニは「ブラームス:ハンガリー舞曲集」の高い評判を知ると、これがチャールダーシュからの盗作であると主張し、ブラームスにたいして、訴訟を起こしました。
しかし、結果はブラームスが勝訴しました。
理由としては、ブラームスが、「作曲」ではなく「編曲」として出版していたことが、幸いしたようですね。
ブラームスとしては、「本当に好きだから、多くの人に聴いてほしい」そんな思いから、行われた「編曲」でした。
裁判の結果は、きわめて妥当だったのではないかなと、思ったりしますね。
【特徴を紹介!】ブラームス:ハンガリー舞曲集
それでは、「ブラームス:ハンガリー舞曲集」における、メロディの親しみやすい特徴的な曲を紹介していきましょう。
「ブラームス:ハンガリー舞曲集」は、全部で21曲ありますが、今回は、第1番、第5番、第6番の3曲についての解説です。
第1番「アレグロ・モルト(非常に速く)」
なんと哀愁に満ちた曲でしょう。
流浪のロマ(ジプシー)たちの日々のつらさや苦しみが、音楽的な美へと昇華され、表現されていますね。
ブラームス自身によって、管弦楽版への編曲が、なされているだけあって、その重厚感やメランコリックな響きが、なんとも心に染みますね。
第5番「アレグロ(速く)」
「ブラームス:ハンガリー舞曲集」のなかで、誰もが知っている有名な曲です。
とてもリズミカルで、「カッコいい」印象を感じます。
舞曲らしいリズム感と、躍動感に満ちていて、ハンガリーの酒場でのにぎわいや、盛り上がりなどが想像できます。
感興が高まってくると、それこそ、踊りださずには、いられないくらいの情熱的な特徴を持った1曲でもあります。
第6番「ヴィヴァーチェ(快速に)」
第5番と同じく、リズム感や躍動感がありますが、第5番よりは明るい基調の特徴があり、また、楽天的でもあります。
はじめは、ゆったりめの音楽運びですが、徐々にスピードがあがり、また、勢いも増していきます。
そんなだんだんに盛り上がる構造の、ワクワクするくらい「開放的な特徴」も感じられる愉しい1曲ですね。
【3枚の名盤を紹介】ブラームス:ハンガリー舞曲集
さて、「ブラームス:ハンガリー舞曲集」の様々な背景を解説してきましたが、ここでは、たくさんの華々しいくらいに個性を発揮する名盤を紹介していきたいと思います。
オットマール・スウィトナー:指揮 ベルリン・スターツカペレ
アルパカのオススメ度★★★★☆
なんとも、ウットリするくらいに、磨き抜かれた美感が特徴の名盤です。
民族的な体臭のようなものや、野性味には欠けます。
しかし、ブラームス:ハンガリー舞曲集を、謙譲の美徳を持って表現したら、こんなにも美しいメロディに満ちた楽曲だったのだなと、再認識させられました。
アルパカの初めての「ブラームス:ハンガリー舞曲集」の全曲体験盤。
こんなにスッキリと入り込みやすいなら、もっと速く「ブラームス:ハンガリー舞曲集」を聴いておきたかったなあと思いました。
でも、初めての「ブラームス:ハンガリー舞曲集」体験が別のアルバムだったらここまでは、感動しなかったかもなとも思います。
言葉を変えると、「モーツァルトやシューベルトを聴く時のような、やさしい感性で楽しめる」。
そんな名盤です。
クラウディオ・アバド:指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
アルパカのオススメ度★★★☆☆
「う〜ん。これはブラームスの交響曲…ではなかったな…たしか」。
なんて、聴いていて、そんな錯覚を起こしてしまいそうな、愚直にブラームスを表現した名盤です。
冒頭にも書きましたが、「ブラームス:ハンガリー舞曲集」の全21曲のうち、ブラームス自身が管弦楽用に編曲しているのは、3曲のみです。
なのに、アバドは、21曲のすべてを「ブラームスの芸術の完成」と、とらえているかの如く音作りに専心したように感じますね。
その仕事を全力で支え、実現したウィーン・フィルハーモニー管弦楽団もやっぱり素晴らしいですね。
アンタル・ドラティ:指揮 ロンドン交響楽団
アルパカのオススメ度★★★☆☆
ドラティがハンガリー出身の指揮者ということもあってハンガリー民族の香りがプンプンする名盤です。
目を閉じると「う〜ん、これがハンガリーの風景かあ」。と、映像が浮かんでくるようですよ。
全体的にそうとう速めの音楽運びです。
骨太で、重厚な演奏の中に、舞曲的要素が強く出ていることが特徴の名盤です。
さらに、パンチ力も充分!!
流浪(るろう)のロマ(ジプシー)たちの哀愁も、音楽に染み込んでいる感がありますよねえ♫
Apple Musicで “紹介した名盤” が配信中
【解説と名盤、まとめ】ブラームス:ハンガリー舞曲集
さて、「ブラームス:ハンガリー舞曲集」の名盤の紹介と、解説はいかがでしたか?
ノリのいい舞曲と、哀愁のこもったメロディが混在する、ブラームス:ハンガリー舞曲集はとても親しみやすく、共感するところも多いと感じます。
有名な曲だけなら、無料動画はたくさんアップされています。
ちょっと落ち込んだ時にかけて、元気な心を取り戻してみてはいかがでしょうか?
そんなわけで…
『ひとつの曲で、
たくさんな、楽しみが満喫できる。
それが、クラシック音楽の、醍醐味ですよね。』
今回は以上になります。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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