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ベートーヴェン:ピアノソナタ第17番《テンペスト》【解説と名盤3選】悲壮的な美しさの裏に秘めた思い

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吹き荒れる雨…

消える希望と

浮かぶ楽想♫

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「テンペスト」とは「嵐」や「暴風雨」といった意味。作曲当時のベートーヴェンの心情があますところなく表現された名曲です。

今回は、ベートーヴェンピアノソナタ第17番《テンペスト》解説とおすすめ名盤を紹介します。

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【曲の解説】

カール・チェルニーによると、ベートーヴェンは作品31(ピアノソナタ第16〜18番の3曲)を作曲している頃にヴァイオリニストで友人のヴェンゼル・クルンプホルツに対し「私は今までの作品に満足していない。今後は新しい道を進むつもりだ。」と述べたという。作曲時期は難聴への苦悶からハイリゲンシュタットの遺書がしたためられた時期にも一致しており、作品31の中でも特に革新的で劇的な本作にはそうしたベートーヴェンの決意を感じることができる

 ウィキペディアより引用

弟子のアントン・シントラーがピアノソナタ《テンペスト》理解のためのヒントについてたずねます。これに対し、ベートーヴェンは「シェイクスピアの『テンペスト』を読め」と答えたというエピソードが残っています。「テンペスト」とは「嵐」や「暴風雨」といった意味ですが、シントラー自身による作り話である可能性が高く信憑性が低いです。

18世紀の後半に文学界では「疾風怒濤(しっぷうどとう)運動」が起こります。人間の持つ本音に近い感情や葛藤を素直に表現することを目指したものでした。音楽界では影響が波及しなかったものの同時期のハイドンの交響曲などに限っては「疾風怒濤運動」の影響がみられます。

ベートーヴェンの《テンペスト》ピアノソナタは、むしろハイドンの「疾風怒濤期」の影響が指摘されることが多いです。古典派に分類されるベートーヴェンですが、後世に起こるロマン派音楽の持つ「感情の吐露」といった傾向はすでに表れていたといっていいでしょう。

 

【各楽章を解説】

第1楽章 ラルゴ・アレグロ

ポツリ…ポツリ…、虚空からしずくが静かにしたたり落ちると、強い向かい風をともなった雨に変化し襲いかかってきます。前へ進もうにも進めずに後退を繰り返しながら力及ばず…

光も差さない孤独な暗闇の中を、方向もわからぬままに呻吟する。声を張り上げようにも向かい風はかき消していく。わずかな抵抗すらも許されない暴風雨の中をゆく。しかし前へ進むことができず止まろうとすれば、むしろ後ろへと押し返されるだけ…。

耳の疾患により現実の「音」を失っていく中「ハイリゲンシュタットの遺書」をしたためるも命を留める決断を下すベートーヴェン。その心情が表れているようにも感じます。

 

第2楽章 アダージョ

雨は弱まり葉の先からは、しずくのひとつひとつが柔らかい光を集めながらこぼれ落ちていく…。さみしさは消えない…けれども苦悩や穢(けが)れといったものが静かに洗い流されていく感覚が第2楽章にはあります

消え入りそうな儚い世界の中をしたたり落ちる、ピアノの粒たちの美しさ…。

 

第3楽章 アレグレット

抗おうにも抗えない運命に翻弄されながら、暗闇を這いつくばう時に、ふと見えるかすかな光。「受け入れる」覚悟を決めたものだけが見るかすかな希望…。この先の苦悩を受け入れながら諦めるべきものを諦めていくプロセス

その中から見えてくる芸術という名の確かな光をベートーヴェンは掴んだのかも…。絶望の淵からわずかに降りる一筋の…確かなる光を…

 

【名盤3選の感想と解説】

ヴィルヘルム・ケンプ:ピアノ 

アルパカのおすすめ度★★★★★

【名盤の解説】

テンペストの持つ激情を虚飾を廃したピアノで彩った名盤で、語り口にクセがないためしっかり記憶に残ります。第1楽章では抑えの効いた表現の中から漏れ出る情感が美しいですし、第2楽章の柔らかい光に包まれた美感も素晴らしい。

第3楽章をことさらテンポを上げることなく淡々と弾いていくところに、むしろベートーヴェンが曲に込めた心情の深さを知る思いです。しっとりと味わいのあるテンペストソナタが聴きたいときにおすすめの名盤。

エミール・ギレリス:ピアノ

アルパカのおすすめ度★★★★☆

【名盤の解説】

しっかり構築されたテンペストを聴くならギレリスの名盤がおすすめです。地に足のついた悲劇性とでもいえそうな演奏で、どっしりと重量感のあるピアニズムで楽しめます。少し生真面目な取り組みに聴こえますが、堅実ながらも第2楽章の感性豊かな表現にも惹かれます。

感動的な第3楽章においても、ジックリと盤石に作り込まれた感があり聴いていて飽きることのない名盤といえそうです。

 

アルフレッド・ブレンデル:ピアノ

アルパカのおすすめ度★★★★☆

【名盤の解説】

理性的演奏でありながら、ブレンデル独特の粒立つ音が美しく、テンペストという名曲を堪能できる名盤です。冷静な姿勢を維持しながら、曲に秘められたドラマ性を存分に引き出しています。

ブレンデルらしく音の美しさで曲に内在する感性を伝えながら、バランスの良い客観性を保った稀有なるテンペストソナタの名盤です。

 

【まとめ】

ベートーヴェンピアノソナタ第17番《テンペスト》の解説とおすすめ名盤はいかがでしたか?

吹き荒れる雨…

消える希望と

浮かぶ楽想♫

劇的な内容を持って語りかけてくる名曲であり、「感情の吐露」といったロマン派音楽の傾向も見え隠れするベートーヴェンのテンペストソナタ

ピアノの可能性も大きく開いたともいえそうです。ぜひ、一度聴いてみてくださいね。

 

そんなわけで…

『ひとつの曲で、

たくさんな楽しみが満喫できる。

それが、クラシック音楽の醍醐味ですよね』

 

今回は、以上になります。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

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